第14話「魔導士」
翌日、起きてきたスギヤマ達は荷物を軽くして宿を出る。
その後、行き交う人々を横目に見ながら街を後にした。
街道を道なりに進むと鬱蒼とした森が現れる。
「この森の中だね」
レピリクが頷くように言う。
木々の間を人が通れる道があり、進んでいくと小屋が現れた。
入り口には異形の頭蓋骨が飾ってあり、布で覆われた窓など、人を寄せ付けない様子だった。
「人の気配がないな、もう少し近づいてみるか」
グンダがそう言うと、三人は扉の前まで移動する。
すると風を切る音がして、弓矢が飛んでくる。
身構えたスギヤマの体が矢を弾く。
剣を抜き辺りを見渡すグンダ。
フッフッフと笑い声の後、森から声がする。
「かなりのやり手のようだ。ではこれならどうかな」
地面から数匹の蜥蜴のような巨大な生き物が這ってくる。
近づかれる前にシティスが術を唱えると、蜥蜴の動きが止まる。
だが動きの止まった蜥蜴の体から青色の霧が噴き出した。
辺り一帯が霧で包まれると、グンダ達の体に異変が起こる。
「ま、麻痺毒か……」
遠のいていく意識の中でスギヤマが見たのは、顔に痣のある女性の姿だった。
すえた匂いに刺激され目を覚ますと、薄暗い建物の中にいた。
手を後ろに縛られ身動きがとれない状態の三人。
扉が開く音がして、奥から誰かがやってくる。
髪を刈り上げた、坊主頭の目つきが鋭い男だった。
「どうやら目を覚ましたようだなぁ。俺達のアジトへようこそ。刻晶の者達。お前達が何を目的にここへやって来たは知らんが、俺にとっては都合がいい」
「待て、魔導士はいるか?そいつと話をさせて欲しい、金なら出す」
「金などいらないよ。俺が欲しいのは刻晶の力だ、何故なら俺も刻晶持ちだからさ。この意味分かるよなぁ。それと俺も魔導士だ。今話してるぜ」
「刻晶持ちは契約を結ぶ事で協力出来るそうじゃないか、君が魔導士だというなら幻瑚の宝剣の行方を教えて欲しい」
「協力などしない。願いが叶うのは俺一人だけでいい。宝剣の事なら婆さんだな。もう出会う事はないがな」
そう言うと男は右手を振りかざすと、辺りの物が揺れ始めた。
黒い影が立体になり、蜥蜴の形を作り出した。
鋭い爪を持つ蜥蜴はシティスへと爪を食い込ませた。
「痛いっ」
シティスが声をあげると、男は不敵な笑みを浮かべていた。
「俺の目的のための贄となるがいい」
蜥蜴は爪で首元を狙い、引き裂こうとする。
ガタンッ。
扉を勢いよくあける音と、突入してくる二体の獣。
「これ以上手出しはさせないよ」
「なーなー結局正面突破か」
「レピリク!」
「デコ!」
「お前達は……刻晶獣だな。丁度いい、ここで飼主の死を見せてやろう」
蜥蜴の爪がスギヤマの首を引き裂こうとするが、体に力を込めたスギヤマの体は爪を弾く。
「隙を逃したね」
レピリクがそう言うと、三人を縛っていた紐を解いていく。
「待て!」
また新たに誰か入ってくる。
スギヤマは顔に見覚えがあった。街で死刑執行から逃げた男だった。
チッ。舌打ちをすると魔導士の男は引き下がる。
蜥蜴の姿が消えていく。
「お前達も刻晶の持ち主だそうじゃないか。生かしておいたのは話を聞くためだ。俺はゼリト。燐火団の頭だ。カトーは手が早くていけない」
ゼリトと名乗る男は短く切った黒髪で身長の高い痩せた姿だった。
「俺達は幻瑚の宝剣を探している。燐火団に宝剣の術に詳しい魔導士がいると聞いて尋ねに来た。魔導士はどこにいる?」
グンダが堂々と聞く。
「そうか、それなら話が早い。目的の魔導士は、俺達が主催している獣闘場のオーナーだ。話を付けてやる代わりにこちらの頼みも聞いてもらおう。獣闘場に参加するんだ」
「獣闘場……。仕方ないが、魔導士に会うためだ、参加しよう」
「最近は勝ち進むやつが少なくて盛り上がりに欠けていてな、期待してるぜ。場所を記した地図を渡す。開催日は碧星が満ちる日だ。それと参加者は一人ずつのルールになっている」
そう言ってゼリトは地図を渡すと、カトーと共に小屋から出て行った。
「まったく、気軽に引き受けちゃって良かったの?」
シティスが呆れた様子で言う。
「対価もなしに魔導士が話を聞いてくれるとは思えん。獣闘場のオーナーだというのなら、活躍すれば興味を惹くだろう」
グンダが腕を組みながら言う。
「誰が最初に参加するの?」
シティスが尋ねる。
「俺がまず様子を見るよ。防御を固めて、相手のレベルを測る」
スギヤマが自信ありげに言う。
「では頼んだぞ。開催まで街に戻って休息を取ろう」
三人は森を出てガテリヤ王国に戻る事にした。




