第16話:光った指先!
きっと、そう感じたのはミレイアだけではなかったようだ。
〝神官見習いはリラを何故か目の敵にしている。それだけじゃない。ここでは格差差別が当たり前のように通っているようね…。〟
ミレイアは苛立ちを覚えた。だが、この中に入ってしまっている以上、反発は出来ない。グッと気持ちを押し殺して当初の目的を述べた。
「私が彼女も一緒に見ます。」
「はい?何を言っているのですか。あなたも〝見習い〟なのですよ。」
神官見習いはそう言って、大きく息を吐き、
「先輩聖女候補が適任でしょう。」
そう言ってから目配せをした。
リラの目の前にやって来たのは洗礼式でララとリラにカップを渡した人物だった。
〝─────このひとは!〟
彼女はリラに軽く頷いて挨拶を済ませた。リラも反応して、深く挨拶をした。
「私はキャロル。今日からあなたの先輩聖女候補として、つきます。」
「はい、よろしくお願いします。」
そして神官見習いが講義を始める。
「では、まず基本中の基本。集中力の訓練の成果を見せて下さい。」
その一言で各々が指先に自分の聖力を込める。
リラも、ミレイアと共にしたときのことを思い出して指先に集中する。
リラは小さく息を吸った。
そのとき─────
ふわっと風がふいた。
リラは心の中で〝風さん、こんにちは。〟と呟いた。
すると、リラの指先がポォォォーッツと光だす。
「─────え?」
一番驚いていたのはリラだ。あんなに頑張ったのに全然光らなかった。なのに、今、誰よりもその指先は光を放っている。
「─────何、何なの?!」
皆、ざわついている…。
神官見習いは目を大きく見開いて
「銀……………?」
「いや……………、違う。何だ?あの光は…………?」
「きっと何かの間違いよ…。」
呆然と立ち尽くして震えながら、その一言を言うだけで精一杯だった。
すぐに我に返り、
「な……、キャロル。あなた何か手伝ったの?」
今度はキャロルの方を見た。あの目の前で起こっている現象がどうやっても証明出来ないからだ。
「いいえ、神官見習いさま。わたしは彼女に触れてもいません。」
キャロルの顔も引きつっていた。
そしてリラの指先はまだ明るく光っている。
周りの聖女見習いたちは一瞬光って終わりだったのに、だ。
そしてリラは気付いた。
〝わたしのまわりだけ風がふいている???〟
リラは不思議な感覚だった。
ダメだと思った。泣きそうな気持になった。だけど、あのとき、この子が慰めてくれた。
〝そっか、風さん。あなたのおかげね。〟
リラは心の中で風に語り掛けた。
ふわっ、ふわり… リラの周りだけ風の動きが違う。
だが、誰もそのことに気付かない。
リラはふと、自分の指先の光がまだ続いていることに気付いてあたふたとしだした。
〝どうしよう…、消し方わからない。今まで点かなかったから消し方がわからないっ。〟
リラがあたふたしていたのでミレイアは
「キャロル先輩見習いさま。消し方がわからないようです。」
と、助言をした。
「は?こんな物凄い光を出しておきながら、消し方がわからないの?!」
ありえない…そう思ってリラを睨んだ。リラは気まずそうに
「はい…。今初めて光ったので消し方がわからないんです…。」
リラの言葉を聞いて、あんぐりとしてしまったキャロル。すぐにフッと笑って
「では、こうして下さい。」
そう言って指先に息を吹きかけた。
〝フッツ〟
まるで蝋燭を消すように…。
「え、それでよかったんですか…?」
リラはまさか蝋燭と同じように扱うとは思っていなくて咄嗟に出た言葉だった。
「あなた、ちょっと強い光を出すことが出来たからと言って、いい気にならないことね。」
キャロルはそう言ってリラに背中を向けた。
リラはキャロルの態度に胸がチクンと痛んだ。
そんなつもりはなかったのに、そう捉えてしまう人もいるのだと、この時リラは知った。
〝ここは前に板孤児院よりも、もっと冷たい。〟
リラは俯いてしまう。だけど彼女の周りにはまだ風が優しく踊るようにふいていた。
〝…本当に慰めてくれてるみたいね。ふふっ。〟
リラの下がった眉が少しだけ緩んだ。
そしてそんなリラを見て、ミレイアは焦った。
〝どういうこと……?リラは今まで何年も苦しんできた。努力も誰よりしてきた。それなのに、成果が出なかった。なのに…どうして今日突然……?〟
リラのことは知り尽くしている。力を持っているのに隠したりするような子じゃない。だが、目の前で見た真実がミレイアの心の中に暗い影を落とした。
〝嬉しい。嬉しいはずなのに……胸がざわつく。〟
それはまるでインクが紙に落ちて滲んでいくように、静かにそっとミレイアの心の中へ広がっていった。
ご覧くださりありがとうございます。
次週火曜日18:50更新します。




