44話「協力」
「どうしてだ?」
ヴァルドは聞き返した。
「先程護衛が36人とおっしゃいましたよね?僕の探知魔法、半径1kmまでできるんですけども、軽く120はいますよ?」
相変わらず規格外だ。普通の倍以上はある。
「ほぅ?ということはもっといるぞ。アル、それは黒狼団だ。隣国リベルニア商業国の流れ者だ。しかも、もともと魔物を倒す傭兵団だった者だ。長はヴォルガと言ってな、大陸全土の指名手配犯だ。」
リベルニアといえばテーリアの3倍という莫大な人口を抱える国。
黒狼団は大陸全土に巨大なネットワークを持つ盗賊集団だ。
金品と物を得るためなら手段を選ばないが、人身売買はしないらしい。
「アル、エマ。その人の中に、マッドブラウンのボサボサ髪にダスティグリーンの瞳で、ひと際存在感があって大柄で、手入れされていない鎧と大剣を持っていて、40代後半くらいの男がいないか?」
ヴァルドは問いかけた。
双子はより高度な探知魔法で探る。
「いるよ!」
「僕も見つけた。」
本当に言った通りの人がいた。
「そうか。わかった。」
ヴァルドはシリルさながらの魔王の笑みを浮かべた。
シリルの魔王の笑みは父譲りだったようだ。
「そいつがヴォルガだ。」
静かに言った。どうやらその男が長らしい。
「ようやく所在を掴んだぞ。いつもどこにいるかわからず、ちょこまかと逃げ回っているたちの悪い人でね。」
一段と魔王の笑みが強力になっている。
3兄妹は恐怖すら覚えた。
「リアム!勝手に威圧を放たないで!子どもたちが怯えているでしょう!」
オフィーリアは3兄妹が怯えているのを見て怒った。
「はっ!すまない。つい。」
ヴァルドはなにか因縁があるようだった。
「だが、これは少しまずいぞ。一人ひとりの強さならこちらが上だろう。だが、数で押されるとどうにもならん。エド!近況は?状況を報告しろ!」
父はエドに報告を頼んだ。
「まずいです!けが人が大半を超えています。相手が足と手を狙うので、剣を振れない者が続出しています。攻撃魔法使ってもいいですか?」
エドは的確に状況を報告した。
「攻撃魔法の許可をする。アノ魔法を放て。学園に。」
アノ魔法とは一体何なのだろうか?
「アレを使うのですか?」
エドは聞き返した。
「ああ。そうだ。とびっきりのを。エド、使えるだろう?」
エドになにかの魔法を使うように命じた。
「あーもう!わかりましたよ。」
エドは御者台から降りた。
「エドと馬車を守れ!陣形を変えろ!」
外で護衛が一斉に馬車の周りに集まった。
「お父様。何をするの?」
エマは聞いた。
「援軍を呼ぶのさ。」
援軍。つまりこの戦いは勝てないとヴァルドが踏んだのだ。
黒狼団はよっぽど強いのだろう。
「僕達が出たらだめ?」
「私も戦いたい。」
双子は戦いたいと言った。
「だめよ。」
オフィーリアが厳しい眼差しで咎めた。
外からエドの呪文が聞こえた。
「始まったな。」
ヴァルドは静かに外を見つめていた。
「我助けを求む。助けを願いたまう。この願いを届け賜んことを。我が危機を告げよ。シグナル・フレイア!」
エドが魔術を唱えた途端、大きな光弾ができ、それが魔術学園に飛んでいった。
すると、魔術学園の巨大な防御魔法に吸収された。
本来呪文とはこうなのだ。双子が普段から簡略化しているだけ。
「よし。これでなんとかなるだろう。馬で急いできたら王城から5時間だが、学園からなら5分だ。それに学園には王城とつながる転移魔方陣がある。」
そんな魔法陣あったの?!
3兄妹は一同叫びたくなるほどびっくりした。
「皆!あと10分持ちこたえろ!」
ヴァルドは馬車の窓を開けて叫んだ。
ヴァルドが叫ぶだけでこれほど士気が上がるものなのか。
ヴァルドがガリウスよりも強いなんて信じられない。
ぱっと見、文武なら絶対に文だろうと思う。
胸元まであるストレートの銀髪を一つにくくっているのだ。
絶対にガリウスより強いなんて思わないだろう。
「ヴァルド様!もう無理かもしれません!」
騎士の一人が叫んだ。
「仕方ない。これは使いたくなかったのだが……アル、味方をこちらに入れて防御魔法を張れ。エマ、その周りに風魔法で風壁を作れ。シリル、けが人の回復だ。重症者から優先させろ。なんとか自力で歩ければいい。それ以上は必要ない。リカ、定期的に得意なファイヤーボールを空に打ち続けて。俺は連絡と作戦を考える。」
ヴァルドは的確に指示を出した。
「防御魔法!」
アルが防御魔法を張った。
「風壁!」
エマがアルに合わせて展開した。
「ファイヤーボール!」
オフィーリアは空をめがけて一発撃った。
「大丈夫ですか?」
シリルは手際よく片付けていく。
ヴァルドは探知魔法で偵察し、なにか魔道具のようなペンダントに話しかけていた。
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