任務その16 騎士団長○○化計画!
スーパーヘッドスライディング投稿ー!!_(:3 」∠)_=333
ま、間に合った!!(;゜Д゜)
本日もいたって平和のサフィア王国の王城──その王太子ケビンの執務室──
「アルフレッド、どうした?なんか顔がすげぇことになってるけど」
「……(ぬーん)」
例によって恋に悩める熊男のアルフレッドは、その巨体に似合わぬジメジメとした空気を醸し出しながら幼馴染である王太子ケビンの元へと訪れていた。
「そういや報告にあったけど、マーガレット嬢の元カレとやり合ったんだって?」
「……(ズーン)」
揶揄うようにケビンが問いかければ、更にダークな空気を醸し出すアルフレッド。
一方のケビンは内心この状況を面白がっていた。何せマーガレットの元カレのオスカルが女性であることをとっくに知っていたからである。しかし何故かアルフレッドは、マーガレットの元カレが女性だとわかった後も、うじうじと悩んでいるようだ。
「元カレって言っても女性だからな。まぁ学生時代に仲の良い先輩後輩同士の間柄だったんだろう。何をそんなに悩む必要があるんだ?」
「……いや……俺にはわからない世界だ……神聖な女性の深淵なる領域に足を踏み入れたような気がして……」
「おいおいおいおい。(深淵なる領域ってなんか卑猥だなー)てかどゆこと?」
紳士な童貞騎士は女性を神聖視している節があるようだ。経験豊富なケビンにとっては、ちょっと卑猥な言葉に聞こえてしまうが、童貞騎士は大いに真面目に話している。
その時、王太子の部屋にお茶の用意をしに来た侍女が部屋に入って来た。休憩中というのに至極真面目な様子で顔を突き合わせているケビンとアルフレッドに、一瞬ドキリとするものの、表情に出さずにテーブルのセッティングを始めていた。
そんな侍女の傍らでアルフレッドは、幼馴染のケビンに語る。
「俺としては同性同士で想い合うというのに抵抗はないんだ」
「!!?!?!」
──ガシャンッ!!──
「……大変失礼いたしました……」
「怪我はないか?」
「は、はい」
アルフレッドの思いもよらぬ薔薇色の発言に、動揺のあまり茶器を取り落としてしまった侍女である。幸い割れはしなかったものの、侍女の心臓はぶっとい萌えの矢が突き刺さって悶死寸前だ!
そんな侍女の精神状態はさておき、再び会話に戻る同性愛に理解のあるアルフレッドである。
「……だが流石に自分がその対象になれないというのは……正直辛い……俺はどうすればいいんだ……」
「っ………」
グッと表情を歪めて拳を握りしめるアルフレッドに、傍らで耳をそばだてているケビンの侍女も、胸がキュウッと痛くなる。侍女の心の中では「大丈夫!貴方達は絶対に両思いだから!悩まなくて大丈夫よ!!」と応援の嵐であるが、勿論、二人にとっては、全く意図しない会話である。
「あー……(なるほど。マーガレット嬢が百合女子だと、そう思っているわけね。というかそういう知識は一応あったんだなー)……まぁそこは大丈夫じゃないか?学生時代は演劇部の役柄上でそういう風に見られていたってだけらしいし」
「……だがな……実際の所がどうかなんてわからないだろう?お前だって婚約者がいたとしても、その心が誰を想っているかなんて相手にはわからないじゃないか」
「っ……!!!」
悲痛なアルフレッドの叫びに、傍らの侍女は、「両片思い切ない!!でも最高っ!!」と内心BLフィーバー状態だ!
