第3話:約束の指切り
思わず口に出た言葉は謝罪でも言い訳でもなく、ただ「ミレイア綺麗…。」だった。
ミレイアもリラに会ったらどう対応したらいいのかわからなくなっていたので、このリラの行動にただひたすらぽかんとしつつも
〝くすっ、リラらしい…。〟
笑いが込み上げてきた。
なんだかリラを相手にいつまでも怒っていられないと思った。
「もう、リラってば!あんたはホント、…。」
ミレイアは笑いながら、涙した。
そんなミレイアのそばにリラはゆっくりと近付いていき
「うん、ミレイア。ごめん。私、やっとわかったよ。」
「リラ?」
「私、ミレイアとずっといたい!」
リラは直立したまま、手をギュッツと握ってミレイアを見たまま涙を流した。
ミレイアは〝ふっ〟と笑って
そっとリラを抱きしめた。
「うん、私もだよ。リラ。」
いつもぼうっとしてどこか抜けていて、だけどいつだって真剣に生きているリラだからこそ、ミレイアは彼女にだけ心を開いた。
そんな彼女がちゃんと自分のことを理解していたことが嬉しかった。
二人はしばらく抱き合って、泣いていた。施設長から綺麗な服を着て準備していなさいと言われていたのに、泣きじゃくるから服に涙のあとがのこっている。
「あちゃ~、これは怒られちゃうかもね。」
言葉ではそう言ってもとっても嬉しそうな顔をしているミレイア。リラはミレイアが嬉しそな顔をしているのを見ているだけで嬉しかった。
そして
〝もし、今日、貴族の人がミレイアを連れて行っちゃうともう会えなくなっちゃうのね…。〟
リラはまた悲しくなりつつもミレイアの姿をしっかりと胸に刻んでおこうと思った。
***
急に施設の中が賑やかになった。
確認しなくてもわかる。もう何人も見送ってきた光景が今、また目の前で起こっているのだから。
リラとミレイアはお互いの顔を見て頷いた。
「どっちが選ばれてもここに、お互い宛の手紙を書こう!」
「うん、それで返事を書こう。」
「絶対だよ!」
二人は指切りをして固く誓った。
─────コンコンコン
部屋の扉をノックする音がした。
〝ガチャリ〟と扉を開けて施設責任者のジェシーがやってきた。
「あぁ…、やっぱりここにリラもいたのね。先にこっちを訪ねてよかったわ。」
ジェシーの言葉にリラはポカンとしていたが、ミレイアは〝クスッツ〟と笑った。
「リラ。約束。」
「う、うん!」
ミレイアに差し出された手をリラは取って二人は手を繋いでそのまま貴族が待っている部屋へと案内される。
コンコンコン。
「入りなさい。」
施設長の声がしてジェシーの手によって扉は開かれた。
リラもミレイアも緊張が高まり、二人そろって〝ゴクリ〟と、思わず生唾を呑んだ。その音に二人はそっとお互いに視線を向けて口角が緩んだ。
「さあ、二人とも入りなさい。」
施設長の言葉に従い、二人は応接室の中に入って行く。
「さあ、グレンシー伯爵様にご挨拶して。」
その言葉に二人はより一層姿勢をピンと正して
「ごきげんよう、グレンシー伯爵様。」
ミレイアの挨拶にリラも続く。
「ご…ごきげんよう、グレンシー伯爵様。」
二人の挨拶を見てグレンシーは「ふむ。」と一言だけ言ってソファーにもたれかかった。
リラはびっくりしてその様子を見ていた。そしてチラッとミレイアの方を見たが、彼女は平然としていた。
〝やっぱりミレイアは凄いわ!動揺していないなんて…。〟
リラの目が輝いていた。
「伯爵様、どうですか?」
施設長が声を掛ける。グレンシーはニヤリと笑う。
リラは何だか嫌な笑い方をする人だと思った。そしてまたミレイアの方を見たが、ミレイアは表情一つ変えていなかった。
〝ミレイア…。本当に大丈夫なのかな…。〟
リラの心配は的中し、グレンシーは迷わずにミレイアを指さした。
「こっちの子にするよ。とても賢そうだ。」
「……………!」
〝やっぱりミレイアが選ばれた!〟
「さあ、ミレイア。あなたはどうなの?」
施設長がミレイアに尋ねるとミレイアはニッコリと笑って
「よろしくお願いします。」
と答えた。
リラは驚きのあまり言葉を失った。
「そう。それはよかったわ。それじゃあ、ミレイア。あなたはここを出る支度をしてきなさい。リラ。手伝ってあげなさい。」
「はい、施設長。」
ミレイアは返事をして丁寧に挨拶をした。一方リラはミレイアのその対応を見てオロオロとしていた。
「さあ、リラ。手伝ってちょうだい。」
ミレイアの声で言われてやっとリラはミレイアをハッキリと見た。
〝──────────!!〟
ミレイアの瞳には覚悟が滲んでいた。
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次週金曜日18:50に公開です。




