表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/107

8月12日(金) エメラーダ

 髪をカットしてもらったのは今日だよ。少なくともお前が文章を書いてた時にはまだ切ってない。ミス・ニエべ・メヒカーナがすごくクールな美容師であることには変わりないけどね。


 明日デンから帰ってきた時には、お前の興奮も少しは収まってることを祈ってる。そんなに目をギラギラさせて、オーキッドやホイストはすっかり縮み上がってるぞ。


 ほうれん草のスープ、半分もらった。途中でケチャップを入れて味変したら、これもまたおいしかった。

 アンシャンテと約束してたのは俺だ。彼女に、まだ少しお日さまに当たった毛皮の臭いがする、私は好きだけれど、と言われた。俺もオーキッドのことを笑っていられない。しばらくは、いつも血をごまかす時に付けるヴェルサーチに香水を変えるつもりだ。


 それくらいかな、とりあえず伝えなきゃいけないことは。あとは職場の話だから、適当に読み流してくれたらいいよ。


 ミス・プルシア・ポムの食人植物は、この暑さと太陽で信じられないくらい蔦を伸ばしていたようだ。換気口を伝って7階全体を走り回っている。それで、とうとう隣の718号室の家具と、あと711号室まで出張して、猫のスコッティを食べちゃったんだ。

 ミスター・ベラーノが半狂乱で内線を入れてきたけど、駆けつけた時にはもう下半身が飲み込まれていた。引っ張り出したら臍から下はほとんど溶けちゃっててさ。

 スコッティはもう、自分に起こったことが何が何だか訳も分からなかったみたいで、苦しんでなかったよ。半分になった胸の上下がゆっくり静まっていって、毛並みが真上から撫でられたみたいにぺっしゃりして、それからノミが恥を忍ぶようにそそくさと毛皮から飛び出してくるまで、嗚咽してるミスター・ベラーノの代わりに、俺が頭を撫でてやってたしね。


 客室の家具についてはミス・プルシア・ポムが弁償する手持ちがないって言うので、取りあえず荷物を預かっている。スコッティについては本人達同士で話をするしかない。

 大丈夫さ、またアニマル・シェルターに行けば、可愛い子達がいっぱいいるよ。


 ミス・ウィング・ハートとサイレント・サードのじいさんは、仲良くなるにつれ共鳴してるみたいだ。片方が叫べば半日後にもう片方が叫ぶ。片方が不安そうに徘徊していたら、もう片方がやってきて宥める。今日は前者の日だ。仕方ない。晴れる日があれば雨が降る日もある。

 

 2階の蛇口から出る水が全体的に生ぬるくなってるみたいで、3件ほど苦情が来てる。ゾンビなんか放っておけばいいと思ったけど、よく考えれば、奴らだからこそあんまり茹だらせちゃ駄目だ。まあ、ならどうすればって話だけど。


 コザックが仮眠中にネズミへ噛まれた。ゾンビじゃなくて普通の奴だけど、牙を立てられた耳がポロッと取れて、あれ、くっつくのかな。とりあえず診療所には持って行かせてる。

 

 アルクディアがいないのをいいことに、奴がクリスマスのオーナメントみたく事務所へ吊るしていった靴下を全部、中庭で燃やしてある。ついでに奴の臭い靴も、趣味の悪い制汗剤も全部だ。スプレー缶に関しては爆発してロケットみたく飛んでいって、中休みに出ていたホイストの車のフロントガラスへ突き刺さった。あいつは髪を掻きむしって騒いでたけど、みんなの秘密だぜ。


 コモドールが明日、アルクディアの愕然とした顔を見ながら飲む酒はうまいだろうって、出勤してるスタッフにはフローズン・マルガリータを振る舞ってくれるって。今度はもちろん、使うのは普通のテキーラだ。全部終わったら楽しもう。


 そう、明日だ。予定だと、XLが姿を現す。来るかな、来ないかな。お前も色々本調子じゃないだろうけど、ワクワクする、人間がサンタクロースを待つのってこんな気分なんだろうな。


$1,136.26

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