「まぁ……確かに心の中で誰を想うかは自由だし、それで不安にさせることもあると思う……だがアルフレッド。お前の不安については大丈夫だと俺が保証しよう。そんなに悩むな」
「……ケビン……」
──ガタンっ!!──
熱く見つめ合う二人に、キュンドキメーターが限界突破してしまった腐侍女は、部屋を辞す手前で思わず躓いてしまった。侍女の中で先ほどの会話は、「俺、婚約者がいるけど心はお前のものだから安心しろ!」という意味に変換済みである。
「ふらついてるようだが大丈夫か?……具合でも悪いのか?」
「い、いえ……大変失礼いたしました。大丈夫です」
「そうか……ならいんだが」
侍女のいつにない失態に、寧ろその体調を心配する優しい王太子。しかし侍女の方といえば「いけませんわ!王太子殿下!私なんかに優しくしては、またアルフレッド様が嫉妬と不安に苛まれてしまいますわよ!」と余計な忠言を脳内でしているところである。
そして腐侍女の誤解は解けぬまま、彼女は部屋を出ていってしまった。きっと本日の王妃主催の茶会で、早速この情報が超高速で城中に拡散されるだろう。王城腐女子ネットワークは超高速光回線並みの速度なのである。
そんな侍女を見送った二人。
「まぁ、あまり気にするなよ。アルフレッド」
「あぁ……いつもすまないな」
また新たな誤解が生まれたことなど知らずに、腐侍女が用意したお茶で呑気に休憩を取るのであった。
********
一方の騎士団執務室。騎士団長のアルフレッドがケビンの執務室に休憩がてら行ってしまったので、今は補佐官と書記官の二人だけである。そんな二人は世間話に花を咲かせていた。
「そういえばマーガレットさんって、団長のこと怖くないんですか?」
「え?団長がですか?」
「そうそう。大抵の人は団長のこと怖がるじゃないですか。女性なんて特にだと思うんですけど」
「そうですね~……」
鬼のいぬ間に何とやら。補佐官は以前から疑問に思っていたことを聞いてみた。
元カレ案件の時も、普通なら団長のような巨体の強面に送迎されるのは女性は嫌がりそうなものだが、マーガレットは全くそんなそぶりは見せなかった。
「上司だからっていうのもありますが……団長のことを怖いと思ったことはないですね」
「まぁいい人なのは確かですからね。でも顔とか怖いなって思ったことないんですか?だってあの顔面ですよ??」
シレッと鬼のいぬ間に失礼なことを言う補佐官である。先日の顔面偏差値の高い元カレにまつわるアレコレで、キッツイお仕置きを食らった恨みからか、熊男の顔面を超絶ディスることで鬱憤を晴らそうとしているようだ。こんな会話をしているとバレたら更なるお仕置きコース確定だが、うかつな補佐官はそれに気が付いていない!
「ん~?そんなに怖いとは思わないですけど……確かに厳しい表情のことが多いですけど……でも普通じゃないですか?」
「え?!そ、そうですか?でもでも!ほら!この間の元カレ?オスカルとかいうあの人いるじゃないですか。あの人とかカッコイイな~って思わないですか?」
「え~?う~ん、確かに先輩はカッコいいとは思いますけど~……」
「じゃあじゃあ!団長と元カレと、どっちがカッコいいと思います?」
ここで補佐官は究極の二択をマーガレットに問いかけた!他の者達がいたら確実に止めたであろう、禁断のワードである!
そんな究極の問いをされているとは知らないマーガレットは、普通に首を傾げて考えてからさらっと答えた。
「どっちがカッコいいかと言われると難しいですね~。どちらもカッコいいと思いますし」
「えぇーっ?!?!……ま、マーガレットさん、眼鏡の度が合っていないんじゃ……」
「そうですか?ちゃんと度は合ってますよ~?」
「ま、マジっすか……」
カッコいいの基準がかなりぶっ飛んでいるマーガレットである。眼鏡の度が悪いのでなければ、目そのものが悪いか、ちょっと脳がバグっているか、趣味が悪いかのどれかだろう。補佐官はあまり深く考えないことにした!
