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12月25日(日) アコーダンス

 行きも帰りも爆睡しやがって。さっき客室乗務員が飲み物をと聞いてきたからコーヒーを2匹分頼んだが、お前の分ももらうからな、怒るなよ。


 あんな勢いで馬乗りになってタコ殴りにしたら、相手はシェイプ・シフターだぞ。そりゃ変身能力が解除されるに決まってる。おかげで金の場所は聞き出せないし、警報装置はやかましい。挙げ句の果てに、ハッカーが正義感から住所を拡散したらしく、押しかけてきた他の被害者はスマートフォンのカメラを回す(俺達が一番乗りだ、ざまあみろ)

 俺はあそこまでボコれと言ってない。程々に締め上げて、金を返却する気にさせろって意味だ。


 おまわりに捕まらなかっただけマシだ。出国審査でも何もなかっただろう。不吉なことを言うな、今後も入国禁止になんざならん。大体、もしなっても知ったことか、カナダなんて……メープル・シロップと山と滝くらいしかないだろ、多分。


 慌ただしくて言いそびれたが、チェリーは別に怒ってなかった。俺がシフト終わりに顔を合わせた時には、いつも通り落ち込んで「やっぱり私には彼しかいないのよ」と、酔い潰れたミスター・スプリッツアーをバーまで引き取りに行っていた。彼女はもっとマシな選択肢があることにいつ気付くんだろうな。

 マンハッタンはまた引きこもっちまったが、まあ、気長に声をかけるさ。時間はいくらでもある。


 ブチギレるのはここらでやめだ。金は天下の回りものという。また貯めればいい。それに少なくとも、フライト代金は取り返せた訳だからな。

 まだ辞表を出してなかったのが幸いした。昨日はモルナール兄弟がチップをたんまりくれたし、またあんな太客が来たら、すぐにピサンも満杯になる。


 どうせお前はテキストを確認してないだろう。さっき離陸前に確認したら、えげつないことになってた、今夜のシフトが憂鬱極まりない。


 いつからかは分からんが、308号室に透明人間が不法滞在していたらしい。今日チェックアウトしたドワーフが、クローゼットからイビキが聞こえると通報してきて発覚した。しかも厚かましいことに、その透明人間は逃げることすらせず、取り押さえようとしても、見えないのをいいことにまだ部屋へいるそうだ。鍵をかけて閉じ込めているから、シフト入り次第2匹で捕まえるぞ。


 604号室に宿泊していた吸血鬼が、ブランディング騒動で恐慌を来し、朝一番で発作的に窓を開け放ったそうだ。灰はまだ半分ほどが部屋に残っていたところ、マルキがうっかり、評議会へ引き渡す用の掃除機を、紙パックを交換しないまま使って吸い取ちまったそうだ。どうするんだ、そんな野良吸血鬼の灰を混ぜたなんて、バレたら気位の高いヴァッピーどもが激怒するどころじゃ済まないぞ……まあ、その辺りは俺達の関知することじゃないか。クロックが何とかするだろう。その為の統括本部長様だからな。


 このまま滞りなく飛行機が着陸すれば、シフト前に腹ごしらえは済ませられるだろう。トーピードがレッドスナッパーで早めの夕飯を奢ってくれるとさ。彼女は少し突き指した程度で済んだとのことで何よりだ。今度こそ本当の紳士協定……トーピードとあの尼さんが大将格だから、淑女協定か? いや、あんな腕っ節の立つ、全くおっかない淑女がいて堪るか。

 お前もせいぜい、マティに顎を擽って貰えよ。チェリー、と言うかマンハッタンとやり合った時、ピクルスの瓶の破片で思いきり右の脇腹を刺されてただろう。黙ってても俺には分かるぞ。


 サーフボードが壊れてないか心配だ。あの宅配員め、家を出ようとした瞬間にチャイムを押しやがって。部屋へ入れる時、ドアの鴨居へ盛大にぶつけたから、へこんでるかもしれん。

 そもそも、あのボードがまだ実家に保存してあったのが驚きだ。お袋は物持ちがいい。俺も目新しい物にばかり目移りせず、古いものも大事にするよう心がけたいものだ。


$1,167.79

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