4話「正体」
双子は、息をのむ。
そしてゆっくりと本を開いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
テーリア王国の王族には先天性の特別な力が存在する。
私が現段階で解析できたのは3つである。
◆◆◆
「習得速度が常人の100倍」
なので、大昔に習得が早く若くして力強かったために王になったそうだ。
今もなおその効果は薄れる気配はない。
稀にその特色を色濃く受け継ぐものが現れる。
しかし、そのものたちは、力が大きすぎるがゆえに早世してしまう事が多い。
その多くが徐々に体が蝕まれ、魔力が暴走し亡くなる。
私の妹もそうだった。今後もきっと妹のような子孫がいるだろう。
私は第二王子だった。
なので、この血統魔法に人生を捧げることができた。
◆◆◆
「治癒の力」
どんな傷や病気でも完治することができる。
ただし、その代償は大きい。
私はこれが使えた。
しかし、使うと体力が極端に落ち、3日程度起き上がることが難しくなる。
なお、私の経験上生命は関係ないと思われる。
その代償は使った力に比例する。
しばらく昏睡状態に陥ってもおかしくはない。
私は妹が暴走をする前日に高熱を出し病床に伏せていた妹を助けようと使用した。
だが、途中で限界が来たのだろう。意識を失ってしまった。
それから目が覚めたのは14日後だった。
その時に初めて妹が亡くなったことを兄から聞いた。
妹を助けることができなかった罪悪感から、私はこの研究に一生を捧げることにした。
両親も兄も憔悴し無気力になっていた私を見ていることができなかったのだろう。
私が研究したいと勇気を出して言った日には涙を流し喜んでくれた。
私は人に恵まれたのだと思う。本当に感謝しかない。
◆◆◆
「想像魔法」
なんでも思い浮かんだものを作ることができるらしい。
使い手が一番少ないと思われる。
理由は読み漁った伝承の中に記載されている回数が極端に少ないからだ。
私はこれの使い手にあったことがない。
願わくば、いつかあってみたいものだな。
私のはるか昔の先祖が書き記した書記に複数の記載があった。
前の2つは数百例とあるにもかかわらずね。
まぁ、習得速度は魔物討伐の武勇伝として拡散されていたみたいだけれどね。
他にも、治癒は戦場の聖女だの聖人だの書かれているよ。
だから、極端に例が少ないのかもしれないね。
話題性がないのだから。
実のところ、私も実在するのかわからない。
何度も書くが、一度でいいから見てみたい。
◆◆◆
最後に、私の子孫よ。
もしこの書物を見ているのならば、この内容の要約だけでも良いから書き写してはくれないだろうか。
本も古くなれば、読めなくなってしまう。
私はそれで解読に苦労したものだ。
頼む。
このことを後世に伝えたい。
もしこの書記を手にした子孫が、私や妹と同じような人であれば気に病むことはない。
自分の好きなように楽しい人生を歩んでおくれ。
私の妹も最後は笑顔でなくなったと兄から聞いている。
君は君の好きなことをすればいい。
私だって最初は非難されたものだ。
第二王子が何をしているんだと。
当時兄よりも私のほうが次代の王にふさわしいというもののほうが多かった。
兄は人望があり、私よりもよっぽど王の器に向いているというのに。
私は精神的に弱く、心も狭い。
なによりも、人付き合いが苦手な人間だ。
いったい、貴族は何を思い王にふさわしいと押すのか。
この年にもなり、疑問だ。
結局王位の補佐に私は回ったよ。
あのときの、反発は恐ろしかった。
でも私は自分の正義を貫き通した。
君は自分の正義を貫き通しなさい。
そうすれば周りは自然と協力してくれる。
協力しない人は協調性や社会性がない人や信用できない人だとでも思ってしまえばいい。
どこかで割り切らないといけないものだ。
あとは、部下や民を大切にしなさい。
それが一番大切だ。
まだ存在しているのならばだが、「王立学園」にはいかないことをおすすめするよ。
あそこの内容は私達のような人であれば簡単すぎる。
居眠りしていても満点が取れると思う。
何よりも魔力が暴走してしまったときに逃げ場がない。
王城の私室ならばどうにでもなるが、周囲に生徒がいる中では生徒に危害を加えてしまうかもしれない。
現に私と妹は暴走してしまい危害を加えている。
生徒にも教員にも建物にも。
それで、どれだけ落ち込んだことか。
子孫にはそのような思いをしてほしくないのだよ。
そのことが原因で私は妹と親密度が増してしまったからね。
兄とは年が離れていて妹と歳が近かったこともあり、もっと仲良くなったよ。
でも、それで後悔したことは一度もない。
長くなってしまいすまないね。
この本のこと頼んだよ。
私の愛しい子孫へ
ハンス・ヒューイ・フォン・テーリア
◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんかとんでもないもの見たね。それにこのハンスって人教わったような気がするよ?神童だって。お兄様のはこの2番だろうね。そしておそらく僕らはすべてを使える。」
アルは、本を閉じ、静かに本棚に寄りかかり、光も差さない天井を見る。
「理解不可能なほど幼ければいいのに....」
エマが呟く。
俯いており、暗い。
しばらく沈黙の時が流れる。
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