寧ろ顔面偏差値の低さでお付き合いを断られる可能性が無くなったのだから喜ぶべきことだろう。アルフレッドに直接言うことは憚られるが、無駄な心配はなくなったわけだ。
だが怖い物知らずの補佐官は更につっこんで問いかける。単純にマーガレットの好みが気になったようだ。
「ちなみにマーガレットさんって、どんな男性がお好きなんですか?」
「男性の好みですか?」
「そうそう。お付き合いするならこういう人がいいな~とか……そういうのあるでしょ?」
「う~ん……そうですねぇ……」
何気なくこの問いをした補佐官であったが、執務室の天井裏では王太子直属の影が、この会話を固唾を飲んで聞いていた。マーガレットの男性の好みを聞く絶好の機会である。ケビンに報告をすれば、すぐさま対アルフレッド用の作戦が立てられることであろう。何なら手柄を立てたことで昇進もあるかもしれない。そんな期待を込めて、マーガレットの返答を待った。
「男性の好みは~……」
(ゴクリ──……)
********
──王太子ケビンの執務室──
「そろそろ休憩も終わるな」
「あぁ、ケビン。いつも話を聞いてもらってすまないな」
「いいんだよ。幼馴染じゃないか」
一通りアルフレッドの恋バナや他にもケビンの仕事の愚痴など様々話していた二人だが、休憩ももう終わるからと切り上げようとした時のことだ。
『王太子殿下、至急の報告です』
「ん?あぁ──」
どこからともなく声が聞こえてきたのは、王太子直属の影によるものだ。アルフレッドがまだ部屋にいる状態での報告なので、余程急ぎか、彼に関することなのだろう。王太子はすぐに許可を出すと、すっと黒装束の影が部屋に現れた。
「新たな情報です。つい今しがた報告があり、かなりの重要案件と判断しましたので……」
「わかった。ありがとう」
ケビンが何かしらのメモを受け取ると、黒装束の影はシュンッ!とその場から消え去った。恐るべき隠密能力である。
影がいなくなるとすぐにケビンは報告のメモに目を通した。そして驚愕に目を見開く。
「これはっ──!!」
「ケビン、どうした?」
あまりの驚きっぷりに部屋を出て行こうとした足を止めるアルフレッド。王国にとって余程重要な報告に違いない。王国を守る騎士団長として気を引き締めて事に当たらねばと思ったのだが……。
「アルフレッド……大変だ……」
「ど、どうしたんだケビン?!」
「マーガレット嬢は……」
「な、ま、マーガレットがどうした?!」
暗い表情でマーガレットの名を出すケビンに、一体何があったのだと焦燥にかられるアルフレッド。やがてケビンは重い口を開いた──
「マーガレット嬢は嫁が欲しいらしい」
「!?!?!?!?!?!」
──ピシャァァァンッ!!──
マーガレットに嫁!!──という衝撃の言葉に、思わず蒼雷が出てしまったアルフレッドである!事あるごとについつい出まくる蒼雷は、最早おならのような気軽さで放たれるが、臭くはないものの、勿論その威力は非常に危険なものである!
ついでに言うとアルフレッドはムッサイ騎士団に所属しておりながら、匂いには気を遣っている乙男である!訓練後のシャワーは欠かさず、服からはフローラルな香りが漂うと周囲からは評判だ!おかげで色々匂いに敏感な王城の腐女子達の、フローラルな妄想に歯止めがかからないという副作用ももたらしている!
そんなアルフレッドのフローラルな匂い事情はさておき、マーガレットの嫁問題である。彼女がアルフレッドの嫁になってくれるのなら幸いだが、マーガレット自身が嫁が欲しいとなると話は違ってくる。
既に元カレ案件でマーガレットの百合疑惑に脳内を占拠されているアルフレッドは、「こうなったら俺が女になるしかないのか……?」と性転換を視野にいれるほどに大混乱中だ!
