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9月6日(火) アコーダンス

 散々おっかないだの何だのとビビりまくってたのに、よりによってナイフを使って戦いを挑むなんて、頭がイカれたんじゃないか。それとも素早くカタをつけるっていうのは、一思いにとどめを刺されたいって意味か。


 お前はベトナムで地元や他の国の連中に色々習って凝ってたからな。足りないおつむなりに考えたか。

 確かに、トーピードの使うプッシュダガーにカランビットで対抗する戦術、少なくともSOGナイフよりは悪くない選択だ。相手の懐へ飛び込むのも一か八かの選択と言え、巻き込みで彼女の攻撃を往なしながら、軌道が読み切られないうちに有利へ持ち込むつもりだったんだろう。

 まあ、彼女のリーチ管理能力と、パンチの速度を完全に見誤ってたが。せっかく俺の動画を見たんだ、トーピードのコンビネーションがこの25年で、益々研ぎ澄まされていることくらい学習しておけ。


 案の定スタミナ切れを起こした頃、左フックで顎を打ち上げられた瞬間、もう終わりかと思った。だがあそこで踏みとどまりダッキングで2打目のナイフを避けつつ組みついたのは、お前にしちゃ根性を見せる戦い方だ。鎖骨下に一発ぶっ刺されてまともに息も出来ない有様だった割には、粘ったじゃないか。結局ナイフを放り投げて、最後はドンチャンをパイル・ドライバーで返されて失神するまで20分か。あんな強引な繰り出しはトーピードしか出来ないから仕方ない。




 お前は偉いぞ、エメ。よく頑張ったな。最後までトランスせず、ちゃんと戦い抜けたじゃないか。


 今だから言うが、俺は昨晩、トーピードに言った。お前は絶対に、人の姿のまま耐えきると。すぐに髭を出すし食い意地は汚いが、CPは結局のところ獣へトランスする人間だ。人狼がそうであるように。

 目覚めた後、トランスして逃げていったとトーピードは異議を唱えていたが、賭けの条件は「耐えきる」だ。戦闘を放棄した後はどうなっても構わない。


 クロックにも、お前は工事現場から降ってきた鉄骨の下敷きになったと伝えてある。今日1日は休んでも構わないそうだ、安静にしてろ。後で薬と、お前の好きなレッドスナッパーの片面焼きフライドエッグを持っていってやる。


 お前が稼いだ3000ドルだ。全額ピサンに入れておく。彼女も試合に勝って勝負に負けたってところだな。


 とはいえ、一連のやり取りで、ホテルでもすっかりトーピードの格は上がった。アルクディアなんざ調子に乗って、「お前らがいなくなっても、彼女を用心棒で雇えばいいじゃないか」などと抜かしてる。トーピードが一回の護衛でいくら稼ぐか教えてやったら、奴はそのままニヤけ顔を凍り付かせていた。


 実際、彼女がいれば一瞬で片付くような話ばかりだ。

 1116号室の吸血鬼は、案の定注文が多く、やれ熟成血液はないのかだの、寒いからブランケットを持ってこいだのと大騒ぎしている。エクソシストに追われているらしいが、よっぽど通報してやるか、あの牙の生えた口に拳をめり込ませてやりたい。

 207号室のゾンビは盛大にチップをばら撒いているが、ちょっと目を離した隙にホイストが横取りしやがった。いい加減、あいつにはヤキを入れてもいいんじゃないか。ここのところ、クロックもあいつとは幾らか距離を置いているようだ。当然の話だが。

 クロックも近頃少しは頭が冴えてるらしい。816号室のヴァンピールを退去させた。あの売人、ミセス・ラ・プレイスに医療用大麻を売っていたらしい。彼女も随分な不良老人だな。俺の生まれ故郷で、婆ちゃんがパイプ煙草を吹かしていた感覚で、ボングを吸うんだぞ。

 

 それにしても、確かに3000ドルは少額じゃないと言え、トーピードも随分と本気になってたな。だからお前もあのザマだ。風呂場の窓から黒い塊が駆け込んできた時は、てっきりこの前のサボテン酒騒ぎを思い出して、背筋が冷たくなった。肺をやられちゃニャーニャーもお預けだな。大人しくしておけよ。


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