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2月6日(日) エメラーダ

 まさか本当に中庭へ放り出すなんて。


 おかげでもう一昼夜、くしゃみが止まらない。しょっちゅう顔を擦っているものだから、ロベルタに、雨どころか豪雪が来たらどうするって呆れられてしまった。

 俺はマスなんか掻いてない。仮眠だから緊張が抜けきらなくて、しかもオーキッドの匂いで興奮したのも加わって、頭が勘違いをしたんだ。だから本当に性的な興奮をした時と違って、すぐに元へ戻った。

 大体、お前だってよく酔った時は、トランスして寝てる癖に。


 そもそも、本当にシフト表通り働いてたら仮眠なんか必要ない。これを書いてる時点で、もう丸3日ホテルの中にいる。それなのに何度もタイムカードを押して、馬鹿みたいだ。


 シェイプシフター2人の荷物は運び出して病院に持って行った。何度見ても、身体同士が接着した状態の連中はおっかない。50年くらい前のスプラッターホラーに出て来そうな見かけで……でも、あの状態が彼らの種族にとっちゃ究極の愛だって言うんだから。

 もっとも、切り分ける医者にとっちゃ地獄みたいな有様だろうけど。ERの処置室で、汚れたシーツの上で蠢きながら、お互い嘆くような声で甘く囁き合ってる塊を前にして、明らかにインターンっぽいエルフの子は頭を抱えていた。


 パープル・デルマーだけど、あれ、最初に流し始めたプッシャーがCPらしくて、キウイフルーツの根が入ってるらしい。この前ベネットに聞いた話だと、ピット大でも使ってる奴らがいるんだって。人間も夜歩く者たちも半々くらい。

 きっと俺が打ったら、小指の先の量でもラリっちゃうよ。キウイって、実を食べてもちょっと身体がぬくくなることがあるくらいなのに。


 昔、お前の兄貴のアレイシューターがコカインやってなかったっけ? ビバリーヒルズかどこかのホテルのスイートに泊まって、大きな黒檀のテーブルへ、ガラスのボウルに入った白い粉がどんと置いてあった。パーティーへ来てた客へフルーツ・パンチみたいに振る舞って……俺達は薬なんか大して効かないから、粉の頂上へティースプーンの代わりにスコップが突き刺してあった。彼はあの時、だいぶ儲けてたもんな。ドラッグなんて金のかかる娯楽だ。

 いや、最近はそうでもないんだろうか。確かにクラックが流行り始めた辺りから、薬物ってもののイメージは貧相なものになった気がする。


 ボストンのリザードマン、潔癖症で、室内清掃係が一生懸命部屋を片付けてるけど、バスルームの隅に白い水垢が溜まってるとか、灰皿が曇ってるとか、本当にくだらないことで何度も苦情を入れてくる。あの部屋についてるのは精鋭のシルキー達なのに、まだ苦情を付けるなんて病的だ。しかもチップだって全然くれないらしい。

 噂だと、運び込んだ革のトランクケース一杯に金貨を溜め込んでるって聞く。ちょっとくらいくすねたってバチは当たらないに違いない。


 タピオカチーズティーが周知されたら、フォンダンショコラのオーダーが目に見えて減って来た。クロックにフリーザーへ残っていた古いものを食べていいと言われたけれど、そうでなくても冷凍焼けしているし、そもそも俺はフォンダンショコラの、あの小麦粉の味がどうしても好きになれない。カロリーも高そうだ、タピオカほどじゃないにしても。


 ミス・チェリー・コークにちょっかいを掛けるのは構わない。でも彼女、ちょっと同じ階の客から苦情が来てる。隣室の1106室からは騒音、1112号室の呪術師は、彼女が自販機を蹴り飛ばしていたのを見かけて注意したら、中指を立てられたって。だいぶ荒れている。俺が見かける時は、大抵ミスター・スプリッツァーに殴られた後なのか、大人しくしていることが多いけれど。


 それと、確かにセントルイスで金を工面して来たのはお前だった。でも最終的にあの高利貸しを半殺しにして、車も金も取り返したのは俺だ。別に恩へ着せる訳じゃないけれど。


$2,920.43

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