「嫁かぁ……うーん、この報告だけだとちょっとわからないところがあるけど……まさかねぇ……これはもっと突っ込んで聞く必要があるかもなぁ……って、アルフレッド?!おい!!」
報告書を読んで思案に暮れていたケビンをよそに、いつの間にかアルフレッドはふらふらと執務室を出て行ってしまったようだ。奥の廊下では熊のような巨体が壁に激突しながら遠ざかっていく。
その魂の抜けたような様子を見て、ケビンはあちゃーと頭を抱えた。
「うわ……大丈夫かあれ……ヤベ……ありゃ完全にマーガレット嬢が百合系だと誤解したな……」
何だかんだで恋に悩める男に最後のとどめを刺してしまったケビンであった。
********
王太子の執務室でケビンとアルフレッドの間でそんなやり取りがされているとは知らない執務室の補佐官と書記官。なかなか戻ってこないアルフレッドを心配しつつも、仕事を再開していた。
「今日は団長、全然戻ってきませんね。いつもならもっと早いのに」
「そうですねぇ」
よく休憩中にケビンの元を訪れるアルフレッドであるが、今日は休憩時間が終わっても戻ってこない。騎士団長として忙しいから、誰かに捕まっているのかもしれないが、いつもの事なのでそこまで気にしていない二人である。
「それにしてもお嫁さんが欲しいとか、マーガレットさんは変わってますね」
「そうですか?でも働いていると家のこととかあんまりできないから、そうなりますよ?補佐官もそう思いません?」
「ん~、まぁそうですね。独り身はやっぱり寂しいし、家に帰って美味しいごはんとか作ってあったら、やっぱ嬉しいかなぁ」
「そうですよね~」
「でもまさか女性に恋人の条件を聞いて、普通それが出てくるとは思わないですよ」
「でも王城で働いている女子だと、結構同じ意見の人多いですよ?男性でもお嫁さんみたいに家事のできる人がいいって」
「そっか。でも実際に男性でそういう人は少ないんじゃないですか?」
「それは夫婦で協力してく感じで覚えていけばいいんですよ~」
「なるほどなるほど」
「補佐官も今時、家事の一つもできないと女性にモテないですよ?」
「(ギックーンッ!)……あははは……」
事実、女性から全くモテない補佐官(※彼女いない歴=年齢)である!書記官の厳しい指摘に苦笑するしかない!
そんな風に会話に花が咲いていた時、執務室の外が騒がしくなった。
「??何かあったんですかね?」
何事かと補佐官が執務室の扉を開けようとしたその時である!
「おい!助けてくれ!!」
「!!??」
バンッ!と勢いよく扉が開いたかと思うと、何者かが執務室の中へ入って来た。見れば魔導師団師団長のセラドである。
「師団長様?一体何故ここへ……?」
「そんなことはいい!すぐさま鍵をかけろ!」
「は、はぁ……」
よくわからないままにセラドを招き入れると、扉を閉めて鍵をかける。その上から更にセラドがぶつぶつと呪文を唱え、魔術の鍵を施しているようだ。魔法陣がボワッと光った後、キィンと結界のようなものが張られた気配がする。
鬼気迫るようなセラドの様子に、呆気にとられる二人。補佐官が恐る恐る聞いてみた。
「えと、一体どうされたのですか?」
「どうしたもこうしたもあるか!おい!噂の出所はここなんだろう?!さっさと誤解を解け!このアホが!!」
「あ、アホ……って……というか噂というのは?」
「んなもん嫁がどーとか女が好きだとかそういうのだろうが!とにかくさっさとあの馬鹿の誤解を解け!でないと大変なことになる!!」
「えぇ~……さっぱりわからないですが……」
ガチギレして怒鳴られるも、セラドが言わんとしていることがさっぱりわからない補佐官である。とりあえず“あの馬鹿”というのが、上官のアルフレッドであることだけはなんとなくわかった補佐官だが、誤解が何のことなのかがわからない。だが状況は切迫しているようだ。
「っ!!?来たぞっ!!」
──ガッ……!ドンドンドン!──
「…………」
「…………」
「…………」
「……鍵……?」
扉の外で不思議そうな声を上げるのは、勿論この部屋の主であるアルフレッドである。何故セラドがアルフレッドを締め出したのかはわからないが、身分の高い師団長のすることに、補佐官と書記官はただ見守るばかりだ。
「おい、何故鍵がかかっている?補佐官、いるんだろう?」
──ガァンッ!!──
苛立ったように声を荒げる上官に、名指しされた補佐官は、いつもの蒼雷よりもよっぽど怖えぇ……と思いながら声をあげる。
「あー……えーとぉ……(……チラッ)」
だがすぐ横で恐ろしい形相で睨みつける魔法師団長のセラドにビビって、なかなか言葉が出てこない!騎士団長と魔法師団長の板挟み状態だ!
「補佐官?……そこに魔法師団長がいるのではないか……?今すぐにここを開けさせろ」
──ガァンッ!!──
「(ビクゥッ!)」
蒼雷でバシッとやられるよりもよっぽど背筋が寒くなるような恐怖心が補佐官を襲う。スパッと蒼雷を落とされる方がはるかに精神的に楽だということを今更ながらに知った補佐官だ。だが魔導師団長のセラドはセラドで、今にも補佐官を〇りそうなほどの威圧を向けている。
どうにもできない状況に補佐官は書記官のマーガレットに助けを求めた!
