47話「救世主」
「ヘレナを呼ばないとなんだが、僕達は転移魔法が使えない。それに、馬を飛ばしても学園との間は戦闘中だ。危険すぎる。」
シリルは頭を抱えていた。
ヘレナがいればなんとかなる。しかし、今は危険すぎて呼びに行けないのだ。
「シェーリーン!いるか?」
シリルは叫んだ。
「天井裏から申し訳ありません。シェーリーンは今、状況確認と怪我人の引き上げのため不在です。」
天井裏から護衛していた影が言った。
「ねえ、学園の医務室にいるヘレナにこう伝えに行ってもらえない?アルとエマが危篤だって。でさ、連れてきて。」
シリルは伝言を頼んだ。
「それは構わないのですが、連れてくるのは流石に危険すぎるかと。どうなされますか?」
影はやはり黒狼団のことを懸念しているようだった。
「そうだよな。医療器具だけ持ち帰ってこれない?ねえ、エド?」
エド。それは御者の名前ではないか。なぜ?
「さすが殿下ですね。降りてきても?」
エドは返事をした。
「ああ。どこに行ったのかと思っていたよ。」
シリルは許可した。
「危篤とはどういうことですか?」
エドは影の制服の全身真っ黒で現れた。
「失礼します。あら〜。かなり高熱ですね。」
エドは見た瞬間言った。
「確か医療器具はこの離宮にもありますよね?僕がなんとかしましょう。」
エドは突拍子もないことを言いだした。
「え?できるのか?」
シリルは不思議に思った。
影は隠密や暗殺を得意としている。医学の知識なんてあんまりないはずなのに。
「大丈夫ですよ。事情も知ってますし、僕はヘレナ師匠の弟子です。あんまり知られてませんけど。」
こんなところに頼りになる味方がいたとは。
「あー、殿下?毒を使ってもいいですか?」
エドは気まずそうに言った。
「言い訳がないだろう。なぜ?」
シリルは頭に血が上っていた。
「毒と薬は紙一重でしょう?相手の魔力を低下させて暗殺する毒があるんですよ。このレベルの暴走なら、致死量一歩手前くらいまで入れていいかな?」
エドは奇想天外な発想をしてきた。
「これで死なせたら死刑だぞ?」
シリルの頭に完全に血が回っている。
「わかりましたよ。少量から様子を見て、追加でいきましょう。でもあまり猶予がないようにも思えますがね。」
エドの判断は的確だった。
「言っときますが、根本的な解決にはならないですからね?一時しのぎです。師匠が来られるまでの。」
一時しのぎでもいい。
一同はそう思った。
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