表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/5

season2第4章「夏休みの向こう側」

*これは実際に経験した中学1年生頃の経験をもとに書いた小説です。「全10話」*


*"夏休みが終われば、また学校が始まる。そう思うだけで、少しだけ胸が苦しくなった。"


夏休みが始まる頃には、私の学校での過ごし方はすっかり変わっていた。

朝、学校へ行く。

先生に確認される。

そのあと、教室の隣にある小さな部屋へ向かう。


1限、2限をそこで過ごすことが多かった。

3限になると、渡り廊下を渡って本館校舎へ向かう。

本館の1階にある別室。

そこが、私のもう一つの居場所だった。


けど1限、2限が嫌で3限から行く時もあった。


別室には、別室担当の先生がいる。

「おはよう。」

「今日もここ?」

「……はい。」

そんな短いやり取りをして、私は自分の席につく。

何気ない毎日だった。


でも、その「何気ない」が、私には大切だった。


夏休み前までは、部活動にもちゃんと行っていた。

部活が終わったあと、国語の先生と話すこともあった。

教室には戻れなくても、先生と話す時間は好きだった。

「今日どうだった?」

「疲れました。」

「頑張ったね。」

そんな会話をしていると、少しだけ普通の中学生に戻れた気がした。


そして、別室には養護の先生も来てくれる。

ほとんど毎日のように顔を見せてくれた。

「Ami、今日どう?」

「……普通です。」

「本当に?」

「……ちょっと疲れました。」

そんなふうに、少しずつ本音を言えるようになっていた。

先生は私の話を聞いてくれる。

弱音を吐いても、否定しない。

必要なときには手当てもしてくれる。


私はいつの間にか、先生が来るのを待つようになっていた。


そして、週に一度は保健室へ行って話す。

保健室のドアを開けると、先生がいる。

それだけで安心した。

「ここに来ると落ち着く。」

ある日、私はぽつりと言った。


先生は、

「そう思える場所ができてよかったね。」

と笑った。

私は小さく頷いた。


私にとって保健室は、「休む場所」から「安心できる場所」へ変わっていた。


それでも、学校生活のすべてが楽になったわけではなかった。


教室には、まだ入れない。

教室の前まで行くと、足が止まる。

扉の向こうから聞こえる声。

先生の声。

友達の笑い声。

そこに行きたい気持ちはある。


でも、身体が動かない。


そんな自分が嫌になることもあった。

「なんで私はできないんだろう。」

何度もそう思った。

でも、先生たちは急かさなかった。

「今日はここでいいよ。」

そう言ってくれる。


それがありがたかった。


そして、夏休み。

学校へ行かなくていい日が続いた。

最初は少しほっとした。


でも、時間が経つにつれて、別の気持ちも出てきた。


――夏休みが終わったら、どうなるんだろう。


また朝、学校へ行く。

また確認される。

また教室に入れない。

また別室へ行く。

そんなことを考えると、不安になった。


それでも、夏休みの間に先生たちのことを思い出すこともあった。

国語の先生。

養護の先生。

別室担当の先生。

私のことを気にかけてくれる先生たち。

「また先生に会いたいな。」

そう思った。


そして、夏休みが終わった。

久しぶりの学校。

門をくぐった瞬間、胸がぎゅっとなった。

「行かなきゃ。」

自分に言い聞かせる。


朝、学校へ行く。

いつものように確認を受ける。

そのあと、教室の隣の部屋へ向かった。

1限。

2限。

窓の外を見る。

久しぶりに聞く学校の音。


懐かしいような、怖いような、不思議な気持ちだった。


3限になると、渡り廊下を渡って本館へ向かう。

別室のドアを開ける。

「おかえり。」

別室担当の先生がそう言ってくれた。


その一言に、少しだけ力が抜けた。

「……ただいま。」

私は小さく笑った。


夏休み前と同じ場所。

同じ先生。

なのに、私の中には少し違う気持ちがあった。

ここに戻ってこられた。

それだけで、十分だった。


でも、夏休みが明けてから、少しずつ学校へ行くことが難しくなっていった。


1限から行こうと思っても、朝起きると身体が重い。

学校へ着いても、教室の前まで行くと入れない。

そんな日が増えていった。


1限や2限に行けた日でも、教室の隣の部屋で過ごすことが多くなった。

ときどき、英語の先生や国語の先生が来てくれた。

「授業、どうする?」

「……今日はここにいます。」

「分かった。」

教室に入れなくても、先生たちは私を置いていかなかった。


そして、養護の先生も変わらず別室へ来てくれた。

「今日も来たよ。」

その声を聞くと、少し安心した。

私はまだ、教室に戻れていなかった。

でも、先生たちとのつながりは少しずつ強くなっていた。


そして私は、この頃から少しずつ気づき始めていた。

学校に行くことそのものが怖いのではなく、

「学校へ行ったら、また何かを求められるかもしれない」

ということが怖いのかもしれない。


だからこそ、何も求めずにそばにいてくれる先生たちが、私には必要だった。


夏休みが終わったあとも、私は学校へ行った。

毎日ではなくても。

朝からではなくても。

教室に入れなくても。


それでも、

「行かないと。」

そう思っていた。

その気持ちだけは、まだ消えていなかった。


そして、この頃から私の学校生活は、少しずつ後期へ向かっていく。


登校できる日が減っていく一方で、


私はそれでも、もう一度学校へ行こうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