21話「双子離宮へ行く」
翌日、無事に離宮に着いた。
どうやら離宮は学園から街を挟んだ向かいの山の頂上にあるようだ。
ここからは街の景色も王立学園も自然も見えて、絶景だった。
「わぁ!きれいね!見てみてアル!あれが王立学園なのかしら?
ところでアル。お母様から頂いた『ピンチの時が来たら開けなさい』ってお手紙、開けたらだめかな?
中身が気になるわ!」
実は昨日、お別れ間際に母から1通の手紙が送られていた。
なんでも“ピンチのときにしか開けてはいけない”そうだ。
エマはそれが気になって仕方ない。
ただ、庭の端っこに立ちながらそう叫ぶのはやめてほしい。
周りは落ち着いていられなかった。
それはなぜか──エマが2歩ほど前に進めば、10m近い崖下に真っ逆さまなのだ。
「はぁ。エマ!大丈夫なのはわかるが心配するから、あと数歩下がって。
そうだよ、あれが王立学園だよ。
あと、お母様の言いつけは絶対だ。短気な人は嫌われるらしいよ」
大きなため息をつきながら、片腕を額にあててやれやれと言わんばかりに叫んだ。
周り、特にシェーリーンが大慌てで顔が青ざめている。
「アル!エマ!おまたせ!ルーカスとキース、一緒に来たよ〜!
あ、キースとは初対面だね。
いやぁ授業が終わらなくってさ、早退するわけにもいかなくって、終わってから飛んできたってわけで。
遅くなってごめんね。キース、自己紹介をお願い」
約半年ぶりに兄とルーカスに再会した。
そしてキースという青年には初めて会う。
「はじめまして。アルフレッド殿下、エメライン殿下。
セルヴァン家当主・宰相ロゥエルが嫡男、キース・フォン・セルヴァンと申します。
殿下方とは再従兄弟に当たりますね。
今14歳なので、お二方の9歳年上ですね。
シリル殿下やルーカスのように、年の離れた兄だと思って接してください。
現に皆さん血はつながっておりますゆえ」
キースは茶髪碧眼で、文官と言われれば納得するようなスラッとした美少年だった。
僕達の曽祖父とキースの曾祖母は兄妹だ。
曽祖父よりもキースの曾祖母のほうが12歳年下で、曽祖父はたいそうかわいがっていたらしい。
「わかったわ!キース兄様って呼ぶわね!アルもいいでしょう?」
エマは年の離れた兄と思って接することにしたようだ。
その一方でアルは少々警戒しているが、ルーカスの時ほどではない。
「えぇー。あぁもうわかったよ!キース兄様!」
またもやツンデレを発揮するアルであった。
「ふふふ。とっても嬉しいです。ありがとうございます。
ところで、エマ様……なぜそんな崖の真横にお立ちでいらっしゃるのですか?
先程から気になってしまうのですが」
キースがそう言うまで、シリルとルーカスは気づかなかったようだ。
「キース、なにを……?え?
エマァァァァァァァ!!!危ないよ!こっちにおいで!」
一瞬キースが何を言っているのかわからずキースを見て、
キースがエマの方を指さしたことで、そのことの大きさに気づいたようだ。
「エマ!シルの言うとおりです!危険だ!」
それにつられたかのようにルーカスも叫ぶ。
「あぁ、だから早く離れろって言ったのに」
またアルはぼやいていた。
「えぇ?大丈夫ですわ!シル兄様、キース兄様、ルカ兄様!」
振り返ったエマは夕日に照らされて、金髪が綺麗になびく。
その光景はとても美しかった。
「だってほら、こことっても景色がきれいなんですもの」
そう言いながら、その場で1回転した。
――その刹那。
「あ!え……きゃーーー!」
エマは足をすべらせて崖下に落ちてしまった。
『エマ!!!』
シリルとルーカスが叫ぶ。
「御三方はここに。後はお任せください」
キースは叫んだ。
「キース。君はいかなくても大丈夫だよ」
咄嗟にアルはキースを止めた。
「なぜですっ!助けもせず、ただ落ちていくのを見てろって言うのですか!?
それにあなたはなぜそんなに冷静なのですか!?」
キースは体格差を利用してアルを振り払おうとしたが、
身体強化を無詠唱で発動させているアルには無意味だった。
「アルがキースを止めるなら僕が行く!」
泣きながらシリルは叫んだ。
「シルが行くなら俺だって!」
ルーカスも叫んだ。
「ああ!もう!めんどくさい!『固定』」
そうシリルが魔法を使うと、3人は動けなくなった。
3人だけではない。シェーリーンだって護衛だってだ。
「アル、なぜ行かせてくれない!」
シリルは叫んだ。
一同が涙している。
「だから、心配しなくてもなんとかなるって。だってエマだもん。
双子の勘はずれないよ。
それに助けに行った君たちを助けることのほうが大変!逆に迷惑だし」
アルは言い切った。
その姿は周囲から見れば冷酷に見えただろう。
「エマ〜〜〜!!!」
シリルが魂の叫びのような声で叫んだ。
周りは動けぬまま涙していた。
「呼んだ〜〜〜!もう!いつまで泣いてるの?みんな?」
エマは傷一つなく、元気な姿で背後からひょこっと現れた。
「エマ?本物なの?なんで?え?」
シリルが唖然としている。
唖然としているのはアル以外全員だ。
「エマ!なんでもっと早く出てこないんだ!なぜ透明化魔法を使っていたんだ!」
アルは叫んだ。
「え!だって気まずいでしょ。あの雰囲気では出られないわ!」
エマは笑顔で返事した。
「よかった!良かったよぉ!無事で……!」
シリルは叫んだ。
キースもルーカスもシェーリーンも安堵した表情だ。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
本作を読み「本作が面白い!」「続きが気になる!」と感じていただけましたらぜひ【ブックマーク】や【評価★★★★★】で応援してくださると幸いです。
今後も連載を続けていきますので、応援よろしくお願いします!




