第二層:倒れた戦士
前回までの女神ダイスは――
・素晴らしい服のコンセプトが失われたので取り戻さねばならない。
・毒ネズミ退治? は? 錆びた短剣で狼みたいな大型犬に勝てるかよ。
・GMは神 (すごくかわいい)
階段を下りる。
第二層に着いた。
「あれ?また衣装代わりました?」
「第二層の到達ボーナスじゃ!」
「へえ、なんでチャイナドレス?」
「和装ばっかりだと飽きるじゃろ?」
「そんな事は無い!でも変幻自在なんですか?」
「天照大御神というイメージの集合体の範囲からは出る事は出来ぬ」
「チャイナドレスって範囲でしたっけ?」
「わらわは偉大なる太陽神。一要素くらい逸脱してもへーきへーき」
「へえ。楽しみですね」
「金髪も褐色肌も制服も出来るぞ。やる気が湧いてきたか」
「俄然湧いてきました。ちょっと目に焼き付けます」
「人間にそんな機能あったっけ?」
「人間に不可能はない!」
「ちょっと照れるからスリットを重点的に見るのはやめれ」
「確かに。着替えは冷静なゲームプレイの邪魔になりかねない」
「ソウナノカ?」
「反省してください。あと次は強気の薄着でお願いします」
「次の階層で死ぬ気かな?」
会話が途切れた瞬間、鼻をつく鉄の匂いに気づいた。
「あれ?ちょっと待って!人が倒れてる」
そこには一人の男が壁に背中を預けながら倒れていた。
ボロボロの革鎧。
大怪我をした足。
よく見ると丈夫そうな革袋を持っている。
『 選択肢 』
【略奪】
【救助】
【放置】
「とりあえず話をしてみます」
「ほう」
「おい、大丈夫か?生きてるか?」
男は苦しそうに顔を上げる。
言葉を話すことが出来ないくらい、疲労しているらしい。
男は何かを伝えようとしている。
「では判定じゃ」
### 1d100
成功範囲:1~45
――97。
「……」
天照が止まった。
「97」
「失敗?」
「大失敗。会話は成立せぬし、この男、死ぬ運命なのかもな」
「1が出てたら助かったのかな」
男の身振りが完全には理解できない。
しかし指が何度も「三」を示している。
「三層?」
男が頷いた。
「罠?」
また頷く。
男が右を指す。
「右の何か?」
男が強く頷いた。
完全には理解できない。
それでも必要な情報だけは得られた。
「右の何かに気をつけろ、ってことか」
男が差し出した革袋を受け取った。
中には簡易地図と、そして少量の食料が有った。
そして男が自分の装備を指差した。
「使え、ということかな」
男がこっちを向いたので目が合ってしまった。
男は、ゆっくりと笑った。
静かに目を閉じて、自分の心臓をトントンと叩いた。
「これって、あれか……」
「あれじゃな」
天照が、珍しく口を挟まなかった。
横にいるのに、気配がすっと遠い。
「……こうするしか、ないのか?」
天照は答えない。
こういう時は何も言わないのだ。
「生きながら何かに食われるのは……それは無しだよな。やるよ」
錆びた短剣で彼の苦痛を終わらせる。
なかなか終わらない。
人ってのは案外しぶといもんだな。
肋骨か?
