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ハーリーバーリー・ハイツの人でなしども──狼男と豹男の業務日誌から  作者: 車海老 鯛焼
5月 ヴァンパイア・ウォンツ・トゥ・パーティー・オール・ザ・タイム
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5月9日を振り返って アコーダンス

 パーティーにおける死について。人間の感覚と、夜歩く者たち(この呼称にはどうにも違和感を覚える。余りにも多くの種族を大雑把に内包し過ぎていやしないか。人間もゴリラやオランウータンとまとめてサル呼ばわりされたら、おかしく思うはずだ)の感覚は大きく乖離しているのだろう。


 もちろん、俺達が死を理解していない訳ではない。吸血鬼やエルフのように不死の種族もいるが、大抵の存在は有限の生命を持っている。しかし人間ほど、他者の生命を尊ぶというお題目を重視し、広範囲へ適用したがる存在はいない。例え実際には尊重されていない考えだとしても、聖書には汝殺すべからずと太字で書いてあると聞く。俺達はそんな欺瞞を口にはしない。守るのは自らか仲間だけだ。腹を空かしたならば、例え相手が無害な存在であっても、そいつを屠って己を生かす、あるいは身内に食わせる。


 ただ、飲食という観点についてなら、それを娯楽として捉えることがあるのも否定しない。人間だってそうだろう。うまい飯と酒の匂いを嗅ぎつければ近寄っていき、食い散らかす。そしてパーティーというのは、娯楽を提供する側面が強い。


 吸血鬼が無造作に人間の頸動脈を牙で切断し、トランス・アニマルははらわたを貪り食う。珍しくもない話だし、何百年も変わらない光景だ。寧ろ変化したのは人間の方に違いない。


 半世紀前のパーティーだと、人間は基本的に固まって行動することが重視された。大勢で押しかけるほど、ドアマンは気軽にチェーンを外して優先的に会場に入れてくれたものだ。

 それが今じゃ、大抵の特権階級は1人か2人、多くて数人でやってくることが多い。会場でも「いつものメンバー」として寄り集まっていることは確かにあるが、それも離れたりくっついたり、誰もがリポーター気取りで歩き回り、独自の語り口を持とうとしている。


 群れから離れた獲物ほど、狩るのに容易いものはない。相手が野心満々ならば、なおのこと。


 あのパーティーで死んだのは、ハクスリー・イーデンスだけじゃない。エスコート・サービス達、何も知らずに連れてこられた客。そして「夜歩く者たち」。あの会場では全ての命が同様に、軽々しく奪い合いの対象となった。


 ハクスリーは血を吸われて失血死させられる一部始終を動画に撮られていた。血を吸った吸血鬼は美食家で知られる。人間で例えれば、最高級の牛肉と有機野菜を堪能した、というところだ。或いは、ファックしたと見なしてもいい──どんな種族でも、パーティー会場へ訪れて、誰かが誰かにフェラチオしている場面へ生まれてから一度も遭遇したことがないなんて、俺は絶対に言わせない。


 そもそもカメラに映っていないところには、当たり前の如く他の死体が積み上がっていたし(それを片付けるのもホテルの従業員の仕事だった)それはハクスリーの死体よりも遥かに凄惨な見かけをしているものだって少なくはなかった。


 人間はあの夜の出来事へ戦慄するが、2020年代で、しかもカビの生えた上流階級のモルナール兄弟が主催していたパーティーとなれば、まだ大人しいものだったのではないかと、今記録を読み返して考える。実際、思い出した限りでもそうだったのだろう。

 1970年代のように凶暴性を掻き立てる薬は出回っていなかったし、様々な病気の蔓延も通り過ぎて、特に人間はクリーンだった。

 だから俺達の間でも、動画が流出して人間が大騒ぎしていると聞いた時には、少なからず驚きが走ったものだ。人間種族特有の潔癖さは理解し難い。


 もちろん俺達も(一部を除けば)理性を有している。ただ宴でお利口にしているほど、臆病じゃないというだけの話で。うまい食い物があれば、どこでもお祭り騒ぎは始まる。

 人間の監督が言った、有名な台詞がある。「人生は祭りだ」人間は誰1人として、あの言葉の真の意味を理解できていないに違いない、哀れなことだ。

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