19話「決まり事」
あれからちょうど2年経っただろうか。この2年間でたくさんのことがあった。
ベアトリクス様に魔力制御の方法をたくさん学び、お陰で魔力暴走の予兆程度なら捉えられるようになった。
だが、流石に魔力暴走そのものを止めることはできなかった。
例えるなら──魔力暴走を止めるということは、自然災害である地震を止めるようなもの。
地震発生の予兆を捉えられるようになったというだけでも、とても大きな進歩なのだ。
この2年間で一番変化したことといえば、兄シリルとルーカスが王立学園に行ってしまったことだ。
少し寂しいような、離れられて嬉しいような、複雑な気持ちである。
双子は今5歳。兄シリルは今9歳である。
今日は双子にとって運命の日。
「お母様とお父様に取り次ぎ願えますか?」
アルは応接室の前にいた近衛兵にお願いした。
「かしこまりました。少々お待ちください」
そう言うと、2人のうち1人が奥へと入っていった。
「お待たせいたしました。どうぞ。中でお待ちです」
そう言って扉を開けてくれた。
「待っていたわ。ところで大切なお話ってなあに?また何かしたのではないでしょうね?」
少し怒っているような、怒っていないような……なんとも言えない表情で返事をしたのは母オフィーリアだった。
「私達は今日、大切なお話があって来ました。私達、あと1ヶ月後に行われる『王立学園入試』を受けたいです。『早期入学制度』を利用すれば可能でしょう。それに私達はベアトリクス様やガリウス様の弟子ですよ?心配ありません」
エマは自信満々に発言した。後ろでアルも堂々としている。
「確かにあなた達の実力ならば大丈夫でしょうけど……でもまだ5歳よ?3年も早いじゃないの」
心配そうにオフィーリアは言った。
「でもそれもありかもしれないぞ?リカ。よく考えてみろよ。今でも現役将軍に魔法師団団長と互角ではないか?あと半年もしてみろ、本気を出せる相手がいなくなってしまう。座学も十分すぎるほど凄いが、王国よりももっと凄い研究者とかがたくさんいるだろう?だから、いい刺激になるかもしれない。それに今ならシリルもキースもルーカスだっている。確かキースは14だからあと2年か。3人がいればなんとかしてくれるだろう。特にシリルは真っ先に飛んでいきそうだ。入学するにはいいタイミングのような気がする」
それは双子を本気で心配しての言葉だった。
「確かにあの3人ならば任せられるわね。わかったわ。いいわよ。でも入学試験は二人とも首席で通過しなさい。でなければ入学は認めません」
オフィーリアは普通なら無理難題な条件をつけてきた。
双子にとって首席はどうでもいいが、問題は“2人同時に首席”という点だ。
このクリアは難しい。
全て測定不能にしてしまえばいいのだが、流石に目立ちすぎる。
つまり、スコアをすべてそっくりにしなくてはならないのだ。
座学は満点を取っても目立たない。
問題は実技だった。
王族なので礼儀等は問題ない。
【どうする?首席と次席ってお願いするか?そのほうが手っ取り早い】
【それもそうだけど、なんかアルに負けてしまいそうで悔しいから嫌だよ。でも保険をかけておくのはありかもね】
【大丈夫さ。絶対に勝つ。まあ、同時に首席になればいいんだ】
【わかった。絶対に同時に首席だよ?次席とか嫌だからね???】
【あはは!わかったよ。ちゃんとするからさ。僕は約束はちゃんと守る男だからな!】
【本当に?まあ今回は信じるとするわね】
「アル〜!エマ〜!戻ってきなさい!何ぼーっと互いを見つめ合っているの?」
2人を現実に引き戻したのは母だった。
「ごめんなさい!考え事してましたわ!」
エマが答える。
「別になんでもないさ。ところでさ、首席も取るけど次席も取る。その2つを独占するってことでどうかな?」
アルは合わせた。
「ええ。わかったわ。あなた達はそれでいいのよね?」
母はもう一度我が子に向かって問いかけた。
「はい!もちろんですわ」「ああ」
そう答えると、オフィーリアは急に女王の仮面を被った。
「テーリア王国・第24代女王オフィーリア・フォン・テーリアが命じます。我が名において入学試験を受けにゆくことを許可いたします。ただし条件は6つあります」
◆◆◆
1、入学試験を首席及び次席で突破すること。
2、入学後の試験で全科目5位以上を維持しなければならない。
3、体調管理をおろそかにし研究に没頭してはならない。
4、体調に異常がある場合は特別に帰宅を許可する。
5、テーリア王国より帰宅を命ずる場合には必ず帰宅すること。
6、住まいは寮ではなく近隣に位置する離宮でシリルと一緒に生活すること。
以上を1項目でも破った場合は王命違反とし、即刻謹慎または退学とする。
◆◆◆
「これでいいわね?第二王子アルフレッド及び第一王女エメライン?」
『はい。了解いたしました』
双子は答えたが、疑問がたくさんあった。
僕達には1つしか条件を言っていないのだ。
なのになぜ結果的に6つになってしまったのだろうか?
双子はその真意にまだ気づけていない。
だが、いつかその本当の理由に気づく時が来るだろう。
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