2月9日(水) アコーダンス
とっととタイムカードを押して帰宅し、泥のように眠りたい。だが片付けは残ってるし(さすがにあれをシルキー達だけに任せるのは酷だ)フロントで押し問答してるおまわりの仲間が、裏口にも張ってやがる。普段は頭が鈍い癖して、こう言う時に限って目敏い奴らだ。許されるなら1人残らず喉笛を嚙み裂いて頭から食い散らかしてやりたい。
まず、ルームサービスについては俺が悪かった。あのアレルギー薬は今後使わない方がいい。
発情するとトランスするCPの性質は、お前の長所を何一つとして損なわない。抑制剤だって、本当にヤリたい時以外は使わなくていいんだ。そんなこと、当然の自己決定権だろ。
具合が良くなかった割に、1312号室でのお前の立ち回りは大したものだった。
今回ばかりはクロックも弁償を要求してこないだろう。と言うか、リザードマンが全額出すはずだ。曲がりなりにも金持ちを自称してるんだからな。
あの竜人の兄弟達と叔父叔母甥姪、ひしめき合う部屋だ。あれぞ火花散り、一触即発の状態って奴だった。部屋にある家具の半分が焼失して、壁と床の一部が黒焦げになった位で済んで、僥倖とみなすべきだろう。まだリフォーム業者が来ていないから確定はできんが、恐らくあの焦げた壁にクロスを貼り直し、床はまあ、穴も空いていないし、新しいカーペットでごまかすつもりじゃないか? 今後はあまり乱暴だったり、重量級の連中をアサインしないことになるはずだ。
お前も馬鹿だな、エメ。リザードマンの鱗だぞ。あんな勢いでタコ殴りにしたら、そりゃあ拳だって擦りむけるさ。
と言うか、いくら暴れる奴を気絶させる為だからって、もうちょっと穏便に済ませられただろうに。あの時俺は殴れって言ったんだ、嬲れじゃない……いや、正直に言えよ、わざと聞こえないふりをしたんだろ?
何にせよ、久しぶりに暴れて、お前もすっきりしただろう。奴も見たところ、毒性のある体液は分泌していなさそうだが、ちゃんと帰ってからも消毒しておけよ。
目を覚ましたあの甘ったれ馬鹿息子に聞かれたんだが、結局、あの金貨が詰まったトランクケースは誰が持って帰ったんだと。俺は恐らく叔父だったと思うんだが。シルキー達にチップを(これまでの分も含めてだ)払っていたのはあの男だったしな。
甥と違って、奴はしみったれた性格じゃないらしい。
お前の分のチップも取り敢えずピサンへ入れておいたが、構わないな?
このボヤ騒ぎのおかげで、地下にまで煙が回って、SRの中の死体がやたらスモーキーになっちまった。とても食えたもんじゃない、業者へ回収させるよう、張り紙は剥がしてある。
他にも何件か問い合わせと苦情が来てるが、じゃあどうすりゃいいってんだ。この寒空の中、全員外へ退避させたら、むしろそっちの方が非難轟々の騒ぎになるだろう。
むしゃくしゃするし、今から1105号室に行く。ミスター・スプリッツァーはまたカジノへ行っているらしい。奴のジンラミー好きは全く病気だ。またまずいところで借金をこしらえてるらしくて、チェリーは不安がってる。昨日会いたがってたのも、それが原因の一つだろう。
まあ、適当なところで、お前の休憩がてら、ルームサービスでも持ってきてくれ。彼女はキャンティが好きだ、一番安い奴でいい。俺にはバド、お前も飲め。つまみはあの萎びたラディッシュでも、向こうで出してくれるだろう。
言っておくが、まだヤッてない。彼女は美人で、自分の価値をよく理解してるが、今夜こそはしゃぶる位はやらせてやる。
それと、昨日アマゾンからお前宛で、電子懐炉を着払い注文しておいた。今日の夜3時以降にフロントへ届くから受け取って金を払え。それで借りてた分をオーキッドに返せ。
何が22ドル99セントだ。セールで11ドル50セントじゃねえか。
$3,516.68