骨が邪魔してる。
横向きにして、こう、こう、こう、うわ簡単に行かねえな。
嫌な感触が手に何度も何度も伝わってくる。
そして――
取り返しのつかないほど、血が流れて、短剣の刃が胸に全て刺さった。
ようやくやろうとした事が終わった。
彼の装備を受け継いだ。
・革鎧
・鋼の直剣
・鉄の小盾
・指輪
「荷物が随分重くなりました。古い装備は置いていきます」
「置いていくのか」
「戦士に無防備は似合わない。錆びた短剣でごめんな」
戦士の力の抜けた手を開いて、錆びた短剣を握りしめさせる。
「全部持って行くより荷物も軽くなるし」
「あれ?指輪も置いていくのか」
「これは彼の物です」
「お主の好きにするといい。ただ忘れるな。生き残れる方を選ぶのじゃ」
「遺品を届けるクエストに繋がった気がするけど、まあこれでいいか」
「そうじゃな」
「あとは最後の仕上げをしなきゃ」
「何を?」
「お祈りです。祈りが何の役に立つかわからないけど」
「けど?」
「しないよりはいいでしょ」
目を閉じて、一生懸命祈る。
どうか安らかに。
祈ってる途中、横から少しあったかい気配が伝わって来た。
天照も祈ってくれているのだろう。
確認するのは野暮だな。
もう少しお祈りをして、ゆっくり目を開けることにしよう。
「天照!天照!」
「うわっ!両手を揃えて思いっきり祈ってた」
「悪いか?」
「神々は基本的に干渉しちゃいけないのかと思って」
「何の役に立つかわからん事くらい、しても良かろう」
「それはそうですね」
「天照!天照!」
「それってどういう意味ですか」
「多義語じゃよ。挨拶と同じく、場面毎によって少し意味が変わる」
「へえ。この場合は?」
「『太陽のような温かさがそなたと共にあらんことを』」
「なんだか素晴らしいけど本当かなあ」
「祈る時は心を込めて祈る」
「へえ」
「父上はそう言っておった」
へえ。天照の父親か。
そんな神、神話上にいたっけなあ。
覚えてないなあ。
そして天照は、人に聞こえない声で呟いた。
「大義であった月読。死因は?ここで幾つ目だ?」
「大群の鼠毒、ファンブルの100でした。ここで四つ目の迷宮です」
「道理で鼠が少なかったわけだ。三迷宮の踏破者でも死ぬか」
「姉さま、我らの務めはいつ終わるんでしょうね」
「天照は天照で、月読は月読で、須佐之王は須佐之王で」
「なんとしても大願を果たす」
「そうだ――最終戦争ラグナロクを起こすのだ」
「ええ、我らの邪魔は誰にもさせません。今の姉さまの手駒は?」
「一つ目の迷宮。多分いつものファンブルよ。だがな」
「?」
「生贄にするにはまだ早い。1を出すかもしれぬ」
「姉様のダイスにはロックがかかっているのに?」
「だが認識した。1を見れるものが現れるとはな。月読、準備をしておけ」
「杞憂ですよ。いつものように姉様はがっかりされるのです」
「そうかもしれぬな」
「ところでその服装は?」
「チャイナドレス、またの名を『童貞を殺すドレス』」
「あれ?姉さまの目的は?」
「最終戦争ラグナロクを起こす、そのために童貞を殺す」
「私もチャイナドレスで御一緒しましょう。えい!月読早着替え!」
「これではあやつが死んでしまう」
「姉さま!月読ちょっと恥ずかしくなってきた」
「月読照れるな!これ系は照れると人が死ぬぞ」
「人の命を守るって本当に難しいですね」
すごく面白い次の話に続く!
【世界観の解説】
・天照 (あまてらす)
太陽の女神。
すごくかわいい。
艶やかな黒髪のロングヘア。
・月読 (つきよみ)
月の女神。
すごくかわいい。
柔らかな銀髪のポニーテール。
・倒れた男
ゲームオーバーを迎えたプレイヤー。
GMは月読。
かつて三つの迷宮を制覇した熟練の冒険者だった。
本当に助ける方法は無かったんだろうか?
・錆びた短剣
実は天照の加護が少し付与されていた。
主人公の認識能力では、見えていないものが沢山ある。
主人公が錆びた短剣を手放したのは、実は他にも理由がある。
・天照の100面ダイス
ロックがかかっている。
本来プレイヤーは1を認識出来ず、出すことも出来ない。
【作者からのお願い】
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皆さまの温かい評価が、このシリーズを続け、次の物語を紡ぐ力になります。
そして、もし何か感じたことがありましたら、ぜひコメントもお願いします。
「チャイナドレスが良かった」
「このチャイナドレスは予想外だった」
「いや、そのチャイナドレスはこのチャイナドレスだろ!」
そんな一言でも大歓迎です。
いただいたコメントには、できる限り返信します。
すごく面白いコメントで返信する予定です。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。




