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運命の再会、三助と猿   〈3〉


「しかし__」

それでも藤吉郎は引き下がらない。

「それとこれとは話が違い申す。男の面体にいばりをかけた事、どのように考えられておるか?!」

「ちっ__」

存外執念深い藤吉郎に、信長は舌打ちした。

「この始末、一体どのような__」

「木下藤吉郎__」

信長が、徐に言った。

「貴様に草履取りを命ず」

「__は?」

信長の唐突な言葉に藤吉郎は目を丸くした。

「良いか、明日から貴様はこのわしの草履取りじゃ。左様、しかと申しつけた故心得たか?」

「は、は__」

草履取り__これは、現在の雑用係から考えれば大変な出世である。何せ主である信長と直に接する役目なのだから、この先の昇進の可能性などを考えるとまたとない好機と言える。

「草履取り、で御座るか__」

今の今まで怒り狂っていた藤吉郎の顔が、見る間に綻んできた。

「__いや」

しかし、藤吉郎は今一度、無理やり難しい表情を拵えると、ワザとらしく腕組みして首をひねって見せた。

「ふーむ、この木下藤吉郎、左様な事で丸め込まれると思われるとあらば__」

「不服か?」

「い、いや、いやいやいや__」

信長の問いに、滑稽なほどの身振りで藤吉郎は手を振って見せた。

「いや、この藤吉郎めは男に御座る。本来であれば、これほどまでの侮辱を受けた以上、たとえ相手が御主君なりとも引き下がるわけには参りませぬが、殿がそれほどまでの誠意を見せたとあらば話は別に御座る」

無理やり不満そうな顔を取り繕ってはいるが、その大きな口元が嬉しそうにほどけかかっているのを明敏な信長は見逃さなかった。

「殿が斯様に折れたとあらば、いつまでも恨みを残しておるは男として小そう御座る。ここは一つ、全てを水に流してその御下知、慎んで御受け仕る」

大声で能弁をふるう藤吉郎の振舞いを、信長はこの時も細大漏らさず克明に観察していた。

「されば、やつがれにはまだ仕事がござる。如何に明日からは殿の草履取りとは言え、今日を限りはまだ城内の雑人でござれば、最後までこの役儀を全うするがこの藤吉郎の勤めにござれば__」

相手がなにも言わぬというのに次から次へと言葉が出る男だった。と同時に、この言葉は彼自身のまぎれもない本音でもある。この木下藤吉郎という男は、何かをやるとなったらとことん最後までやり抜かねば気が済まぬ一途さがある。

「それでは、これにて御免__」

藤吉郎は大袈裟な身振りで頭を下げると、信長に背を向けて歩き出した。その足取りは軽やかで、今にも小躍りでも始めそうなほど浮足立っている。信長は吹き出しそうになった。

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