54話「不安」
シェーリーンは困り果てていた。
「まったく。エドったら。私がエドみたいに実戦経験がないのを知らないの?」
どうやらシェーリーンは根っからの箱入り娘らしく、エドと違って実戦経験がないらしい。
「シェーリーン。ってことはさ、エドが『もうアルとエマは大丈夫』って判断したってことじゃないの?」
シリルは手を顎に当てて考えながら言った。
「シリル様。たしかにそうかもしれないわね。だって、エドは人一倍責任感が強いから途中で投げ出すようなことはしないでしょう。」
先程の言動からもわかったように、エドは人一倍責任感が強くて気が利く人らしい。
そうこうしていると、シリルが持っていたペンダントから声が聞こえた。
「エドが到着した。私もヘレナとともに離宮へ向かう。」
エドの到着は想像以上に早かった。
全速力の馬よりも速いかもしれない。
いったいどんな方法を使えばそんなに早く着くというのだ?
「本当か!」
シリルは大喜びだった。
「お母様!そちらは大丈夫なのですか?」
ルーカスが実の母であるベアトリクスに向かって話しかけた。
実の母を心配するのはごく自然なことだ。
「あぁ、ルーカス。大丈夫だ。急いでそちらに向かうよ。」
ベアトリクスは嬉しそうに答えた。
そして通信が途絶えた。
「これで一安心だな。」
シリルは安心していた。
「あの〜。殿下。ルーカス、シェーリーン。少し気になったことを言ってもよろしいでしょうか?」
キースは不安げにシリルたちを見ながら言った。
「どうした?」
「なに?」
「なんでしょうか?キース様。」
3人はきょとんとしている。
「ベアトリクス様はとても強いのですが、ヘレナ様をかばいながらとなると大変なのではないでしょうか?それに相手はあの黒狼団です。傭兵なので連携が非常によく取れています。ベアトリクス様に数で襲いかかってしまうと、さすがのベアトリクス様でも⋯。それに護衛がいません。数で押されてしまうと⋯」
キースは心配していた。
相手の数が多いし、実戦経験豊富な黒狼団だ。
いくらあのベアトリクス様でも──と。
「確かに⋯」
「一理あるな⋯」
ルーカスとキースも同意見だった。
だが、シェーリーンは頷いていない。
「シェーリーン?発言していいよ?なぜ黙っているの?」
シリルは疑問に思って問いかけた。
「申し訳ありません。あの、えっと。母が非戦闘員ではないことをご存じないのかと思いまして⋯」
娘のシェーリーンが「母は非戦闘員ではない」、つまり 戦闘員だと?!
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