表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

3月26日(土) エメラーダ

 ピサンには戻してくれなくて構わないよ。お前がそう言って、実際に返金してくれた試しなんか一度も無いだろう。


 おまわりは災難だったな。そんな事を言われたら怒って当然だと思う。そうじゃなくてもお前は気が短いんだし。

 一回くらいシフトに穴を開けたくらい問題ない、普段あれだけ無償で超過労働をしてるんだから。それに、事情を話して代わってくれたのはオーキッドだから、礼は奴に言ってくれ。


 妖精達はお前を怖がってるのが半分、キャーキャー言ってるのが半分、しょうがない。お前はちょっと強面タイプだし。小さい子達は特に、ホテルで悪さをしたらお前に捕まってチャームスの缶へ閉じ込められた挙句、川に流されるって年長者から教えられてるらしい。

 多分、友好的になりたいか、媚を売ってるかどちらかだろう。誤解を解くためにも、せっかくなんだから行ってやろう。


 そういえばあの日1105号室に、アイスペール一杯の氷を持って行ったんだった。チェリーがドアまで出てきて受け取ったし、また頬を腫らしてたから、てっきり自分の顔を冷やすのかと。ミスター・スプリッツァーも、潰されていない方の手で殴ったなら、彼女もそこまで重症じゃないだろう。そうでなくても彼は優男風で、俺がちょっと叩いてやればすぐ泣き出してしまいそうだ。


 死体は、そろそろ腐りやすくなってくるかも知れないから気をつけないと。

 ウイルスも活性化してるらしくて、ゾンビの隣に置いてあった1219号室の死体が感染して動き出した。SRのドアをドンドン叩いてたから何事かと思った。頭を切り落としてある。

 

 716号室のミス・ウィング・ハートの部屋にウイスキーを一瓶持って行ったんだけど、床で倒れてるのに気付かなくて躓きかけたし、手探りする時におっぱいを思いきり鷲掴んでしまった。彼女はラリってたから怒りもしなかったけど。

 実は俺、ミス・ウィング・ハートがどんな顔をしてるのか、まだ見た事がないんだ。お前はある? ヤク中特有のあばた面なのかな。今日、脈を見るために触った腕は、ひんやりと華奢な感じだった。

 まるで王子様にダンスを誘われた、たおやかなお姫様みたいに、彼女は手を差し出した。声だって呂律が回っていないことを引いても柔らかくて、あまり乱暴な感じはしないから、もしかしたら良いところの出なのかも。


 さっき、620号室にタピオカチーズティーを持って行ったら、狼女に「カエルの卵じゃなくて偽物が入ってる」って嫌味を言われた。台帳を見たらモンタナのビリングス出身らしい。そんな田舎者なら仕方ないけれど、やっぱりあれをカエルの卵だと思ってたのは俺だけじゃない(もちろん、俺はキャッサバだって、最初からちゃんと知ってた)


 ギブソンのオヤジさんは気のいい人だ。人間にしておくのが惜しいくらいに。彼が店を閉める気を起こさせない為に、ちゃんと俺達もレッドスナッパーへ通うべきだと思う。俺は今日、昼に食いに行った。やっぱりフライドエッグがうまい。

 

 ホイストは軽症らしくて、一ヶ月もすれば復帰できると聞いてる。それくらいなら、新人で穴埋め出来るだろう。

 噛んだ奴が本当にゾンビだったかの証明も出来ないのに、あいつ、労災も傷病休暇も通ったそうだ。クロックが手を回したに違いない。きっと俺やお前なら、絶対に無給で見舞金も出ないよ。

 クロックが、今度の火曜日に、シフト入ってない奴は見舞いに行かないかって。誰も行きたがってない、当然の話ながら。俺は断った。お前も行かないと思うとは言っておいたけど、念のため自分の口から出欠を報告してくれ。

 出席情報が捗々しくないから、クロックはやたらと不機嫌になって、行かない奴は強制的にシフトへ入れるって言ってる。そんなのいつもの話だ。寧ろクロックが居なかった方がやりやすい。


$2,773.01

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