第20話「紫影の少女」
翌朝、朝食を取ると早速出発する。
街を出て東に進むと山が見えてくる。
「あの山の中だね」
レピリクが言う。
渓谷に出ると、尻尾に頭がある妖獣と戦う人物がいた。
銀髪の少女で、妖獣の攻撃を躱し続けている。
見たところ攻撃に転じる様子はない。
「何をしているんだ?手伝ってやるか、シティスも頼む」
「分かったわ」
シティスが動きを遅らせ、スギヤマが攻撃する、いつものコンビネーションで妖獣に止めを刺した。
「あぁああ!何してくれるのよ!」
そういうと紫色の眼をした少女はこちらを睨みつける。
「妖獣に襲われていたんじゃないのか?」
「あんな妖獣私一人で倒せるわ!目的があって粘っていたの!」
「こいつら刻晶持ちだぜ」
どこからか現れた尻尾が三つに分かれた狸のような生き物が言う。
「ってそういう事ね、私が目的なのね!やってやろうじゃない」
「いやいや待ってくれ目的なのはそうだけど、戦いに来た訳じゃない。俺達と協力しないか?」
「いきなり現れて何を言い出すかと思えば、あんた達も烈妖獣が目当てなの?」
「烈妖獣?それは分からない」
「まぁいいわ、それなりに戦えそうだし話は聞いてあげる。ディラムへ行くわよ」
紺色のシャツと黒色の短パンの少女は、スギヤマ達を先導するようにディラムの食堂へ向かった。
「自己紹介がまだだったな、俺はスギヤマだ」
「私はシティス、よろしくね」
「あたしはリル、刻晶持ちには一度襲われていてね、警戒してるのよ」
「詳しく聞かせてくれ」
「二人組だった。空を飛び攻撃が上手く当たらないから、逃げる事にしたわ」
「そうだったのか。契約の事は知っているだろ?他の刻晶持ちに対抗するためにも頼みたい」
「そうね、あたしは妖獣討伐で生計を立てているんだけど、脅威度の高い大型、通称『烈妖獣』を狙っているのよ。倒せば三人で分けても二年分の稼ぎにはなるわ。烈妖獣を討伐出来たら考えてあげる」
リルは言い終わるとサラダを口に運ぶ。
「分かった。俺達も生活費は考えなくてはいけない所だった。協力しよう」
「烈妖獣って普通の妖獣とは違うの?」
シティスが興味深そうに聞く。
「もちろん強さは比べ物にならないわ。狙ってる獲物は『双邪竜ヴィーズ』と名がついてる。そこらの妖獣と戦っていると漁夫の利を狙うように襲われるって話。最近だと渓谷で遭遇報告があったから粘ってたんだ」
「そうだったのか、それは悪いことをした」
「まぁ焦ってないわよ。それにご馳走にもなったしね」
「って払うとは言ってないぞ。こんなに頼んで……」
「あはは、烈妖獣を倒せば問題ないよ」
シティスが楽しそうに笑う。
「お前達、紫影の主の足を引っ張るなよ」
付いてきていた狸のような生き物が偉そうに言う。
「この子はケーテ。口は悪いけれど色々と教えてもらってるの」
「刻晶獣か、こっちにもレピリクとデコってのがいる」
レピリク達は尻尾を揺らし反応する。
食事を終え、仕方なくスギヤマがリルの分まで支払う。
「準備をしたら、ヴィーズを倒しに行くわよ。」
芯の通った声でリルが言う。
「明日の朝、この店の前で落ち合おう」




