5月9日(月) アコーダンス
言い張るも何も、俺は陥落して大混乱になることが目に見えていた(実際にそうなったわけだ)サイゴンに残りたくなかっただけだ。それに俺はお前と違って、ガチのGIジョー生活だったからな。来る日も来る日もベトコンと睨み合いだ。飽きたんだよ、人間の戦争へ付き合うのに。
パーティーはもう38時間ぶっ通しで続いてる。お前は客に紛れちまうし……従業員じゃないとチップはもらえない。そんな基本的なことも分かってないのか。目先の享楽に気を取られて、大局を見失うな、馬鹿野郎。
エスコート・サービスは5人退場して8人追加が来た。一流の派遣会社だけあって、みんな粒揃いの美人ばかりだ。あちらの方も勿論超一級だしな……俺も2人ほど味見したが、モルナール兄弟は文句も言わない。金持ちの寛容さか。
確かに兄貴の方は、コックがないらしい。幼少期にエクソシストに切り落とされたとか。
食い物も飲み物もじゃんじゃん運ばれて(偉大なるモルナール一族だから、アルコールと血液はホテルから購入する位の礼儀はある)クロックはホクホクしてる。
この騒ぎと因果関係があるのかは不明だが、1004号室のCPの子供が引きつけを起こした。取り敢えず診療所を紹介して母親が連れて行き、さっき帰ってきて、安静にしてる。オーダーでベビーサークルを一組追加で設置した(足元用として)
夫婦の会話を小耳に挟んだんだが、彼らは従姉弟同士らしい。CPは、今でも比較的近い血縁者と番う事も多いらしいな。人狼も集落から出ることが禁忌とされていた昔はよくあったらしいが、21世紀に入ってからは殆ど聞かんぞ……
オーレはチェリーとやった事があるそうだ。数年前、まだミスター・スプリッツァーと付き合ってなかった頃に、彼女はブードゥー教の自己啓発セミナー講師の元でアシスタントをしていたらしい。その時は違う名前で呼ばれていだそうだが、間違いないと。
事実チェリーも、オーレを見たら笑いかけて、旧知の中として扱っていた。で、1111号室に2人に篭ってたのは、30分くらいか。
その間も、ミスター・スプリッツァーはしんねりむっつりした顔で、文句の一つも言いやしないんだからな。とことん情けない男だ。どうせ2人きりになってからしか殴れないんだろう。
妖精達も来てたぞ。フルーツ・パンチのボウルの中で泳いでた。彼女達も陽気にはしゃぐのが好きだ。
お前も女をそこまで積極的に誘わないし、1匹で静かに飲んでることが多いのに、こう言う場へはやたらと混ざりたがる。結局、寂しがりなんだよ、猫だからな。いい加減、認めたらどうだ。それとも食い意地が張ってるだけか?
この騒ぎに乗じる馬鹿が少なからず出てくると思ったが、案の定だ。
構って欲しがりのサイレント・サードの爺さんが胸に銃弾を撃ち込んだ。本人は病院に行ったし、後片付けはシルキー達がやってくれている。13階担当になれなかったシルキー達はすっかり不貞腐れて、心なしか仕事が雑だ。さっきも、隣室の707号室へ一時的に移動した爺さんを横目に、はっきりと聞こえる大きさで舌打ちしていた。
パーティーの噂を聞きつけたと思しきゾンビ達が何人か押しかけてきたが、予め2階の宿泊料金を普段の8倍近くに釣り上げておいたから、皆退散している。どちらにしろ、13階は明日一杯、貸切扱いだからな。モルナール兄弟にはそれだけの権利を有するだけの金を払ってる。
それ以外にも幾つか苦情の連絡が来ていたが、ミスター・ソノラが「みんな上がって貰っていいよ」と招待したので、ほぼ全員が獲物とただの飯や酒目当てに会場へ向かったはずだ。
俺も幾らか御相伴に預かったが、まだ足りない。今ならまだ新鮮なものも残っているだろう。これを書き終えたら会場に向かう。オーキッドが二日酔いでトイレに籠ってるから、もし顔を合わせたら掃除はちゃんとしたか確認しといてくれ。
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