20話「道中」
今日は、いよいよ王立学園に向けて出発する日である。
双子は試験を明後日に控えている。
王立学園はテーリア王国の王都の外れに位置している。
現在地は王都のほぼ中心だ。
そこから端まで馬車で行くとなると、だいたい15時間かかる。
1日で行ける距離だ。
馬に乗れば5時間もかからないだろう。
双子は馬で行きたいとせがんだが、両親がそれを良しとしなかった。
無理もない。
双子はまだ5歳。
5時間も乗馬するのは危険である。
さらに二人の病弱さも考慮し、2日前に出発することとなったのだ。
「行ってきます!」
エマは窓の外にいる両親たちに手を振った。
その一方でアルは外を眺めているだけである。
「アル!なんで手振らないの?」
エマは少し怒ったような口調で言った。
「手を振るとか意味ない。大体、馬車に乗る前に挨拶は済ませた。そんなふうに手を振ったら、お母様が泣いてしまうだろう。あっ……ほら、だから言ったでしょう」
そう言うアルを横目に、エマはもう一度両親の方を見る。
アルの予想が的中していた。
オフィーリアの顔はぐちゃぐちゃになってしまっていた。
「ほらな。だから言ったでしょう?」
アルはフッと鼻で笑った。
「アル様、もっと正直になってくださいよ。エマ様が誤解されているではありませんか!『お母様が泣くの見てしまったら僕まで泣いちゃう』からですよね?」
そう言ったのはシェーリーンだった。
彼女は双子の乳母ではないが、幼い頃から母と共に双子の面倒を見てくれていた人だ。
つまり双子の専属侍女である。
「そっ、そんなわけないだろう!」
シェーリーンの言葉を聞いて、耳まで真っ赤なのを隠すように横を向いた。
「え、アル。嘘でしょ。まさか図星だったの……」
エマは唖然としていた。
「うるさいな。ああそうだよ。図星で悪かったなぁ?エマ!」
顔を真っ赤にしながら、センター分けされた光の反射でキラキラ光る金髪をかき分けた。
「ふふ、あははっはは!相変わらず正直じゃないわね。素直になりなさいよ。ツンデレなの?」
エマは豪快に笑い出した。
それにつられたかのようにシェーリーンも笑い出す。
「はっ!私としたことが!すっかり忘れておりました。お昼ご飯の時間を。
あの!すみません、どこか広い場所に止めていただけますか?」
今は行く途中にある森の中にいた。
シェーリーンは左右を馬で歩いていた護衛に声をかけた。
「少々お待ちください!……あ、あそこが良さそうですね。少し止めてください」
ちょうど切り開かれていて、馬車3台ほどが止まれそうな場所を見つけた。
今ここには護衛が4人、御者が1人、馬が6匹、シェーリーンに双子の計8人と6匹だ。
この人数でその広さは十分ではないが、問題ないだろう。
「おまたせしました!皆さん、お昼ご飯ですよ!」
シェーリーンが王宮から持ってきた食材で、簡単に作ってしまった。
「お腹すいた!シェーリーン嬢ありがとう!」
「美味しそうだな!」
「ちょっと待ってください。まだ馬の餌が!」
そんな会話を騎士たちがしているのを横目に、アルとエマは馬車の中でパンとスープを食べていた。
「さっすが!シェーリーン!美味しいわ!」
スープを口いっぱいにほうばりながら満面の笑みで答える。
「本当だね。外で食べるのに、王宮と同じ味だ!どうしたの?料理苦手でしょ?」
シェーリーンは料理が苦手だったはずだ。
なのに何故か、とっても美味しい料理が短期間で作れるようになっていた。
「ふふ!実はですね、休憩時間等を活用し料理長に料理を学んでおりました!私は筋が良いらしく、最終的には『シェーリーン!私の誇れる弟子だ!』と、あの厳しく涙もろいことで有名な料理長に言われましたわ。ふふ!練習した甲斐がありましたわ!」
自信満々に、そして誇らしげに語った。
「へえー」
二人は料理に夢中で、途中から聞いていなかったようだ。
とっても料理は美味しかった。
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