第一層:巨大毒ネズミ
前回までの女神ダイスは――
・異世界に転移された。
・ダンジョンは十層。
・GMは神 (すごくかわいい)
ダンジョンという話なのに、ダンジョンが見つからない。
どういうことだ?
騙されたか?
天照はずっとにまにましてるし。
天照、何か服も着替えてるし。
さっきまでの特に素晴らしいコンセプトはどうなってしまったんだ。
いやでもこれはこれで素晴らしいんだよな。
カメラがあれば良かったのに。
とりあえず近くの町らしき場所に向かったら「不審者」として捕らえられた。
連れてこられたのは、街の地下の巨大な鉄格子。
その向こうには、暗闇。
「……おい、異邦人」
看守が言った。
「死にたくなければ、これを持て」
投げ渡されたのは、刃こぼれした錆びた短剣。
そして、カビの生えたパン。
背後で鉄格子が閉じる。
ガシャァン。
ここが迷宮か。
とうとう入り口に立ってしまった。
「さて、そろそろ決めるかの」
天照が隣に立つ。
「あっにまにまモードが終わった。何を決めるんです?」
「お主の――【志】じゃ。この後、何を目指す?」
「というと?」
「元の世界へ帰る、この世界の王になる、迷宮の謎を解く、何でもよい」
「何でも?」
「何でも良い。好きに決めるのじゃ」
「………生き残る」
「ほう。それだけか?」
「生き残らないと、多分何も始まらないので」
「くくっ……」
天照大御神が笑う。
「それはそれで面白いな」
そして。
「【志】――」
右手を掲げる。
「『生き残る』!」
「ここで特殊なエフェクトとかで出ないんですかね?」
「ゲーム脳!」
……その時。
「あれ?何か音しません?」
「にまにま」
湿った石造りの通路の奥から、ゆっくりと何かが近づいてくる。
…。
……。
………。
「お主、どうする?」
『 選択肢 』
【戦闘】――錆びた短剣で迎え撃つ
【慎重】――隠れ場所を探す
【威嚇】――大声と追い払う
「よくわからないけど威嚇する」
「ほう?」
「大声を出して、両手を上げて、身体を少しでもでかく見せる」
「戦わぬのか?」
「勝てるかどうかわからないので」
「なるほど」
天照が頷いた。
「『生き残る』に忠実だな。【志】は大事にせいよ」
暗闇から姿を現したのは――
体長一メートルほどの巨大な毒ネズミだった。
「でっか。大型犬かよ」
「大きいじゃろ?」
「これやばい。色やばい。いま戦う相手じゃない。脅かしたら逃げるかな?」
「では、やってみよ」
### 1d100
成功範囲:1~30
ダイスが転がる。
――22。
「1の目が一番良いがのう、まあ成功じゃ!」
両手を広げて、怖そうな顔をして、腹の奥から一番デカい声を出した。
「うおおおおおお!」
巨大毒ネズミは驚き、暗闇へ逃げていく。
「……」
「……」
「ダイスで成功が確定したなら、こんなに叫ばなくても良かったかな」
「勿論、真剣にやらぬと失敗するぞ。全力でやった時の期待値だと考えておけ」
「そういうもの?」
「そういうものじゃ」
「TRPGって奥が深いですね。とりあえず生き残れて良かった」
「このフロアには他のネズミもおるから、どうするか考えておけよ」
「あれ?さっきの鼠が倒せない。他にも鼠がいて、下層はもっと強い敵がいる」
「にまにま」
「ひょっとしてもう詰んでる?」
「にまにま」
「にまにましてないで何か言って!」
「天照!天照!」
「何も解決してないのに元気が湧いてきた。いける気がする!」
「にまにま」
「ところで何で着替えたんですか?」
「お主が一か所だけずっとチラチラミルカラダヨ!」
「絶対見てない」
「絶対嘘だぞ!」
「この濡れ衣は晴らさなければ……この迷宮で、この短剣で!」
「錆びた短剣、カッコイイネ!」
(これでも元気が出るな。天照バフかもしれないし男の基本機能かもしれない)
「でも逆に言うとチラチラ見なければ、素晴らしいコンセプトは戻ってくる」
「知らんがな」
「なるほど、解くべき謎は多い。戦う理由は出来た。TRPGって楽しいかも」
「そうじゃろ!TRPGは楽しいのじゃ!」
「そう思います。すごく安全な場所でやるTRPGは最高ですね」
「天照!天照!」
「落ち込んでない時に励まさないでください!天照がもったいない!」
「何を言うとるんじゃお主は、もう天照は天照しないぞ!」
「天照!天照!」
「効かぬ。何をやってるんじゃお主は」
「ずっとジェネリック天照をしていたい気分なんですが、腹が空いてきましたね」
「一階はあんがい死亡率は高いぞ」
「何とかなりませんかね」
「……にま天照」
「混ざったァッッ!?」
すごく面白い次の話に続く!
【世界観の解説】
・天照 (あまてらす)
TRPGが好き。
この物語のGM。
すごくかわいい。
複数のダイスを持っている。
・主人公
無自覚だが職業「生存者 (サバイバー)」を選んでいる。
TRPGなのでゲームが成立するならどんな職業も選択できた。
・看守
王立騎士団の国内部門に所属している。
本当はもっと重要なことも
身振り手振りを交えて説明していたが
主人公の言語力では理解できなかった。
看守はどんな事を説明していたか気づく人はいるかな?
・毒ネズミ
毒を持つ、大型犬ほどの大きさのネズミ。
本来は群れで行動する習性があるようだが……?
【作者からのお願い】
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「天照が可愛かった」
「この天照は予想外だった」
「いや、そこの天照はこの天照だろ!」
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