33話「火球」
「アル〜!見てよ!新作の魔法陣!」
2年前に与えられたあの研究室で、2人は今日も楽しく魔法の実験をしていた。
エマは何やら新作の魔法陣を作ったみたい。
「え!どれ!見せてよ!」
アルは好奇心旺盛のため気になって仕方ない。
「じゃーん!」
エマは1枚の紙を取り出した。それはとても複雑な魔法陣だった。
「これなに?」
アルでさえも見たことがないようだった。
「解説しま〜す!」
エマは張り切りながら解説を始めた。
「これは『火球』の魔法陣だよ〜!入試以来ね、威力を落とす研究してたんだけど、失敗して本来の目的の逆になっちゃった!」
従来の火球の魔法陣とは、だいぶかけ離れたものだった。
「あのねー。なんかすごいのできたの。まずね、従来の5分の1の魔力でおんなじ威力の火球が打てちゃいます!なんか少ない魔力でしたら威力落ちるかなって思ったんだけどねー。そしてなんと!密度の高い火球になっちゃったので、物にぶつかった瞬間大爆発します!これでおしまい!」
エマは恐ろしいものを作ってしまった。
「エマ〜?何作ってんの!それはものすごく凄い。だけどね、この技術を知られたら戦争になるかもしれない。だから今はこれを使うときではないよ。取り敢えず、これの中に入れちゃおう!」
アルが取り出したのは水が入っていて、自身の想像魔法で作ったオリハルコン並の強度のガラス瓶だった。
そしてエマの傑作はあっけなく水に沈められたのだった。
「まだ安心できないな。防御魔法3重!結界魔法2重!」
アルはその恐ろしい強度の瓶に、それでもか!というほど魔法を掛けていった。
「アル!なんてことしてくれてんのよ!」
エマは泣いていた。
「心配するなって。紙にも結界魔法掛けたから水に濡れてるわけじゃない。僕が魔法を解けば取り出せるし、水に濡らすことだってできるよ。残念ながら他者の魔法は受け付けない設定にしたから、いくらエマでも無理!」
アルはエマをからかっていた。
「へー。アル知ってるかしら?みんな少しずつ違うから他者の魔力って感知できる。でもさ、魔力を100%同じにすれば⋯?」
エマはそう言い、目を瞑った。
パリン!
大きな音がして瓶が割れた。
「なっ!そんな僕の魔法が!」
アルは呆気に取られていた。
「アル?知ってる?いくら同等の才能があってもね、その人がどれを好きかで実力は変わるんだよ!魔法と剣なら私は断然魔法だけど、アルは剣でしょ?違うかしら?」
エマの考えは正解だ。
エマは杖を持っている方が好きだが、アルは剣を持っている方が好き。
つまり魔法はエマのほうができるのだ。
剣はアルのほうだけど。
「たしかに僕は剣が好きだ。魔法よりも。でも、剣に魔法を纏わせることはできるよ?それで剣の威力が上がるから魔法も好きだ」
実はアルは研究した末にあることを思いついていた。
それは、大好きな剣と好きな魔法の合わせ技。
最近アルはこれを使いこなしている。
ちなみにエマもだけど、その実力はアルの足元にも及ばない。
他にもアルは近接戦が好きだけど、エマは遠距離戦が好きなのだ。
ここは本当に正反対。
「でた!それでマウント取るつもり?」
エマはカッとなった。
「冷静になれよ。とにかくこれは記憶してから燃やすぞ。じゃないと悪用される」
アルの意見は論理的だった。エマの感情論とは違って。
「あーそうね。でも⋯」
エマは指を鳴らした。
すると紙は跡形もなく消え去った。
「空間収納かー。考えたね。」
これができる人はめったにいない。
容量はその人自身の魔力に比例する。
つまり双子はほぼほぼ無限。
「ええもちろんよ」
エマは頷く。
「ところでさ、アル。入学式いつだっけ?」
エマは何気なく聞いた。
「え?嘘でしょ。何いってんの?明後日だよ?」
実はこのとき入学式をあさってに控えていたのだった⋯
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