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8月11日(木) アコーダンス

 髪型、似合ってるじゃないか。ニエべもいい腕前だな。


 腕の1本や2本傷めたくらい、何とでもなる。シリアル・キラーなんて大仰な名前をつけられても(この名称を聞くと、お前がよく食ってるコーンフロスティを想像して仕方ない)しょせんはコソコソと獲物を狩って歩いている、つまり己の技量に自信がない証だ。お前よりずっと弱い奴なことは間違いない。少なくとも、スナップからジャーマン、ベリー・トゥ・ベリー、ノーザンライトと来てTボーンで締める5連弾スープレックスを打たれても立ち上がってくるような奴は、お前くらいしかいないだろう。

 それと言っておくが、先に掃除用のモップで殴りかかって来たのはお前だぞ。


 密猟者は一度味をしめたら、繰り返しやってくるようになる。妖精達に注意喚起をした方がいい。何だかんだと、彼女達は無邪気だ。それこそ、ちょっと甘い言葉をかけられたら、自分の背丈と同じくらいの保存容器を何十個と買わされそうな危うさがある。


 案の定というか、1011号室の奴はエクソシストに連れて行かれた。脱走したカラスの使い魔だったらしい。もう8人くらい、プリンスタウンの高級住宅へ忍び込んじゃ寝ている人間の目をつついたりの悪さを繰り返していたそうだ。

 ついでとばかりに、あの神父はホテルの中を視察したいとさ。奴らはソーシャル・ワーカーみたいな仕事もしてるんだから、7階や8階へ行きゃいいのに、案内しようとしたら結構だと断りやがった。偽善者め。


 まあ、ちょうど良かった。あの時お前、7階へ行ってただろう。ミス・ウィング・ハートが全裸で廊下を歩き回って叫んでるのを見たら、お堅いヴァチカンのジジイも新手のポルターガイストかと思って腰を抜かしたに違いない。

 

 ほうれん草はエクジステロンや硝酸塩が豊富だ。効率よく摂取するにはスープが一番いい。チェリーには礼を言ってあるし、言葉以外にもお返しをしておいた。自分はオーロラのように太陽の下を歩いていないと悲しんでいたから、俺達は所詮夜歩く者だと慰めてある。


 507号室で壁に水が伝う漏水があり、調べたらクーラーのダクトからだったが、匂いがおかしいのでチェックアウト後にシルキー達へ調べるよう頼んでおいた。そしたら案の定、ダクトでゾンビ・ラットがくたばってた。廃棄した後、消毒とオゾンは済ませてある。シルキー達は自分が感染と無縁のくせに、ネズミやゾンビを極端に忌み嫌う。両方の要素が重なっていたとなれば尚のことだ。


 ゾンビ・ラットじゃないネズミは無作為に出現する。この前もリネン室で、ピクシーが噛まれそうになった。奴らにとっちゃラットなんざ、人間がグリズリーと戦うようなものだろう。仮眠室にもいたとかで、オーキッドが噛まれたと泣いていた。だからもっと香水をつけるべきなんだ。お前も気をつけろよ。あと間違っても食おうとするな。何かに感染してる可能性だって0じゃない、この季節にウイルス性の胃腸炎は最悪だぞ。


 俺は明日休むが、アンシャンテと約束してたような気がする。彼女も事情は分かってると思うが、万が一連絡があったら、お前から説明しといてくれ。また近いうちに彼女、ホテルへ遊びにくると言ってる。「寂れた安宿の粗末なベッドに押し倒されるのも、荒れた感じがして興奮する」そうだ。そういえば今日、ミスター・パルファムも獲物の女を連れ込んでたな……


 なんて蒸し暑さだ、喉が渇いて仕方ない。シンクに浮いていたビール1パックを空けた。お前も飲みたかったら自分で買ってこい。

 思うんだが、キューバにも満月用のデンはあるんだろうか。まさかあっちに人狼がいないはずもないから、どこかには存在しているはずだが。予め探してから訪れるべきだろうな。

 満月の下、夜の浜辺を走り回るのもそれはそれで爽快な気分になるように思うものの、せっかくのバカンスだ。迂闊に血まみれにして、早々に追い出されるのはごめんだからな。


$1,133.01

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