season2第2章「学校の校則と先生達」
*これは実際に経験した中学1年生頃の経験をもとに書いた小説です。「全10話」*
*"中学生になれば、何かが変わると思っていた。けど、変わったのは周りだけじゃなかった。私自身も、少しずつ自分が分からなくなっていった。"
中学校の入学式。
新しい制服に袖を通して、私は学校へ向かった。
小学校とは違う校舎。
見たことのない先生。
たくさんの新しい顔。
少し緊張していたけれど、私はまだ笑えていた。
「これから楽しくなるかな。」
そんなことを考えていた。
入学して二日目。
私は、あることをして学校へ行った。
ネイル。
メイク。
そしてピアス。
小学生の頃と同じように。
もちろん、校則で駄目だということは分かっていた。
それでも、今までの自分を手放してしまうのが怖かった。
髪やネイル、メイクやピアス。
それらは、私にとってただのおしゃれじゃなかった。
「これが私。」
そう思えるものだった。
だから、全部なくしてしまったら、自分までなくなってしまうような気がした。
でも、学校では当然のように注意された。
別室へ連れて行かれ、ネイルを落とす。
ピアスを外す。
メイクも落とす。
一つずつ、今までの自分を取り上げられていくような感覚がした。
「校則だから。」
先生が言っていることは分かっていた。
分かっていたけれど、嫌だった。
その日から、私はちゃんと校則を守るようになった。
もう何もしていない。
ネイルもしていない。
ピアスもしていない。
メイクもしていない。
それなのに、担任の先生から疑われることがあった。
廊下ですれ違うだけで、じっと見られる。
何かしていないか確認される。
教室に入ろうとしても、なかなか入れてもらえない。
私はだんだん、教室の前に立つこと自体が怖くなっていった。
――私は何もしていないのに。
そう思っても、言葉にはできなかった。
入学して二週間ほど経った頃。
私は、ほとんど教室に入れなくなった。
別室で過ごすことが増えていった。
朝、学校へ着く。
私は教室へ向かおうとする。
でも、その途中で先生が待っている。
私はそれを避けるように、別の道から教室へ向かった。
教室に着けば、友達がいた。
友達と話している間だけは、以前の私に戻れた気がした。
笑える。
話せる。
普通に過ごせる。
「やっぱり大丈夫かもしれない。」
そう思った。
けれど、結局先生に見つかってしまう。
「Ami、ちょっと来て。」
そして、また別室へ。
そこで何かしていないか確認される。
それが毎日のように続いた。
学校へ行くこと自体が、少しずつ怖くなった。
「明日もまた同じなのかな。」
朝起きると、そんなことを考えるようになった。
そんなある日。
別室で一人で過ごしていると、国語を担当している先生がやってきた。
「Ami、ここにいるんだ。」
「……はい。」
先生は私の隣に座った。
「何してたの?」
「何もしてないです。」
「そっか。」
先生は、無理に何かを聞き出そうとはしなかった。
ただ、普通に話してくれた。
学校のこと。
授業のこと。
くだらない話。
気づけば、先生と話している時間が増えていた。
一時間だけではない。
ときには二時間くらい、別室で一緒に過ごした。
私は少しずつ、先生に話すようになった。
最初は本当に小さなこと。
「今日眠いです。」
「給食何かな。」
そんな何気ない話。
でも、先生と話している間だけは、少しだけ肩の力が抜けた。
そして、先生と話すようになって一週間ほど経った頃。
私はずっと言えなかったことを話した。
自分のキズのこと。
声に出すのが怖かった。
話した瞬間、何かが変わってしまう気がした。
それでも、先生は最後まで話を聞いてくれた。
「話してくれてありがとう。」
その言葉に、少しだけ安心した。
そして先生は、
「他の先生やお家の人には言わないから。」
そう言ってくれた。
私は、その言葉を信じた。
やっと見つけた。
自分のことを話せる人。
安心できる人。
そう思った。
でも――
その約束は、私が思っていた形では続かなかった。
後になって、そのことを知った私は、
「どうして……?」
という気持ちでいっぱいになった。
信じたかった。
信じていたからこそ、苦しかった。
そして、その頃から学校での過ごし方は、さらに変わっていった。
担任の先生によって、
「基本は別室で過ごして、行けるときだけ授業へ行く」
という形にされてしまった。
私は自分で決めたわけじゃなかった。
でも、そう決まってしまうと、ますます教室へ行きづらくなった。
教室のある校舎へ行くことさえ怖くなっていった。
入学したばかりの頃は、
「新しい学校で、また普通に過ごせる。」
そう思っていた。
なのに、気づけば私はまた、
教室から遠い場所にいた。
そして、まだ知らなかった。
このあと、私の前にもう一人、
私のことを見つけてくれる先生が現れることを。
その先生との出会いが、
私にとって「保健室」という場所を特別な場所に変えていくことを。




