第6話:光らなかった水晶
ご飯を食べ終えて、少しだけ休憩時間がある。
そのあとは女子だけが「聖女になるための訓練」という時間を過ごさなければならない。
リラはミレイアとの思い出の場所へとやってきた。
「ふぅ、」
いつもの木の下に腰を下ろしてゆっくりと景色を眺める。
リラはこのゆったりした時間が好きだ。
「空さん、今日もご機嫌ね。あら、風さん、こんにちは。」
リラはそこにその存在があるかのように話しかける。だが、それは誰の目にも見えていない。もちろん、リラ自身にも見えていないのだ。だが、リラは話かけるのをやめない。
「ミレイアがいなくなって寂しいの。わかったの?何でも知ってるのね、木さん。」
木に手を当てながらひとりで呟いていた。こんな姿を見られたらまた何を言われるか、わかったもんじゃない。だから人がいる前ではしないのだ。
「クスッ、これは私とみんなの秘密ね!」
そう言ってリラは青い空のした、広い草原の中でくるくると回りながら楽しそうにしていた。
きっと変な子だって思われるだろう。
だが、それだけリラの心は純粋だった。
やがて、「聖女教育の時間」がやってきた。
女子だけが集められて、今日は〝実践〟ということだった。
どうやら教会から立ち会いで数人来ているらしい。この実験で成果が見えた人物は教会で暮らすことになる。
いつものダイニングに着席する女子たち。
10歳以上の女子たちに行われる。
リラは毎年、この実験を受けているが、成果は出なかった。16歳で成果が出ない場合は今度出る可能性がグンと下がる。
ルーラも今回がどうやら最後のようだ。去年、少しだけ反応が出たが、それだけなら誤差の範囲だ。だから今年正式に反応が出ないといけない。
歳の小さい子から順番に呼ばれる。
「ルーラ。」
施設長に呼ばれ、ルーラが前に進む。
水晶に手を当てる。
反応が出るときは水晶が色を持って光る
「黄色、ピンク、白、金」だ。
ルーラが手をあてると“ポワッ”とピンクに光った。
「────!やったわ!光った!!」
ルーラは大喜びだった。
周りはルーラに「おめでとう」と声を掛けていた。
そこで施設長は終わろうとした。だが、リラがまだだった。
「こちらのお嬢さんがまだのようですが…。」
教会の立会人が施設長に言った。
「あら、この子はこの髪色と同じで毎年、何も反応がないのですよ。やるだけ無駄ですわ。」
施設長の言葉にリラはシュンとなった。
だが立会人は
「お嬢さん、試しに手を…。」
「────!」
リラは驚いた。大抵の大人はこう言われたら施設長の顔色を窺って自分を無視してたからだ。
おずおずと手を水晶の上に置くリラ。
ペチッツ。
「……………。」
何の反応もない…。
「ほら、言った通りでしょう?髪色がそう物語っているじゃありませんか?!」
「……………。」
リラも立会人も言葉が出なかった。
「お嬢さん、残念ですが…。」
リラは首を横に振って、静かにお辞儀をして自分の席に着席した。
「さあ、それでは今回はルーラだけが成果がありました!ルーラ。来週、教会から迎えが来ます。それまでに準備しておきなさい。」
「はい、施設長。」
リラは〝何者にもなれない自〟”がちっぽけな存在に思えて少し悲しくなった。
ゾロゾロとみんんがダイニングから出て行ったあと。立会人が水晶を片付けようとして推奨に触れた瞬間だった。
先ほどまで何も反応がなかった水晶が突然─────
「────バチッツ!!」
という音と共に青白い光がパァァァァ────────ッ!と光った。
「な…なんだ?これは…!こんなのは初めてだ!」
立会人は驚いた。
今まで何十年もテストをしたが、黄色、ピンク、白、金以外に光る色を見たことがなかったからだ。
「これは、いったい…。」
だが、この現象が〝何に対して〟なっているのかがわからなかった。
〝さっきのお嬢さんの反応にしてはあまりにも出るのが遅すぎる…。だが、最後にテストしたのはあのお嬢さん…。まさか…、な。〟
立会人は不思議な顔をしながらも説明がつかないことにこれ以上考えることをやめてしまった。
あまりにも立会人が出てこないので、施設長が戻ってきた。
「どうされたのですか?中々おいでにならないものですから、何かありましたか?」
施設長は怪訝そうな顔をして立会人に言った。
「あ、いや。…なんでもありません。(まさかな。)すみません、すぐ参りますので…。」
施設長に向かってそう言った。聖女は金髪だと昔から決まっているこの世界で色素の薄いクリーム色の髪をしたリラにはその資格がないと思っていたからだ。
〝きっと施設長があのお嬢さんがかわいそうで一緒にテストを受けさせているだけだろう。〟
立会人は荷物をまとめて施設長の待つ外へと急いだ。
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