表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生最強竜の花婿探し(※ただしイケメンに限る)  作者: ゆうらり薄暮


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/50

24 恋人 前編



 火山の呼吸が、落ち着いていく。


 さっきまで空に貼り付いていた“うるさいもの”が消えたせいか、雲海のざわめきも遠くなった。

 世界が、ようやく「放っておく」という態度を覚えたみたいに。


 アランは岩に背中を預けたまま、空を見上げた。


「……静かだな」


 アルシェは隣に座る。


「静か」


 その返事が、珍しく嬉しそうだった。


 アランは小さく笑ってしまう。


「おまえ、静か好きだよな。うるさいの嫌いなくせに、うるさいことばっかり起こすけど」


「起こしてない」


「起きてるんだよ」


 アルシェは少し考えてから言った。


「……世界がうるさい」


「それは分かる」


 アランが言うと、アルシェは一拍置いて頷いた。


「分かる顔」


「顔で判断すんな」


「分かる」


「だから顔で言うな」


 ふ、とアルシェが笑った。

 熱気の上で笑うのに、涼しい笑い方だ。


 アランは胃を押さえたまま言う。


「で、昼寝って言ってたけど……どこで寝るつもりだよ。ここ、火山だぞ」


「温泉地」


「直せ」


「直さない」


 アルシェは真面目な顔で、手を伸ばした。


「人間基準の安全、探す」


「探すって、どうやって」


 アルシェは指を二本立てる。


「一、落ちない」

「二、熱くない」


「二がもう無理だろ」


「大丈夫」


「根拠」


「恋人が熱いの嫌い」


「そういう意味で言ってない!」


 アルシェは首を傾げた。


「嫌い?」


「……暑すぎるのが嫌い」


「覚えた」


「覚えるな、変なところだけ」


 アルシェは火口から少し離れた黒い岩場を指さした。

 岩の陰に、風が当たりにくい凹みがある。

 そこだけ影が濃くて、熱が柔らかい。


「ここ」


「……そこなら、まあ」


 アランが言いかけた瞬間、アルシェがさらっと続ける。


「寝床、作る」


「作る?」


「うん」


 指先がふわっと動く。


「待て待て待て、変なことするな」


「変じゃない」


 アルシェが真面目に言う。


「昼寝の環境整備」


「言い方が仕事なんだよ!」


 でも、起きたのは派手な魔法じゃなかった。

 黒い岩の表面が、ほんの少しだけ“丸く”なる。

 角が取れて、背中に刺さらない形になる。

 さらに上から、風が運んだ乾いた苔みたいなものが、ふわりと降り積もる。


 アランは目を瞬いた。


「……おい」


「なに」


「地味だな」


 アルシェは頷く。


「行儀」


「その行儀、便利すぎるだろ」


 アルシェは凹みに腰を下ろし、ぽんぽん、と自分の膝を叩いた。


「ここ」


 アランの胃が、条件反射で鳴った。


「……いや、いやいや」


「安全」


「安全の定義が違う!」


「落ちない」


「落ちるかどうかの話じゃない!」


 アルシェは不思議そうに瞬きをした。


「恋人、隣で寝る」


「誰が決めた」


「私」


「また私基準!」


 アルシェは少しだけ眉を寄せた。


「嫌?」


 その一言が、ずるい。

 拒否すると、たぶんアルシェは静かに傷つく顔をする。

 傷つく顔を見たら、アランの胃が別の理由で死ぬ。


 アランは視線を逸らし、咳払いをした。


「……嫌じゃない」


 アルシェの目がきらりと光る。


「じゃあ、来て」


「……来るけど」


 アランは渋々、凹みに身を滑り込ませた。

 確かに風は当たらない。

 熱も少しだけ和らいでいる。

 そして何より、アルシェが近い。


 近いのに、熱くない。

 火山の上なのに、妙に落ち着く。


 アランは、悔しいけど息を吐いた。


「……人間基準、意外といけるじゃん」


「学んでる」


「いつから」


「今」


 アルシェはさらっと言う。


「恋人は、覚える」


「その語彙だけ成長早すぎるだろ」


※完結まで毎日投稿です。

よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