16話「学園への決意」
二二人は病弱を装いながら慎重にルーカスを案内した。
眼の前には大きな扉。
ここは謁見の間だ。
2年前にシリルが女王夫妻にこっぴどく叱られた部屋だ。
あの日同様、本日も非公開である。
「第二王子アルフレッド様・第一王女エメライン様・フランメイル家嫡男ルーカス様ご入場!」
扉の横に立っていた近衛兵が大きな声を出すとともに扉が開かれる。
その場には、両親とシリル、そして小さいときに会ったことがあるフランメイル家当主ベアトリクス様のそばに、小さな少女がいた。
その子はルーカスと同じ赤い髪で、きれいなエメラルドのような緑の瞳をしていた。
瞳の色を除けば容姿がとてもよく似ている。
おそらくこの子がスカーレットなのだろう。
双子はテーリア家側、ルーカスはフランメイル家側に立った。
「では紹介しましょう!まず王家側からの紹介ね。右から第一王子のシリル。第二王子のアルフレッド。第一王女のエメラインよ。そして私ね。こちらが旦那のヴァルドです。ここにはいないけど、私の母で前王妃のエリザベートが別にいらっしゃるわ。今は離宮でのんびり余生を過ごしてらっしゃるのよ」
オフィーリアからの王家側の紹介が終わる。
次は言うまでもなくフランメイル家側だ。
「では私からも。まず今日の主役でシリル様の婚約者スカーレットだ。次に、嫡男でスカーレットの兄であり、シリル様の学友のルーカスだ。で、私は当主のベアトリクス。今は領地で貿易関連の仕事をしていて引きこもっている夫のエドワルドがいる」
自己紹介は一通り終わったようだ。
「アルちゃんとエマちゃんは、スカーレットとルーカスには会ったことないわよね!あ、それはそうとして、アリス!どうしたのよよそよそしくって!いつもなら『リカ』って呼ぶじゃないの」
オフィーリアの女王の仮面が外れた。
「あの、お母様。『アリス』ってどなたですの?」
エマは気になりすぎてつい聞いてしまった。
「アリスはね、ベアトリクスのあだ名よ!ほら長いでしょ。だから2文字目のア、4文字目のリ、6文字目のスでつなげるとアリスよ!私達はね学友だったのよ。ちなみに私の従兄のガリウスともね!宰相家はね、現宰相の嫡男が私達より13歳下なのよね。ちょっと離れすぎていて、もはや年の離れた弟だったわね」
オフィーリアはそう豪快に笑い飛ばした。
「宰相家ってセルヴァン家だよね。あれ?お母様っていくつなの?」
そう失礼を承知でアルは尋ねた。
「私?私はね今25よ。あ、そうね。なんならセルヴァン家の嫡男のキースは、今王立学園に通っているはずよ?だってまだ12歳だもの。でもね、あの子は魔術好きで成績優秀だから、特例かしらね?なんかそんな気がするわ」
王立学園は8歳から16歳までの男女が通う学び舎である。
毎年その倍率はすさまじく、1学年250名という定員に対し1500人以上が受ける年もある。
実に約20倍である。
その分、入学し卒業すれば将来安泰と言われており、卒業生は引く手あまたなのだとか。
シリルたちは1年後。
スカーレットは3年後。
双子は5年後である。
キースは双子とは時期が重ならない。
ただ、特例というのはあって、8年間で筆記や実技など全科目で10位以内に入り続けると、無償で好きなことが研究し放題なのである。
この特例は、主にまだ家を継がない子や貴族家の嫡男・嫡女以外の生徒に非常に人気がある。
おそらくオフィーリアが言っているのはこのことだろう。
ただ、宰相家の長男が特例でいいのか。
他にも早期入学制度や飛び級制度などが存在している。
今までの歴代最高はどちらも同一人物で、6歳で入学し、8歳で首席で卒業した人物がいると聞いている。
この人物は双子の先祖だ。
そして当時神童としてとても有名だった。
ちなみにその人も、この特例制度を使い生涯にわたり何かしらの研究をしていたと後世に伝えられている。
この研究に関しての記録は一切存在していない。
この人の名前は「ハンス・ヒューイ・フォン・テーリア」。
あの双子が2年前に手にした血統魔法の本の作者だ。
おそらく彼が生涯にわたり研究していたというのが「テーリア王家秘術血統魔法」なのだろう。
【エマねぇ、僕ね一つ思うことがあるんだ】
アルはエマに念話で話しかける。
【なに?王立学園のこと?】
【そうだ。早期入学制度と飛び級制度を利用してさっさと入学して、特例制度を使っていろんなこと実験しない?僕達は病弱設定でしょう?だからこの王城の地下訓練施設に転移魔法で飛んで消費するのだって簡単なことだ。だって体調が悪いから学校に行くことができない、で済まされるんだから。それに王立学園卒は一種のステータスのようなものみたいだしな】
【確かにそれはありかも。でも、実技で僕達の実力が国内外に知れてしまうのではないの?】
【エマ。その時はね、ゲームをしようよ。絶対に2人で首席以外取らないように、僕とエマの結果を同じにして毎回2位と数点差で勝つんだ。属性も火・風・水・地だけ使用すれば大体なんでもできる。多少は目立つだろうが、真の実力はこれでバレない。実技は測定不能が存在するけど、筆記には満点以上はない。つまり満点とっても怪しまれないわけ。でも記述の思考力を問うパターンだったり魔法陣を書けってパターンなら、少し手を抜かないといけない。僕達のオリジナル魔法陣は使えないってわけさ。あと、思考力は授業で習ったことだけをまとめて書いておけばまず不正解になることはないだろう。どう思う?】
【確かに制御が苦手な私達にとっては最適なゲームね!でも本当に行くの?】
【あぁそのつもりだ。だって王立学園に入学していないってだけでも上位貴族、ましてや王族なんて色々言われるだろう?でもそれは僕達に対してでもあるが、お兄様やお母様とお父様だって言われてしまうかもしれないんだよ?それだけは避けたい。だから成長して魔力が増えすぎて手を打てなくなる前にさっさと入学して、さっさと卒業してしまえばいいんだ。入学するのは5歳だ。だって来年入学したらお兄様と同級生になってしまう。それだけは避けたい。お兄様が万年2位なんて困るだろう?お兄様は天才で努力家だ。僕達の能力が異常すぎるだけなんだよエマ】
【たしかにそうね。でも学校なんてめんどくさいから、仮に5歳で入学したとして6歳ぐらいまでには卒業したいわね。単位をTOPで取り続ければ十分可能でしょうけど。で、アル。やっぱり狙うはあれだね。剣術大会・魔術大会!アルは剣術大会取って私が魔術大会取ればいいじゃないの】
【確かにそれはそうだ。エマのほうが魔術はできるけど、剣術は僕のほうができる。これで打診しようか】
【そうね。フランメイル家が帰ったらね】
「アル!エマ!どうしたの?さっきからぼーっとして」
どうやら念話に集中しすぎて周りが見えてなかったようだ。
「これからは大人のお話だから、東屋で5人でお茶会しておいでってさ」
シリルは笑顔で双子の両手を引っ張りながら早足で歩き始めた。
それに続いてルーカスとスカーレットも続く。




