10月24日(月) アコーダンス
エンチラーダを食い過ぎた。確かにあのハバネロ・ソースは強烈だった。
酢豚に何をかけて食おうと俺の勝手だ。間食にトカゲを食ってるお前に言われたくない。
チェリーはアレルギーだろう。それに、精神的に疲弊してるのは事実だ。お前に色目を使うなんて、よっぽど参ってるんだな……
昨晩だが、ミスター・スプリッツァーを連れ戻してくれと彼女に頼まれた。殴ってでもいいからと必死に懇願してきたが、残念ながら、相手はブラック・パール・ファミリーだ。俺がどうこう出来る連中じゃない──物理的にはともかく、俺もまだしばらくは、ここで働かなきゃならん。そう諭したんだが、チェリーは「意気地なし」とすっかり臍を曲げる始末だ。
彼女はお前を誑し込んで、マンダリンへ突入させるつもりだったんじゃないか。
下手な情に流されるのもつまらん話だ。お前が抑制剤を使って女とファックするのは好きにすればいい。だがお前は覚えてるか知らんが、90年代くらいにあれを使った時、マタタビへ酔ったみたくフラフラになって、風呂場で溺れかけただろう。俺が襟首掴んで引きずりあげてなきゃ、今頃お前はフィラデルフィアの冷たい土の下だ。
最近は薬も随分良くなってるそうだが……確かに、島で遊ぶ時のため、処方してもらうのは悪くないと思う。
アルクディアはもう知らん。好きにすればいい。オーロラにテキストを送ったら、「別に大したことじゃないのよ」と返ってきた。
ホイストはここのところすっかり威勢が悪いな。小鬼で、しかも人間とのハーフだから、元々の性格がいじけてるんだろう。あんな奴は相手をするに値しない。お前も放っておけ。
南の島で悠々自適の生活を送るために、俺達は稼がなきゃならん。脇見をしている暇はない。
5階の廊下で天井が雨漏り、というか513号室の前が土砂降りみたいになっているのは、排水管がぶっ壊れたせいだ。16時に修理が来る。
918号室の客は具合が悪そうだったが、チェックインして8時間でゾンビ・ウイルスを発症した。医者のところへ送りつけて、荷物はフロントで預かってる。青いキャリーケースが一つだ。客室にはオゾンを焚いている。
ゾンビ客と言えば、220号室の親子連れ。両親は普通の人間だが、子供の方がウイルスへ感染していて、明日に養護施設へ連れていくらしい、4歳の女の子だが、まだ味覚が残ってるとのことだ。ロベルタの提案でケーキとジュースをサービスしている。またマルキは涙ぐんでいたので、オーキッドが代わりに持って行った。
803号室から年長の妖精達が飛んできて、今度のハロウィンに年少の子達がお菓子を貰いにくるので、渡してやってくれないかと頼まれた。お前もシフト入ってるだろう、用意しておけ。トカゲの干物じゃない、まともな奴をな。
俺は予定だと出勤じゃなかったが、どうせいつも通り、事務所にいるさ。それにドロレスから、今回の仮装は素敵だから必ず見てくれと念押しされた。
マルキも今や超過勤務に入っているせいか、ストレス性の発疹ができたらしい。膝の裏が痛痒くて仕方ないとこぼしていた。道理でステロイド系の軟膏の匂いがすると思っていた。
季節の変わり目で誰もが体調を崩しやすいんだ、仕方ない話さ。ロベルタですら、居眠りして事務所で翼を出したくらいだからな。それと制服のスラックスに、黒い毛がついていた。
お前もまた仮眠室でトランスしただろう。毎回ブラシをかけさせられる周りの奴らの身にもなれ。俺も今日、毛を落としてから勤務に戻ったら、サボりすぎだとクロックからまた嫌味だ。クソッタレめ。
抑制剤だが、どうしてもチェリーとやりたいなら使えよ。彼女を噛み殺すのはよせ、さすがに俺も寝覚めが悪い。
彼女はネガティブな嘆きを口癖のように呟いてるが、本心では死にたいとなんざ全く思っていないに違いないからな。
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