55話「明かされる過去」
「それは、どういう意味だ?」
シリルは疑問に思った。ルーカスとキースも同意見だ。
「えっと、母はもともと王立騎士団の魔物討伐部隊の専属医師をしていたのです。あの、経験の豊富さも実践の強さも腕も何もかもを若かれし頃にそこで学んでいるのです。特に母は最前線に配属されましたからね⋯」
衝撃的な真実だった。
普通、女医は最前線には向かわない。
最前線に配属されたということは、すでに相当な腕があり、そして何より自分で志願したということだ。
常識では考えられない。
「それは本当か?」
キースはシェーリーンに真意を確かめた。未だに信じられなかったのだ。
「えぇ。父から聞いたので間違いないかと。両親は戦場で大恋愛の末の結婚でしたから。」
なんだかヘレナの過去を知れたような気がする。
「ですので、最低限の護身術は身につけているのです。魔法も剣も体術も。並の人間ではかないませんよ。王立騎士団の騎士が普通に負けますからね。」
シェーリーンはくすくすと笑いながら教えてくれた。
「そんなに強いのか?」
ルーカスは疑問に思った。
「らしいですよ。あのエドでさえほぼ互角だとか。」
エドと互角──それは凄すぎる。
「だから心配なさらないでください。母もベアトリクス様も黒狼団のただの団員くらいはどうにでもなりますから。」
シェーリーンは本当にヘレナを信用している。
じゃなければこんな発言はしない。
「わかった。2人の強さを信じてここで大人しく待とうか。」
シリルは天を仰ぎながら呟いた。
「それが良いと思いますわ。」
シェーリーンは横で頷いた。
途端にシリルのペンダントから声がした。
「もうすぐ着きそうだ!だが、ヘレナのあの強さはなんなんだ!私は知らないぞ!」
ベアトリクスはヘレナの強さに驚いていた。
「ただ、感謝しかないな。敵の挟み撃ちにあい、ヘレナがほとんど返り討ちにしているのだから。」
ヘレナの強さはベアトリクスが認めるほどだったらしい。
「聞こえるかしら〜?少し返り血が着いてしまって、着替えてから行きますわね。」
横からシェーリーンにそっくりのヘレナの声がした。
「ベアトリクス様。貴方様もでございます。」
どうやらベアトリクスも返り血まみれらしい。
「いや。私はすぐに陛下のもとへ戻るので不要だ。」
ペンダント越しのやり取りをしていた。
「お母様!帰ってこられないのですか!」
ルーカスは心配していた。
当然だ。
やっと会えると思っていたのに、また危険な場所へ行くのだから。
「すまない⋯ルーカス。」
ベアトリクスはとても悲しそうだった。
「あっ。離宮が見えました!もうすぐ着きます!」
ヘレナの声が聞こえた。
なんだか窓の外が騒がしい。
もうすぐそばまで来ているのだろう。
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