13話「揺れる心・環境」
あのあと、アルは我に返った。
(どうして僕はエマやみんなを傷つけかねない発言をしたのだろうか?なぜ利益もないことを?理由がわからない。感情的になってしまった。)
そう思っていた。
(だがしかし、客観視するとエマのほうが正しいような気がしないでもない。)
そうも思っていた。
そうこうしているうちに⋯
「アル!エマ!聞いて!僕の婚約者が決まったよ!」
そう勢いよく部屋に入ってきたのはシリルだ。
『えっっ?えー!!!!』
二人は同時に叫んだ。
「聞いて驚け!弟妹よ!」
なんだか急に偉そうになったな。
そう思う双子であった。
「3大公爵家が一角!『フランメイル家のご令嬢』だ!」
二人は聞いた瞬間目が点になった。
「僕達は会ったことがないから、名前なんて言うの?」
そう聞いたのはアルだ。
「スカーレット嬢だよ!御年5歳で、フランメイル家当主の第2子だよ。君たちにとっては2つ上のお姉さんだよ。ちなみに、スカーレレット嬢の兄に当たるのは、ルーカスだね。僕の親友さ!君たちは会ったことないね。今度一緒に遊ばない?とりあえず5人で!他にも僕の親友何人かいるけど、まずはあの兄妹でいいでしょ」
そう言った。
シリルの婚約者は、公爵令嬢らしい。
まぁ、次期国王筆頭(ほぼ確定)なのだから当然なのかもしれない。
「あー。お兄様それさ、お母様とお父様に言ってる?今までも、私達お友達って言って何人か会ったことあるけど、普通に話してるだけで、離れていって最終的に二人で孤立しちゃったからね。図書館でもどこでもさ…」
双子は残念そうな顔をしているが、シリルにはわかる。
双子が普通の話というのが、同年代でもかなり賢いと自負しているシリルがやっとついていける話の内容だと。
普通の3歳児程度の子は愚か、普通の一般人にもわからないようなことを言っている時がある。
もはやそれは、貴族の模範教育の域を軽く凌駕している。ということが。
「大丈夫だ!すでに許可は取り済みだ!そう言うと思って先回りした!それにだ、これを見ても疑うか?」
そこには王しか押せない判子が押され、女王直筆の許可証だった。
これは疑う余地もない。
鑑定を双子はかけるが、嘘偽りはなかった。
シリルが言っていることは本当のようだ。
「本気なのね!?冗談かと思ってましたわ」
書状を両手で握りしめエマは震えている。
「でもその、スカーレット嬢とルーカス様?だっけ?どうせその二人も僕達の話についてこれないでしょ」
エマに続いてアルまでもが呆れていた。
「心配するな!君たちほどではないにしろ、僕と同等の知識はあるよ。ルーカスはね。スカーレット嬢は、あまり会ったことがないからよくわからないからルカあ、ルーカスに聞いたんだ。そしたら『同年代からしたら賢い方だ』だってさ。でもそれがどのくらいの基準で言っているのかがわからないからね」
満面の笑みで嬉しそうに答えた。
「お兄様。『ルーカス様』のことは『ルカ』で大丈夫ですわ」
エマが答えた。
後ろでさり気なくアルまでもが頷いている。
「ほ、本当に?アルとエマがそれでいいのなら!ぼ、わ私はそう呼ばせていただくよ」
少し戸惑っていたがその提案を案外すんなりと受け入れてくれた。
「で、いつですの?その五人で遊ぶ日は?」
エマはシリルに尋ねた。
「あれれぇ?ん?言ってなかったけ?明日だよ?」
え?と顔に「?」が浮かんでいる。
『あ、明日で、ですか?』
二人とも目をパチクリさせている。
「一週間前から両親やフランメイル家にルカとか色んな人に打診して、許可が降りたのが一昨日なの。で、そこから許可証作ってもらってたり色々説得材料揃えてたら、今日になちゃって。で、現在に至ります。本当にごめんなさい」
ところどころ眼を泳がせながら、少し縮んだように感じるほど申し訳なさそうにしていた。
『ハァ〜』
二人はため息を同時につく。
「なるほど。で、明日になったのね?お兄様」
少し怒っているようにも思えるような威圧感に包まれた声に、周りにいた人すべてがびっくりしている。
それもそのはず。
だってこの声には無意識のうちにエマが魔力を乗せてしまっているんだから。
「明日は二人で城下町をお散歩する予定だったのに。それも全て取りやめではありませんか!全く無茶振りな」
エマ同様アルまでもがおんなじことをしている。
その結果周囲にはありえないほどの魔力が充満していた。
「反論の余地もありません。本当にすみませんでした」
本当に反省しているようだった。
「明日ね?なんとかする。せっかくお兄様が、頑張ってくださったんだもの。ねぇアル?」
「ああそうだな。なんとかしよう。エマ。善は急げだ!」
「了解!アル!」
そう言うなり二人は自室を飛び出していった。兄と侍女や執事数人を残して。
二人は明日の日程を開けるために奮闘したのであった。
ただ一人の兄を悲しませないために。