「ま、マーガレットさん……(うるうるる!)」
彼女いない歴=年齢(24歳)の全く可愛くない補佐官の、アザとい上目遣い発動だ!だが他人の美醜に関してちょっと変わった価値観のマーガレットは特に気にせずに補佐官のフォローに入った!
「えーっと、団長?そちらにいらっしゃいますか?」
「(ビックーンッ!)ま、マーガレット……そこにいたのか……」
先ほどまで扉を壊す勢いでドカドカやっていた殺人巨熊の如きアルフレッドだが、愛するマーガレットがすぐそこにいると知って、あっという間に大人しくなった!身体を縮こまらせて愛玩子熊に擬態しているが、扉越しなので全く効果がない!しかも見た目はちっとも可愛くはない!
「えぇと、状況が良くわからないのですが、セラド師団長様が扉に結界の魔術をかけられたようで……私達にはどうすることもできない状態です」
「そ、そうか……おい、セラド!一体どういうことだ?何故俺の執務室に立てこもっている。すぐに出てこい!」
「馬鹿言うんじゃない!お前、俺が出て行ったらあの頭のおかしな依頼を強要するだろ?絶対に出て行かない!というかさっさとお前ら誤解を解けよ!」
マーガレットの説明に再び怒りの矛先をセラドへ向けたアルフレッドだったが、セラドは一向に聞く耳を持たないようだ。どうやらアルフレッドが何かを魔導師団長であるセラドに依頼したようである。
「誤解?一体何のことですか?」
「だからこの馬鹿におかしなことを吹き込んだだろう?!そのせいでこの馬鹿は女になりたいとかそう言ってんだよ!」
「えぇぇぇぇっ!?」
「っっっ!?!?!?!」
──ピシャァアンッ!!──
セラドの大暴露に思わず蒼雷を発動させてしまったアルフレッド。だが結界を通り抜けて蒼雷の直撃を受けてしまった補佐官は、何故かちょっとほっとした顔で気絶している!恐らく蒼雷がない状態でのアルフレッドの怒りがよほど怖かったのだろう。かなりの変態野郎である!
そんなことはさておき、ここへきて突然のアルフレッド女体化計画の発覚だ。これには流石のマーガレットも驚いた。
「え?え?団長、女性になりたかったんですか……?」
「あ、う、や、そ、ち──(ガクガクブルブル)」
違うとかそいういう言い訳をかましたいのだろうが、いかんせんヘタレな童貞である!全く言葉にならずにどもっていると、セラドが馬鹿にしたように補足する。
「はっ!このヘタレ野郎が!つまりだな、補佐官であるお前が同性愛者で嫁が欲しいという噂を聞きつけて、この馬鹿が性転換の魔術を俺に依頼してきたんだよ」
「え?性転換?……というか同性愛者って??」
「っ!?!?!?(かぁぁぁぁぁっ!!)」
──ピシャァァァンッ!!ドンガラガッシャーん!!──
マーガレット本人に女体化計画を思いっきりバラされ、アルフレッドの蒼雷が発動する。女性であるマーガレットに被害が無いのは勿論のこと、魔法師団長のセラドはサクッと結界を張って防いでいるので、蒼雷の被害は、既に戦闘不能で倒れ伏している補佐官が一身に背負うこととなった。「うごっ……!」と絞められた豚のような悲鳴が虚しく響く。
だがそんなことよりもアルフレッドの女体化計画である!確かに魔導師団長のセラドならば、人を性転換させる魔法も使えそうではあるが、流石に王国を守る騎士団長のアルフレッドを女性にしてもらっては困るのだ。騎士団の書記官として、マーガレットはこれを阻止すべく動き出した。
「あの……私が原因とのことみたいですが……団長が女性になるのはどうかと思いますよ?」
「ま、マーガレット……」
「えと、まず現在の王国の法律では女性では騎士になれないので、団長が女性になってしまうと騎士団長を務める方がいらっしゃらなくなってしまいます」
マーガレットは至極真っ当な答えを突き付けた!だがそういうことじゃない、と横にいるセラドは頭を抱える。しかしアルフレッドにはその言葉は響いたようだ。
