プロローグ:GMは神
どこからともなく、荘厳で重々しい声が響いた。
「ダイスに選ばれし者よ、目が覚めたか」
まぶたを開ける。
そこにいたのは――
一人の少女だった。
かわいすぎる。
美しく広がる黒髪。
透き通るような肌。
着崩した神々しい和装。
そして――。
やっぱり、かわいすぎる。
女性とまともに話したことすらないのに、いきなりこんな美少女と会話?
無理ゲーにもほどがある。
まともに顔が見れるわけがない。
視線を合わせたら大変だ。
きっと顔が真っ赤になって何も言えなくなってしまうだろう。
本を読むだけで良かったのに。
物語の中で冒険するだけで幸せだったのに。
なんでこんなことになってしまったんだろう。
でもちらっと見た限りは、こちらを見て楽しそうに笑っているようだった。
なんだここは、雲の上か?
天国か?
昨日神社にお参りして良かった。
「では、始めるぞ!本日のゲームマスターは――この天照大御神じゃ!」
「GM?天照大御神……?」
「そうじゃ」
「神様?」
「そうじゃ」
「なんで神様がTRPGのGMを?」
「色々理由はあるが、主な理由は面白そうだからじゃ」
「……帰っていいですか?」
「クリアしたらな」
「ですよね」
駄目だこの神様、ノリノリすぎる。
「今回の舞台は全十層の迷宮。その名も――」
女神が腕を広げる。
「『十層の奈落』!」
「そのままのネーミングですね」
「分かりやすくてよいじゃろ?」
「まあ……」
「一層ずつ進み、十層にいるボスを倒せばゲームクリアじゃ」
「ゲームオーバーは?」
「死じゃ」
天照は、にっこりと笑った。
「死ねば、すべてが終わる」
「……現実ですか?」
「ほっぺをつねってみい」
「痛い。ていうかTRPGって、もっと平和で知的なテーブルゲームですよね?」
「相違ない」
「あれ、思っていたTRPGと違う。結構怖いゲームですか?」
「スリリングなゲームじゃろ。褒め言葉として受け取っておこう」
天照は楽しそうに笑った。
「なお、わらわはゲーム中、基本的には横におる」
「一緒に戦ってくれるんですか?」
「それはせぬ」
「助けてもくれない?」
「基本的にはの」
「じゃあ、何のために?」
「GMには色々やることがある」
思ったより、ハードモードだった。
すると天照は、指を一本立てていたずらっぽく笑った。
「ただし――」
「?」
「お主は、わらわに話しかけることが可能じゃ」
「それだけ?」
「会話は他者に聞かれることもない」
「……ずいぶん便利な観客ですね」
「そう、完全な観戦者。物理無効。干渉無効もついておる」
「自分だけずいぶんと安全な場所にいますね」
「ふふん、GMは神じゃからな!」
天照は、くすくすとうれしそうに笑った。
駄目だ、反論の余地がない。
「では早速、転移じゃ! さあ――思いっきり遊ぼうではないか!
すごく面白い次の話に続く!!!
【世界観の解説】
・天照 (あまてらす)
太陽神にして、この物語のGM。
艶やかな黒髪のロングヘア。
すごくかわいい。
女神ダイス歴史TRPGに登場する天照と同一人物かは秘密。
・主人公
本と物語が好き。
人付き合いは苦手。
女性はもっと苦手。
無自覚だが次話で職業を選ぶことになる。
――貴方なら、どんな職業 (ジョブ)で迷宮に挑みますか?
・TRPGって何?
テーブルトークRPGの略。
ゲームのRPGを、会話とダイスで遊ぶゲーム。
「もし自分がこの世界にいたら?」
そんな現実では不可能な思いを叶える事ができる、世界で一番面白い遊び。
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