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ハーリーバーリー・ハイツの人でなしども──狼男と豹男の業務日誌から  作者: 車海老 鯛焼
5月 ヴァンパイア・ウォンツ・トゥ・パーティー・オール・ザ・タイム
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5月11日(水) エメラーダ

 バスローブ持ってきてくれてありがとう。あのブルネット、ワンチャン行けると思ったんだけど、やっぱり駄目だったな。CPの血が薄過ぎる。

 職場で誰かを噛み殺したなんて本当に久しぶりだから、少し気まずい。彼女の死体だって、パーティーの客達が散らかした他の屍と一緒くたに、業者が片付けてくれると分かっていても。


 俺は別に吸血鬼なんか好きじゃないけど、奴らの金持ち特有な鷹揚さみたいなのは悪くない。


 従姉弟? なんだ、4親等も離れてるじゃないか。俺の父ちゃんと母ちゃんだって、再婚者同士の血の繋がらない兄妹だ。

 CPは、同族とやらないと相手を殺しちゃうんだぜ。身近な相手と番うのは仕方がないよ。さすがに俺の知ってる範囲で、二親等で夫婦になってたのは、18世紀生まれのものすごいおじいちゃんおばあちゃんが、たまにいたくらいだけど。

 この国の保護団体は、それを倫理にもとる見做したから、住民の出生証明書を調べまくって去勢手術を受けさせる運動をした。ヨーロッパじゃ人間でもおじと姪で結婚してるのに。


 けどまあ、俺の母ちゃんは保護団体に連れて行かれて、手術をさせられた時。騙し討ち同然みたいなシチュエーションだったことは別として、子供の心配をしなくて良くなったのは、正直ホッとしたって言ってたけど。8匹子供を産んで、そのうち3匹はちゃんと育たなくて、それでも生活は十分カツカツだったから。

 腹ボテになってしんどそうにしてる母ちゃんはかわいそうだった。毛も抜けてすっかり痩せちゃって。つわりがきつい体質だったからな。

 実際のところ、家族の中で本気で怒り狂ってたのは、父ちゃん1匹だったんじゃないか。


 パーティーが終わったら後片付けをしなくちゃ。


 モルナール兄弟は1301号室と1302号室に移って、シルキー達が頑張って清掃をしてる。さすが上流階級って言うのか、遊び慣れてるって言うのか、確かに激しい散らかりようだけど、壁や床や天井に穴を開けたり空調を壊したり、致命的な汚損はしていないらしい(血がドボドボに染み込んだマットレスについては弁償することで話がついてる)


 ただ、一つだけミスター・スティンガーからの苦言。816号室の売人が仲間を呼んで、客達にパープル・デルマーを捌いてたって。クロックにも報告してあるけど、どうなんだろう? 別に本人が売ったわけじゃないからな。


 チェリーの姿が見えないってミスター・スプリッツァーが探し回ってた。多分まだミスター・オーレの部屋にいると思う。やっぱり彼女は狼男好きだよ。好きものだ、魔女の子孫なら別におかしくもないけど。


 死骸は11体(客も含めてね)部屋から歩いて出ていけなかった奴らが16人。救急車は2回来て3人を搬送して行った。結局あのコネクティング・ルームへは、84時間ほどの間に何人の客が出入りしてたんだろう。一時期、座る場所を探すのも一苦労な程ひしめき合ってたことを考えたら、まだ少ない被害って言えるんじゃないか。


 パーティーに参加した1009号室の客、酒か薬か血を吸い過ぎたせいか知らないけれど、体調が優れないから延泊するそうだ。


 そして宿泊料金が元に戻った途端、ゾンビが来た。203号室にアサイン。「急に値段が上がったのはホリデーシーズンですか? 吸血鬼って名義で予約サイトを使った時はあそこまで高くありませんでしたが」とかチェックインの時に言われた。もしかしたらこっそりカメラを回していたのかもしれない。絶対に、例のウォーキング・デッド協会の奴に違いない。だから俺は何を言われても黙ってたけどね。

 奴がスーツをクリーニングに出したから持って行ったら、ピクシーは臭い臭いとブーイングの大合唱だ。俺なんかそいつの部屋に荷物を運んで、奴が服を取り出すまで中で待ってたのに……チップが多かったのは救いだ。20ドル。それでもモルナール兄弟よりも、年金暮らしのドワーフよりも少ないんだから。


$2,478.05

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