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12月24日(土) エメラーダ

 俺達が思うほど、ゾンビって存在は世の脅威じゃないのかもしれない。どう考えても、既存の権力者の方がよっぽど厄介だ。当たり前だよな、積み上げてきたノウハウも金も、とにかくパワーってものを持ってる。


 トーピードがあんな楽しそうに、本気で殺し合いをする姿なんて、少なくとも俺は初めて見たよ。あのエクソシスト軍団のリーダー、シスター・ハイジだっけ? エグい強さだ。絶対に素面じゃなかった、ヴァチカンが殲滅作戦専任のエクソシストに使わせるデキセドリンをぶち込みまくってる。ベトナムで人間の兵隊があれを使ってたけど、全く同じ様子だったもの。

 トーピードが精確なドロップキックを喰らって13階から落っこちている間に、ミスター・モナコはシスター・ハイジに首を切り落とされた。それはいいよ、所詮ゾンビだし。大体、ミスター・モナコだって、本当は死にたかったんじゃないのかな……もしかしたら、最初から、彼は死ぬ為にこの街へ来たのかも。


 それにトーピードも倍返し、どころじゃない。先に仕掛けたのは彼女だ。ミスター・モナコを囮にして吸血鬼達を殲滅してやろうと企んだ、立会人の枢機卿や司祭を皆殺しにしちゃったのはさ。これぞ両者痛み分けって奴だね。

 まあ、どさくさに紛れて、エクソシストの紫外線レーザーで片目に穴を開けられたシンフォニー・ネビアーニはご愁傷様だ。


 それよりも俺は、チェリーが……まさかミスター・モナコと駆け落ちを企むなんて。エクソシスト軍団と招待客の吸血鬼が入り乱れての大乱闘、ただでもカオスだったんだ。彼女が飛び込んできて、文字通り手に手をとって逃げ出した時、反応が一瞬遅れちまった。


 彼女達が6階まで息を切らしながら階段を駆け降りて。消火ホースのところに隠してあった、通販サイトで一枚150ドルで売ってるような綻びだらけの移動用魔法陣を広げ、中へ走り込もうとした矢先…………何で6階なんだよ、よりによって。こんな悪いことばかり重なるのってあるだろうか。

 突然壁から現れてチェリーの身体へ飛び込み、憑依したマンハッタン。それとも駆けつけてきたシスター・ハイジ。どっちへ立ち向かうのが正しかったのか、今でも俺は正直、分からない。でもマンハッタンはお前の足を掴んで部屋へ引きずり込もうとした時、片手にロープとキュウリのピクルスの大瓶を持ってたし……………確かにトーピードはミスター・モナコを守れって言ったけど、彼は所詮、ゾンビだろ? 

 マンハッタンはロープとピクルスを持ってた。キュウリって、何だかおっかないだろ、うん。

 あそこでトーピードがいてくれたら良かったのにな。多分あの時、彼女はまだ、7階くらいを落下中だったんじゃないかな。


 1315から1318号室の、めちゃくちゃになった部屋については、モルナール兄弟がお金を出してくれるって(ミスター・スティンガーには感謝しなきゃ。あの騒ぎの中、ネビアーニ兄妹を冷静に守っててくれたんだから)4室コネクトルームになっちゃったんだ、しばらくは閉鎖だね。片付けもしなくちゃ。吸血鬼の死体、と言うか灰はシルキー達から借りたダイソンで吸い取った後、評議会に返却、ヴァチカン側のは引き取りに来るまで保管。SRには入らないから1318号室に集めておくこと。出来るだけ体の部位を1人分ずつまとめておけって。


 時間にすれば2時間も無かったような、一瞬の出来事だったけど、まるで2週間くらい一睡もしなかったような気分だ。カナダ行きの飛行機の中で少し寝るよ。荷造りする時間はあるかな。


 ミスター・スプリッツアーが、起こさないでくださいの札を1105号室のドアにかけて出てこないから、直接言えない。もしもお前がチェリーに会えたら、鼻血が出るくらいビンタしてごめんねってエメラーダが言ってたと伝えておいて。正確にはマンハッタンを殴ったんだけど……さすが魔女の末裔だ。完璧に憑依されてたよ。


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