6話「極地魔法」
それから双子は禁書庫へ通うこととなった。
毎日毎日。
僕達は想像魔法が使えた。
そう、血統魔法すべてが。
しかしそれに関する書物は禁書庫にいかねばないのだ。
だから双子は通い詰めた。
それこそ本をすべて読んでしまうほどに。
実は、ここまで説得するのが大変だったのだ。
シリルがオフィーリアに嘆願してくれて、何とか許可を得たようなもの。
許容時間を超えると誰かが様子を見に来る。
もちろん、ほかの人は忙しいのでたいていはシリルだ。
そして、一緒に本を読んで少し遅く帰ると、オフィーリアに怒られる。
それをお祖母様がなだめる。
こんな状況が日常茶飯事なのだ。
「ねえ、アル今日で通い始めて何日目かしら?」
黙々と本を読みながら念話を飛ばしながら会話をしている二人。
「ん〜?9日くらいじゃないかな?」
「そろそろ共有魔法使ってもいいんじゃないかしら」
共有魔法とは二人が協力して作った想像魔法の1つで、双子の間ですべての情報が共有される。
それこそ魔法陣も魔法も記憶も。
ちなみに、重複しているものは共有されないという便利機能つきだ。
二人はこの9日間超読速魔法を使い図書館を2つに分けて片っ端から本を読み続けていた。
「そうだね。どこらへんまで読んだ?エマ?僕は全部だ。今はひましてたからその本の中から気になった本をピックアップして考察していたところさ」
余裕そうに答え最後に鼻で笑った。
「あら、アルも?奇遇ね私もよ」
念話の中で笑う二人だった。
『共有魔法』
そう唱えた瞬間二人の頭の中に膨大な物理的な量が能押し寄せてくる。
スキルの数も取得魔法の数ももう全てを見ることができないほどになっていた。
『うっ!やっぱりこれはすごい』
同時に頭痛が襲う。
実は、情報量が一気に入りすぎて脳がキャパオーバーしてしまうことが原因なので致し方ない。
あくまでも物理的であり、身体的なダメージは一切ないため、血統魔法の一つである治癒は使えない。
試したが、効かないのだ。
「『転移魔法』重複してるのほとんどないね。ありがとうエマ」
「本当ね。こっちこそありがとう。アル」
やっと顔を合わせた二人だった。
「ねぇアル」
「なあに?エマ」
「考えていることおんなじでしょ」
「多分そうだね。せーの!」
『転移魔法!』
「うっ!重いエマ!僕の上に落ちないで!」
「え?わーーーーー!ごめんアル!」
エマは、自分のお尻でアルを下敷きにしていることに気づき、すぐに降りる。
アルはゆっくりと腹部を片手で押さえながら立ち上がる。
「全くもう!」
アルはため息交じりに言う。
「着いたわね地下訓練施設に」
この地下訓練施設とは、広大な王城の敷地内の端っこに地下に作られた施設だ。
この存在を知っているのは双子とシリルだけだ。
「エマ!アル!やっぱりここだった!」
「お兄様?どうしてここが?」
双子は顔を見合わせ首をかしげる。
「君たちがいないと王宮の者たちが騒いでいてね。みんなに見つからないってことは禁書庫かここだろうなと思ってさ。だって君たちが誘拐なんて考えられないし。まあ、念の為探索魔法を王宮敷地内全てにかけてみたらここだったってわけ」
シリルの話を聞き、双子は小さくうなずく。
「みんなには僕とかくれんぼ中だから探さないで!って言ってあるから当分は捜索隊は出ないだろう。にしても本当に凄いねアル。エマ。魔力の質が瓜二つだよ。本当にどっちがアルでどっちがエマ?って聞かれたら絶対にわからない」
「そんなに似てるんだ」
ぼそっとアルが呟いた。
『お兄様!大好き!ありがとう!』
そして、双子はごまかしてくれたことにお礼を言う。
礼を言うべきではないのだろうが、双子にとってはヒーローである。
「うんうん。よしよし」
そう言いながら双子の頭を撫でるシリルであった。
『転移魔法!』
一斉に唱え瞬間移動する3人。
「お兄様もしものことがありますから防御魔法かけといてね!」
「ああ。そう言うと思ってもうかけてるよ。君たちの魔法がかすめるくらいなら問題ない。まともに受けたらまずそうだったから魔力で強化してあるし」
そう苦笑いしながら言うシリルだった。
「さっすが!お兄様!」
「ああ、そうそう。アル、エマ」
『なあに?お兄様!』
「君たち怪我したら僕のところにおいで。アレを使って直してあげるから。あと、君たちが危ないと思ったら防御魔法君たちにも展開するからね」
双子は内心焦った。
「わかったわ!」
そう元気に返事をするエマだったが、アルと念話を使って会話していた。
【絶対に怪我しないように。安全第一で練習しよう!】と。
アレの正体である血統魔法についてお兄様は僕達がその存在を知っているということを知らないので、僕達も知らないフリをしている。
お兄様に無駄な心配をかけないように。
「ねぇエマ僕からしていい?」
「いいわよ。でも5回までね。この訓練場にかけた防御魔法が持たないから」
「お兄様!エマ!防御魔法かけた?」
「ええ」「ああ」
「『極地魔法・火弾』『極地魔法・水弾』『極地魔法・風弾』」
そう何気なく詠唱しているが、これは略式詠唱というもので本来のものよりも格段に技術はいるが、その分詠唱の隙がなくなるのだ。
とても強さに直結する大切なことである。
そして現在この極地魔法の略式詠唱を使用することができるのは、世界中探してもこの双子だけであろう。
「アル!やめろ!」
そう叫んだのはシリルだった。
「お兄様どうしたんですか?」
このときのシリルの表情は焦っており、シリルの片腕にしがみついているエマは震えていた。
「防御魔法のかけ直しだ!この訓練場全体に!もう一発放ってみろ僕達は生き埋めになるぞ!僕が防御魔法を簡易的に展開しているから崩落していないんだ!」
アルは、周囲を一通り見渡す。
そして、シリルに言われようやく気付いたアル。
「え?ん?⋯しまった!防御魔法!」
一瞬混乱する。
そして、ハッと我に返り、急いで展開する。
「エマ!」
シリルは、怯えているエマに声をかける。
「おにいしゃま?」
シリルとアルは瞬時にまずいと思った。
呂律が回っていない。
「わたち、怖かったの」
顔色も良くない。魔力暴走のなりかけだった。
「ああそうだな。うんわかった。『安眠魔法』」
シリルは今は眠らせるのが最善だと判断した。
安眠魔法は低魔力でも使える普通の生活魔法の一部として作られたものだ。
「さあ。戻ろうか。でも転移魔法は使えないな。エマがこんな状態だと。え?アル?どうしたの?」
「ごめんなさい。僕周りのこと考えてなかった」
横で泣きじゃくるアルにシリルはどうしたらいいかわからない。
とりあえず、片手にエマを抱っこして、片手でアルと手を繋ぐ。
5歳児が1歳を片手で抱えるのはかなりつらいので、抱っこを止めおんぶに切り替える。
「うん。そうだね……でもこのまま帰ると大騒ぎだ。まだ日が暮れるまでには時間があるね。少しあるこうか。アル」
シリルには考えがあった。
ここから王城方面に少し歩いたところにとても綺麗で小さく水深が浅い湖があるのだ。
「うん」
アルはシリルに手を引かれるまま、付いていく。
そのまましばらく歩いた。
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