29話「共有魔法」
「終わったわ!アイル先生、礼儀のテストお願いします」
「え?うそでしょ……えぇ、始めるわね!」
実は開始してからまだ1時間ほどしか経っていないのだ。
アイルが驚くのも当然のことである。
「お辞儀!」
エマはきれいなカーテシーをした。
「着席!」
普段よりもゆっくりと座った。
椅子が低めのものを用意してくれていて良かったと心から思った。
黄色の可愛い柄は余計だったが。
「起立!」
先程同様ゆっくりと立ってみせた。
「歩く!」
上に本を乗せているような感覚で歩いた。
一歩一歩、小さくまっすぐに。
「これ切ってみて!」
チーズとナイフ、そしてフォークが出された。
これまた嬉しかったのが、ナイフが小ぶりで王城で使っているものと似ていたことだった。
いつもは話しながら楽しく食べているが、今日は無言で優雅に優しく微笑みながら食べる。
「ごきげんよう。本日は良いお天気ですわね。返答は?」
「まぁ!本当に良いお天気ですわね!こんな日はピクニックがいいですわよ。わたくし、よく家族5人で行きますの!」
エマは、子供らしい笑顔全開で答えた。
「さすがね。合格よ。では待合室に向かいましょうか」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「あら?アル、速いわね」
「そういうの、エマだって」
二人は2時間ぶりに再会した。
【じゃ、アル。魔力完全に同調したわよ】
【さすがエマ。わかってる!】
【共有魔法】
【エマ⋯なかなか難問だね、これは。想像以上だっ!】
【ねぇ思うんだけどさ、これ私のほうが難しくない?だってさ、アルは私の答案見て写すわけでしょ?私は魔法測定機でアルとぴったりにしないといけないんだよ?】
【まあまあ、そう言うなって】
「先生方。解答等を回収します。私の元へとお持ちください」
ジュリアは他先生から色々受け取る。
「では次は場所を交代して行いましょうか!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
その後アルは順調に進んでいった。
(エマの答えを信じてっと。こんなもんか)
アルは共有魔法でエマの解答を記憶し、それを書き写していく。
流石に解いた後を残さないのはまずいので、しっかりとそこも書きながら。
(お!エマ、これ全問正解じゃね?さすがだ!)
◇◇◇◇◇◇◇◇
時を同じくしてエマはというと、
(はぁ、剣術はともかく魔法は同じ数値なんて無理よ⋯。アルみたいに逆算するの、私嫌いなんだからぁ!)
「先生。魔法終わらせたらすぐに剣術するわ」
エマはもう自暴自棄になっていた。
「どうぞっ、え?」
驚くのも無理はない。
エマもアル同様だったのだから。
ドンッ!
大きな音が会場全体に響く。
「は?384?アルフレド様と同じ?すごいですよ!私よりも強いかも。いや、ジュリア先生と同等かもしれないわ!」
アルの予想通り、ジュリアは相当な使い手らしい。
「次は剣術ね!」
エマは淡々としていた。
「はじめ!」
「では参ります!」
ヒュッ!
カンッ!
エマが動いた瞬間に木刀が宙を飛んでいた。
「終了ですか?」
エマはもう終わりかと、つまらなさそうに言っていた。
「あぁ」
サージェス卿は、手元を凝視しながら、静かに言う。
「では待合室に向かいますね!」
エマはスタスタと歩く。
「おいおい。テーリア王家はみんなああなのか?俺も修行がもっと必要だな。5歳児に瞬殺とは。まぐれじゃない。2回連続だからな⋯。合格っと」
サージェス卿は憔悴しきっていた。
「私もですよ。これでも結構強い方なんですよ?私。でも私の最高は342なんですよ。落ち込みますよ。ま、合格ですね。文句のつけようがありません」
そして、リエナもまた憔悴しきっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
アルはというと、ちょうど試験を終えようかとしていた。
「先生、終わりました。礼儀作法お願いします」
まだ開始45分ほどだ。
「え?嘘でしょ」
さすがのアイル先生もびっくりしている。
「では開始します」
アルはそれと同時にエマの動きをコピーした。
(5歳くらいだと作法は男女ともに同じだ。魔法は使用可だから使っても問題ない。それに僕は礼儀が一番嫌いなんだ。非合理的すぎる。なんで遠回しに説明しなくちゃならないんだ?意味がわからないよ。でもエマ、君はそういうの得意だろう?僕と違ってね)
「お辞儀!」
ここは流石にカーテシーをするわけにもいかないので、ボウ・アンド・スクレープをきめる。
これは、シリルのまねだ。
「着席!」
ここはエマのマネをしてっと。
うん。エマ、僕も黄色の可愛い柄は余計だと思うよ。
でも低いのはありがたい。
だって、高すぎるとよじ登らないといけないからね。
飛行魔法使用禁止だから。
こっちのほうが優雅に座れるよ。
「起立!」
ここもエマの魔法でっと。
「歩く!」
これは僕が一番嫌いなのだなぁ。
エマ、本当にありがとう。
「これ切ってみて!」
流石に僕は微笑みたくないね。
淡々と切りながら食べよっと。
おっと、背筋伸ばすの忘れてた。
「ごきげんよう。本日は良いお天気ですわね。返答は?」
「あぁ。本当に綺麗だね。こんな日は一緒にお茶でもしませんか?」
子供らしい笑顔全開で答えた。
ただ、エマの文章は真似したくない。
だからシリルが「天気がいいから私と一緒にお茶しない?」って言ってたのを思い出したからパクることにしよう。
「まあ!すごいですわ。でも最後の文章は普通のご令嬢に言ってはだめですよ?言うのならばエメライン様におっしゃってください!」
僕は先生の言っていることがわからない。
「待合室に向かいましょうか!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「エマ?速いね」
「アルこそ」
二人は顔を見合わせた。
「これにて試験終了です。廊下にキース様がいらっしゃいますので、向かわれてください。ちなみにヘレナ先生も一緒ですよ。結果は後日お知らせいたします」
結果はどうだったのだろうか?
楽しみで仕方がない双子であった。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
本作を読み「本作が面白い!」「続きが気になる!」と感じていただけましたらぜひ【ブックマーク】や【評価★★★★★】で応援してくださると幸いです。
今後も連載を続けていきますので、応援よろしくお願いします!




