18話「豹変」
「さすがシルだな!そろそろ飽きてきたところなんだ。もう元の姿に戻るよ。お手上げだ」
そう言うと、さっきまでの丁寧な口調がガラリと変わった。
あろうことか、第一王子にもタメ口だ。
「そうだろうと思った。付き合ってたけどもうやめたよ。どうせいつもの猫かぶりだろうと思った」
もはやアル、エマ、ストにはわからない次元だ。
アルとエマはこう思っていた。(何の話をしているんだ?僕(私)達にもわからないことってあるんだね)と。
「大正解だよ。ねぇアル様エマ様、僕もシルみたいにアル、エマって呼んでもいいかな?様つけるのめんどくさい」
本当にさっきとは別人だ。
顔は全然変わっていないのに、口調だけが別人である。
このルーカスの質問に対してアルとエマは思ったことがある。
これは拒否権がないと。
なぜならば、兄でもうすぐ立太子される予定のお兄様を「シル」とあだ名で敬称なしに呼んでいるのだ。
その弟妹でただの王族に過ぎない僕達にだけ敬称を付けないとだめなんて、とてもではないが言えない。
このルーカスの言動一つで、フランメイル家がアルフレッド側についたと思われても不思議ではないのだ。
『いいよ!』
双子はそんな考えが頭をよぎりながら、元気いっぱいに返事をした。
「よかった。ところでさ、アル・エマ気になることがあるんだけど、なんでこんなに二人の魔力の波長がそっくりなの?あとさ、僕勘で大体の魔力が測れるんだけど、どうして君たちのは測れないの?それとも王族が特別なのかな?シル。君は知らないだろうけどね、シルの魔力の波長、僕達兄妹以上にそっくりなんだよ。それに魔力量が測れないのも同じだ。僕達もよく魔力の波長すごく似てるって言われるほどなんだけどね」
本当に勘が鋭い。
ここまで初見で気づけた者はなかなかいないだろう。
「あとさ、人って魔力の波長って血縁者で似るもんなんだけどね、大体少しずつ違うから誰かわかるんだけど、どうしてアルとエマは区別がつかないのかな?おかしいな?僕の実力は母上の折り紙付きなのだがなぁ?」
厳しいことで有名な魔法師団団長の折り紙付きとは⋯。
ただの親バカ心ではなさそうだ。
もしそうならば僕達のことを見抜けはしない。
「シル、考えすぎさ。僕達はあの英雄の子孫だ。先祖返りくらいするし、何よりもアルとエマは双子だ。僕達は同父母を持って生まれている。アルとエマは本当にそっくりなんだ。でも仕方なくないか?だって双子だよ?それに遠い異国の医学書を見たんだけど、おそらくアルとエマは『一卵性双生児』というものだと思う」
少々ゴリ押しではあるが、流石にステータスが瓜二つということまでは言えないし、ルーカスに嘘をつくわけにもいかない。
公開されていて言っても問題ないものしかシリルは言っていない。
決して嘘でもない。真実は言ってあるが、核心に触れていないだけなのだ。
「それもそうだな。確かに双子というのもあるだろう」
どうやらルーカスは納得したようだ。
しかし安心はできない。
なぜならばルーカスは鋭い。何かに気づかれるかもしれない。
油断できない相手である。
こんなことを双子は思っていた。
「あの、シリル様。本日私が大好きな刺繍でお花を縫ってみたのですが⋯いかがでしょうか???」
恥ずかしそうにしながらも、兄に後押しされようやく言う気になったスカーレット。
「本当!いいの?わあ!刺繍上手だね。ぜひいただくよ。婚約者の手作りを普段遣いにはできないから、ストと一緒に行くパーティーのときに必ず付けていくね?それでいいかな」
「え?よろしいのですか!とっても嬉しいですわ!」
満面の笑みでその場でジャンプして喜んでいる。
「よかったね、スト。頑張った甲斐あったじゃないか」
「はい!お兄様!」
読んでいただき、誠にありがとうございます。
2章完結となりました!明日の定刻に3章更新します。
読んでいただけると嬉しいです!
~予告~
次章は王立学園の入学試験です!
念話が使えない状況でどうやって乗り切るのか……!
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