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25話「入試に向けて」

あれからどのくらい経っただろうか。

しばらくシリルに屋敷を出してもらえず、あの崖周辺にはきっちりとした柵が建てられたのだった。


そして今日は、いよいよ入試の日だ。今日の結果が運命を分ける。


今日は入試のため、一般生徒や受験生の保護者・従者の立ち入りは禁止だが、試験官以外に上級生の生徒会メンバーの数名のみ立ち入りが許される。


その中の1人がキースだ。


キースは主に案内や機材の設置および撤去などを担当するようだ。

幸いなことに、オフィーリアが双子のことを案じ、キースに双子の案内役を依頼していた。


「アル様、エマ様。本日はオフィーリア様より案内役を任されておりますので、今日は私とご一緒に行動していただくことになります。あまり目立つ行為や派手な魔法をお使いになりませんように。お願い致します。それと、アル様とエマ様は王族ですので、一般と入試の順序が違います。流石に警備の関係上、一般生徒と一緒に受けていただくわけにもいかず……もし何か問題でも起きたら外交問題に発展いたしますので。ですので、く・れ・ぐ・れ・も!勝手な行動はなさいませんように。あと、転移魔法・飛行魔法・透明化魔法の類は禁止です。あなたがたが使ってよいのは各属性の初級魔法だけです。例外は毒属性ですよ。絶対に使用しないでくださいね?」


キースはくどくどと注意事項を述べていく。


無理もない。

双子はキースの監視をかいくぐって抜け出すことなど容易なのだ。

キースは苦労人である。


「なんで?上級魔法や超級魔法はともかく、中級も!なんで?試験の注意事項に“魔法は自由です”みたいな記載あったよ?」


「そうだよ?二人同時に首席は測定不能にしないと!」


エマが反論する。


それに被せるようにアルまで反論した。

その横でキースは愕然としていた。


「まさか、ここまでとは……。いいですか?ベアトリクス様の魔法やガリウス様の剣術、そして我が父の知識戦略を“普通”などと思ってはなりません。正直に言いますが、まだ5歳であの3人の本気についていけるどころか、それ以上の反応や吸収力、そして返答をする貴方がたの才能が桁違いなのです」


双子は、状況が理解できず首をかしげる。


「普通ではありません。ベアトリクス様やガリウス様の稽古ですが、あの2人の本気に対等に渡り合えるのは不思議な話なのです。あの2人は大人です。当然ながらこの入試を受けたときよりももっと強くなっているでしょう。しかし、あの2人は剣術部門と魔術部門でそれぞれその歳の首席入学なのです。つまり、当時の2人よりも貴方がたのほうが強いのです。」


キースは双子に向かって正論をぶつける。


「そ~なの?アル」

「しらな~い」


双子の反応をよそに、キースは続ける。


「なので、剣術で本気を出せば試験官に怪我をさせるかもしれないのです。つまり、試験官に勝ちさえすればいいのです。魔術は魔道具に魔力を当て、その点数で合否を決めます。つまりはその魔道具を壊してしまえばいいのです。アル様とエマ様。退屈かもしれませんが、王立学園で実技を求めてはなりません。知識とコミュニケーション能力を磨くのです。なので、アル様とエマ様の場合、本気を出さずともおそらく測定不能です。初級魔法をいつもの威力で的に正確に当ててみてください。わかりましたか?」


キースはそう言った。

実技よりも知識とコミュニケーションを学べと。


賢い双子はやっと理解できた。

あまりにも普段が異様すぎたのだと。


そして、キースの考えはとても理にかなっていた。


2人は実技は無敵なのに、交渉能力や世間一般常識に関する知識はまるでない。


キースはそれを見抜いていた。


「わかったよ」


「キース兄様の意見に賛同するわ」


アルとエマは賛成した。


「あの、それに関してなのですが、私のことは学園では『キース』とお呼びください。臣下が王族に兄様などと呼ばれていることをよく思わない人もおりますので。『キース兄様』という呼び方は、身内しかいないところで呼んでほしいのです。これは先程とは違い、お願いです」


キースは双子の目線に合わせ、2人の前でしゃがんだ。


「わかった!」


「キース……これでいいかな?」


アルとエマは元気に返事をした。


「ありがとうございます。……おや?エドが来たようですね。馬車で向かいましょうか」


キースがお礼を言ったタイミングで、ちょうど20代くらいの若い御者が入ってきた。


彼は王城に長年勤めている使用人夫婦のもとで生まれたらしく、王家に対する信頼は人一倍厚い。

御者はエドというらしい。


ちなみに、一応準男爵家の子息らしい。


幼いときに両親の忠誠心を買われて、平民から貴族になったそうだ。


「はじめまして。アルフレッド殿下、エメライン殿下。御者をしているエドです。普段はシリル殿下が通学に使う馬車の御者をしております。今後はアルフレッド殿下とエメライン殿下の送迎も担当いたします。それ以外の時間は基本的に馬の管理等をしております。なにかあれば厩舎に来ていただければ幸いです」


エドはシリルの御者をしていたらしい。

ちなみに、キースやルーカスは寮暮らしなので徒歩通学らしい。


最近離宮に寝泊まりしていたのは、アルとエマのことをオフィーリアに報告するためだそうだ。

なんでも、シリルの書面が兄バカすぎて頼りにならないらしい。


「僕はアルフレッドです。アルでいいよ。これからほぼ毎日よろしくお願いします!」


「私はエメラインよ。私もエマでいいわ。よろしくお願いしますわ。頼りにしてるわね!エド」


一通り自己紹介が終わったところで、馬車で学園に向かって出発した。

読んでいただき、誠にありがとうございます。


本作を読み「本作が面白い!」「続きが気になる!」と感じていただけましたらぜひ【ブックマーク】や【評価★★★★★】で応援してくださると幸いです。


今後も連載を続けていきますので、応援よろしくお願いします!

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