第23話「朧鯨キアニア」
港では青い船首の船が停泊しており、タラップを進み船へ乗り込んだ。
入口には壮健そうな男が立っていた。
「君たちがキアニア討伐を行う一行だね?」
「そうです。証書を船長に渡すように言われています」
「わかった。付いてこい」
操舵室に入るといつか見た顔がそこにあった。
「おう、お前かスギヤマ。わっはっは、元気そうじゃねぇか!」
「スラークさん!」
「知り合い?」
リルが不思議がる。
「海で漂流してた所を助けられたんだ、命の恩人だよ」
「そんな事があったのね」
シティスが言う。
「まさかお前に頼る時が来るとはなぁ、船の操縦は任せとけ」
スギヤマはスラークに証書を渡す。
「国からの証書か、確かに受け取った」
封を開け、中身を読むスラーク。納得した様子で話を続ける。
「契約金と船の修理負担についてだな、悪くねぇ、早速だが出発するか?」
「そうですね、お願いします」
「キアニアだが、根城にしている海域がある。荒天の日に合わせてそこへ向かう事になる。後は運次第だ」
船が二日程進むと、空に暗雲が垂れ込めてくる。
やがて雨が降り出し、本降りとなった。
船が激しく揺れ始める。
「これは立っていられないわよ。海に落ちるのが目に見えてる。どうするつもり?」
シティスが不安がる。
「救命胴衣を着て、槍で遠くから攻撃するわ」
「俺も同じように攻撃するしかないな、相手の大きさにもよるが……」
「嵐の外までおびき寄せるって方法を考えてある、妖獣の死骸で釣るんだ」
スラークがハンドルを操縦しながら作戦を伝える。
「船長!後方に巨大な生物を確認しました!」
「ようやくお出ましか、速度を上げて嵐を抜けるぞ!」
「甲板に出て、キアニアを寄せ付けないようにするわ」
「頼んだ、無茶はするなよ」
雨が降りつける中、リル達は甲板に出る。
甲板には妖獣の死骸が束になってくくりつけられていた。
遠くに黄色とも緑とも知れない不気味な色をした生き物が泳いでおり、先行する船に追いつく程に迫っている。
「雷焔の影槍!」
リルが空を切る槍を浴びせる。
キアニアは動きを止め、海の中に潜っていく。
姿を見失い、追撃の手を緩めるリル。
そこへ体が浮く程の衝撃が走る。
船にキアニアが体当たりを加えていた。
再び海に姿を見せるキアニア。
すかさずスギヤマが攻撃を仕掛ける。
「圧殺!」
巨大な鯨の腹部分に円柱が落下する。
衝撃で海へ沈むキアニア。
再浮上する巨体に、シティスが術をかける。
「フェージキル!」
キアニアの泳ぐ速度を遅らせると、一定の距離を保つようにスギヤマ達は攻撃を加え続ける。
やがて雨風が収まり始めると、激しかった波も穏やかになってきた。
「嵐を抜けたな!」
しかし決め手に欠け、攻めあぐねていると、キアニアが棘のような物体を噴射し始めた。
矢のように降り注ぐ棘にスギヤマ以外は怪我を負う。
シティスの治癒術で回復するが、攻撃を続けられると消耗するのが目に見えていた。
「どちらが先に倒れるかの我慢比べか……何か策はないか」
「一点を集中して狙うわよ!攻撃が内側に届けば、ダメージも大きいはず」
「わかった」
リルが額部分を狙って槍で刺し、一定時間残る刺さった矢を目印にしてスギヤマが円柱を落下させる。
キアニアは初めて唸り声を上げた。
「効いてるぞ!」
「このままやるわよ!」
「雷焔の影槍!」
「圧殺!」
キアニアの額が真っ二つに割れ、濁った血が噴き出す。
全身が海に浮かぶと、動かなくなった。
「やったな」
「まぁこんな所ね」
「二人ともお見事」
シティスが笑顔で喜んだ。




