第25話「青と赤」
三人は旅の支度を整え港へ向かった。
スギヤマは地図を取り出し、レピリクに話しかける。
「居場所はどのあたりだろう?」
レピリクは指を差して示す。
「フィルクセップ国ね。更に西へ進んで山を挟んだトルクメア国と戦争を続けているらしいわ。厄介な場所に行くわねー」
リルが目を細めて言う。
「戦争か……。妖獣が居てもお互いに争うものなんだな」
「国を挟んだ山での資源を争っているとかどうとか、私も聞きかじりの知識だけれど」
シティスが言う。
「何でも叶う願いで平和を願ったら、都合よく解決するものなのか?」
「世界の理に通じる、つまり力は与えられるけれど、どう使うかって所だね、そそのかしたりはしないけれど、人の意識を変えるように作用させる事も出来る」
「ちょっと恐ろしくなってきたな、じっくり考えるよ」
やがて西行きの船がやってきて一行は乗り込む。
数日間船に揺られ、目的地に到着する。
船を降りると、目に入って来たのは一面の銀世界だった。
空からは薄く冷たい雪が降っており、吐く息も白く、気温の低さを表していた。
「寒~い!持ってる上着だけじゃ耐えられないわ、街に着いたら防寒着を買わないと」
リルはいつもの短パンで完全に服装選びを間違えていた。
「街まで距離はどれくらい?ゆっくり歩いてたら凍えちゃうわ!走るわよ!」
スギヤマから地図を受け取るとリルは走り出した。
「えぇ~待ってー!」
リルを追ってシティス達も走っていく。
20分程走った辺りでリルが止まる。
「そろそろ着くはずだけれど」
すると雪景色の中に二つの黒い影が見える。
「なんだ、人か?」
影は消え、静寂が包み込む。
「上よ!」
男が女を肩に乗せ、空高くジャンプしていた。
「ソルレイ!」
女の掌が光ったかと思うと、目にも止まらぬ速さで光線がスギヤマ目掛けて飛んできた。
「熱っ」
スギヤマの腹の辺りで服が焦げていた。シティスが駆け寄り治癒術をかける。
「アハハ、居たねぇ」
「居ただろう、そうだろう」
地上に降りて来た男女は分厚いコートを着ていた。
特徴的な髪の色は男が青く、女は赤かった。
「前に私を襲った奴らだわ、探す手間が省けたわね!」
女が再び掌を突き出すと光線がリル目掛けて飛んで来る。
「雷焔の影槍!」
光線が飛び出すよりも速く正面に槍を配置して光線を防いでいた。
轟音が鳴り響き、地吹雪が視界を覆う。
吹雪の中から現れた男が、手斧をシティス目掛けて振るう。
咄嗟に躱して地面に倒れこむ。
男に向かってシティスは術を唱える。
「フェージキル」
だが、男の動きは変わらずシティスに斧を振り下ろす。
躱し切れずに肩に斧の一撃を喰らう。
「あぁ!」
シティスは痛みに悶え、起き上がれない。
「鉄鋼!」
背後から男目掛けて拳を叩きつける。
だが、素早く反応した男が斧で拳を受け止める。
そこへリルの槍が男の腕に突き刺さる。
「おや、一撃喰らったか」
男は素早くステップを踏み距離を取る。
「幻宙脚」
男の姿が二つになり、手斧もそれぞれ増えていた。
リルへ向けて同時に襲い掛かると斧で斬り付ける。
「っ!」
受け止めたリルの腕から血が噴き出し、よろめきうずくまる。
「フィーア!」
シティスが治癒術を唱えると、リルが反撃に転じる。
リルの槍は男を貫くが、揺らめき手ごたえがない。
「こんな所か。ダリア!一旦引くぞ!」
ダリアと呼ばれた女は掌を掲げるとリル目掛けて光線を発射した。
再び槍と光線がぶつかり、地吹雪が巻き起こる。
地吹雪が収まると二人組の姿は消えていた。
「また私の術が効かない相手だった」
不安気な様子でシティスが言う。
「男に攻撃が通らないのが気がかりだな。」
「あのダリアって女の能力も厄介ね、次は女を先に狙うわよ」
リルが力強く言う。
「とりあえず休息を取らないと、街へ向かいましょう」
シティスが急かす。
「この地図の通りならそろそろ着くんだけど」
そう言いながら歩いていると、壁が見えて来る。
「フィルクセップ国かー、やっとだな」
門までやってくると、櫓から人が尋ねてくる。
「お前達、この辺りじゃ見ない格好だな、旅人か」
「そうです、泊まる宿と服を買いに来ました」
「分かった。待っていろ、今開ける」
ガリガリと音が響き門が開かれた。
街へ入ると、人は疎らで、活気が失われていた。
軽食を取り、服屋を探すスギヤマ達。
通りに赤色の看板が掛かった店を見つけ、入る事にした。
「上着と手袋を買おうかしらね」
リルが店内を一巡すると、黄土色のコートと黒色の手袋を選び会計を済ませる。
シティスは水色、スギヤマは灰色のコートをそれぞれ選び購入した。
その後、宿を見つけ部屋で過ごす三人。
「一人を全員で集中狙いする作戦でいこうと思う」
「ダリアという女を弱らせれば男にも隙が現れるはずだ」
「光線を防ぎつつ攻めるために私が槍を連続で浴びせるわ」
「それでいこう」
作戦会議を行っていると夜も更けてきて、やがてそれぞれ眠りについた。




