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10月22日(土) アコーダンス

 もう二度と、妖精達の儀式には参加しないぞ。あんな目に遭うくらいなら、呪われた方がずっとマシだ。

 何もない時に友人が魚へ飲まれても平然としているのに、もう死ぬことが分かってる子が予定通りに川流れしなかったら泣き出すなんて、彼女達の考えはさっぱり分からん。目の前だろうが川の果てだろうが、最後は沈んで溺れ死ぬのは変わらんだろうが。理解しようとも思わない。俺もあんな長い間、ヘドロで濁った冷水に浸っていたせいか、寒気がする。お前のロッカーに入れてあるアスピリンを貰ったぞ。


 お前も鈍い奴だ、エメ。フランスで死んだのはトーピードのセフレだろう。彼女はそういう、義理堅いところがあるからな。

 助言は大したことじゃない。もっと胸鎖乳突筋を鍛えろとさ。この前一発目のスープレックスで頭から叩きつけられて、攻勢の勢いが少し衰えたから、そう言われるのも仕方がない。精進しないとな。


 ミス・ウィング・ハートがODした。幸い、タクシーから放り出され、地面へ叩きつけられた衝撃で目を覚ましたらしい。夜には戻ってくる。

 第一発見者はサイレント・サードの爺さんだったが、普段のボケた様子が嘘みたいにハキハキと通報の内線を寄越した。搬送される時には着替えをまとめてやったり、ウーバーじゃなくてイエローキャブを呼べと自分の財布を出したくらいだ。

 まさかあのジジイ、彼女とワンチャン狙っている訳じゃ……いや、それこそ本当に、ありえない。


 ワンチャンどころか、ここのところ1105号室に入り浸ってるも同然な私立探偵のミスター・ギャツビーが、部屋へ戻ってきたミスター・スプリッツァーを殴った。そうしたら今度は、チェリーが探偵をどついた。ベッドから飛び出してきて。すっぱだかのまま。

 あれは見ものだったぞ。さすがにミスター・スプリッツァーの連れていた女がチェリーへ飛びかかる段に至っては、力尽くで引き離したが。女達が猛然と廊下を転げ回ってる間、男達は呆然と見守っているだけなんだからな。処置なしだ。

 チェリーは時々噛む癖があるし、いつも深爪しているが、もう1人の売女の方がまるで魔女じみた長い爪の持ち主だった。しかも顔を引っ掻いてきやがったんだからな。あんまりしつこくチェリーへ掴みかかろうと怪獣みたいにのたうち回るから、一発頬を張ったくらい、許されて然るべきだろう。


 オーロラはアルクディアに婚約指輪を渡されて、承諾したそうだ。アルクディアと言えば見苦しいほどの有頂天さで、婚約旅行で俺達よりも先にハバナへ行くと大はしゃぎしている。


 海辺のリゾートついて、幾つか目星をつけてみた。賃貸サイトのURLをテキストしてある。お前からも良さそうな物件があったら提案してくれ。


 確かに、宿へ女を取っ替え引っ替え連れ込みまくるのも体裁が良くない。90年代に短期間、オークランドでこのホテルよりもっと貧相な木賃宿に滞在していた時、真上の部屋が脂ぎった中年の吸血鬼だったろう。奴は全くの色情狂で、男とも女ともやりまくっていたが、あれほどだらしないものも無かったからな。しかも奴は最終的に、まだ高校生みたいな少女をベッドへ入れたところ、囮エクソシストだった彼女に両腕両脚を銀の斧で切り落とされた。


 俺は銀製品を振りかざされるようなドジはもう踏まんが、余計な邪魔立てには断固立ち向かう。


 さっき803号室を覗いたら、もう妖精達はケロッとした顔で、次の公演で演じるコーラスラインの練習をしていた。「メアリーはお気に入りの青いシルク・リボンを持って行ったから、きっと寂しくなんか思ってないわ。それに缶が水の底で開いたら、人魚の妖精に生まれ変われるかも」らしい。礼なのか詫びなのかは分からんが、チケットを2枚渡されてる。お前、マティと行ってこいよ。

 

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