「た、確かに……騎士のままではいられないのか……」
「それでも女性になりたいとおっしゃるのなら、どなたか別の方が騎士団長になるわけですが……他の方の下で私も書記官として勤められるかどうか……元々騎士団に女性が勤めるのは異例ですし」
「!!!!!」
マーガレットの言葉に今度こそアルフレッドは己の間違いに気が付いたようだ。マーガレットは書記官として優秀であるが、慣例としてこれまで女性が騎士団に所属するというのはそもそもなかったのだ。それをアルフレッドやケビンが根回しして、何とかマーガレットを騎士団所属にさせたのだ。他の団長の下ではどうなるかはわからない。
「……マーガレットは騎士団に勤め続けたいのか?」
「えぇ、そうですね。お給料もいいですし、騎士団の皆さんも良くしてくださいますし、今更他の職場に勤めるというのも……もしそうなるなら地元に戻ってお見合いの話を受けるしかないかもですね」
「そ、それはいかん!絶対にだ!マーガレットはずっと騎士団勤務をするといい!」
誤解を解く以前に、あっさりとアルフレッドの女体化計画は阻止できたようである。流石、猛獣使いのマーガレットだ。
だが傍らでは釈然としない様子のセラドがいた。勝手に騒がれて勝手に解決したようだが、そもそもの原因である誤解が正されていないのだ。
「おい、そもそも書記官であるお前は、女なのに本当に嫁が欲しいのか?お前の恋愛対象が女だって噂になっているんだぞ?」
「えぇぇ?!そうなんですか?」
セラドの言葉に心底驚いた声を出すマーガレット。だがつい先ほどの補佐官との世間話が、まさか報告されているなどとは思いもよらない。
「えーっと、確かにお嫁さんみたいな人がいたらいいなって思うことはありますよ?お仕事していると家事とか色々疎かになりますし。だから自分以外に家のことをしてくれる人がいたらいいなって……」
「まぁ、そういうことだろうな。だが恋愛対象の方はどうなんだ?」
「恋愛対象ですか?ちゃんとしたお付き合いをしたことはないですが、普通に結婚するなら男性とだと思いますが……」
「!!!!(ぱぁぁぁぁぁっ!!)」
その瞬間、アルフレッドの身体から眩い光が迸る!喜びの感情が光魔法となってあふれ出たようだ!今のところ使い道のない光魔法だが、そのうち実験体と称してセラドに召喚される日も近いかもしれない。
「はぁ……そういうことだ。おい、そこの馬鹿!わかったろ?性転換の魔法は必要ないな?!」
「…………そのようだな。すまないセラド」
「全く……何でこんな馬鹿が王国最強の騎士なんだか……(ぶつぶつ)」
ようやく誤解が解けたとのことで、扉の結界を解く魔法師団長のセラド。誤解が解けて落ち着いたアルフレッドも、ようやく自分の執務室に入れることとなったのだが──
「ちょっとぉぉぉ!聞いたわよーー!!魔法師団長に女性になれる魔法を依頼するっていうじゃなーい!その話きかせてぇ~ん!!」
「!!!!!」
──ばたーんっ!!──
──ギィィンンッ!!──
くねくねしたオネェの声が聞こえてきて、瞬時にセラドは扉を閉めた!そして再び強力な結界を張る!肝心の部屋主である騎士団長は締め出されたままである!
「ちょっ!なんで閉めるのよ!ここを開けなさい!!いるのはわかっているのよ?!」
「絶対に開けるものかっ!失せろっ!この化け物めっ!!!」
「もう!セラドちゃんツレナイんだから~!!」
「うるさいっ!俺はここから絶対に出ないからなっ!!!」
「……ここ、俺の執務室なんだが……」
こうしてアルフレッドは、オネェのシナモンちゃんがいなくなるまで、自分の執務室を追われる羽目になったのだった。
うあー、今日のはヤバかった!仕事のトラブルに続き、ピンチの連続だったわ今日。
ふ~_(:3 」∠)_
あ~このギリギリ感が寧ろ癖になりそうw




