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ハーリーバーリー・ハイツの人でなしども──狼男と豹男の業務日誌から  作者: 車海老 鯛焼
5月 ヴァンパイア・ウォンツ・トゥ・パーティー・オール・ザ・タイム
51/103

5月12日(木) アコーダンス

 816号室の売人はシラを切り通してるが、まあ一気にツーアウトツーストライクってところだな。実際、パーティーでは早々にファイアボールでグロッキーになった挙句、吸血鬼に血を吸われまくって穴だらけになったらしい。

 血を吸われることで体内に注入される、吸血鬼の唾液へ含まれる成分は、下手な薬物よりも依存性が強い。パーティーを見ただろ、あいつらに隷属しているみっともない連中を。


 依存物質にハマるのはある意味仕方がない話なのだろう。肉体的な反応は精神で制御しきれないこともある。

 だがオーレがあの青白い顔をしたガキに指先一つでいいようにされているのを見た時は……正直、情けないと思ったね。同族だから余計そう感じるのかもしれんが。


 お前がミスター・スプリッツァーの鳩尾に一発入れてなきゃ、もっと大惨事になっててもおかしくはなかった。つまり、あの長耳野郎がくたばってたってことだ。それくらい、オーレは興奮しきっていた。

 ファックの最中に踏み込まれたんだから、当然と言えば当然だが。しかしミスター・スプリッツァーも、よりによってこの街でトップクラスの有力者の身内とチェリーがヤってる時に踏み込んだんだから、かなり錯乱していたらしい。それとも、酒をかっ食らって気がデカくなってたのか。


 とにかく、オーレはあの賭博師どころか、チェリーも食い殺す気だったのかもしれない。あいつは自分がモルナール家と繋がりがあることを、鼻にかけてる節があるからな。

 それを、ソノラ・モルナールがたったの一言だけで。あれは外国語か、それとも魔術関連の呪文だったんだろうか?

 一言だ。それでオーレは、ぴたりと動きを止めた。今にも耳を伏せて、尻尾を股の間に挟みそうな勢いで、チェリーの首から手を離したんだ。

 珍しい光景じゃない。吸血鬼やその他の種族へ従属して生きている人狼は少なくない。ただ、あいつはその辺り、もう少し独立独歩の精神で生きてるのかと思ったから、その従順さが少し意外だっただけだ。


 「お前が考え込んでるなんて珍しい」ってなんだ。張り倒すぞ。俺はお前と違って、脳みそを両親から与えられている。


 203号室のゾンビが抑制薬を切らしたせいで暴れてるから、頭を叩き潰しておいた。宿泊料金は財布から徴収している。こればっかりは奴の自己管理の甘さだ、ウォーキング・デッド協会の連中も文句は言ってこないだろう。


 711号室のミスター・ベラーノは、13階の騒ぎのせいで飼ってる猫が飯を食べなくなったと愚痴っていた(半魚人が猫を飼っているのを見ると、どうしてもニヤついてしまう)お前、お仲間として何かアドバイスしてやれよ。

 803号室の妖精達が、フルーツ・パンチでびしょ濡れになった服をベランダへ干していたらしいが、4枚ほど飛んでいってしまったとのこと。俺も一枚、中庭で拾った。見つけ次第持っていってやれ。


 パーティーの余波はそれくらいか……ロベルタが、人間界で会場の動画がバズってると騒いでいたな。


 912号室にブックしたリザードマン、チェックインは19時の予定だ。1時間前に火災報知器のスイッチをオフにすること。それから今日はベビーサークルが全部出払ってる。


 1004号室の分も運び出して使ってる。あの子供は結局助からなかった。棺桶の輸送の手配が済むのは明日だから、それまで夫婦は滞在する。

 確かに2匹は落ち込んでいるようだが、奇妙なほど冷静だ。少し気味悪さを覚える。

 アクアや、下の子達が死んだ時のお前の両親を思い出した。お前もそうだった。双子の妹が死んだのに、お前が涙を流しているのを、俺は見たことがない。

 俺は親父の顔を朧げにしか覚えてないが、お袋は俺が相当大きくなっても、1匹で泣いていることがあった。外では気丈に振る舞ってたけどな。お前のところもそうだったのか?


$2,578.3

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