12月16日(金) エメラーダ
Wi-Fiのせいじゃない。家でホームページを見てみたけれど、やっぱり繋がらなかった。それにSNSで、閲覧できなくなったって投稿がいっぱいある。
ミラノ? ヴァチカン? 何言ってるのかさっぱり分からない……
さっきトーピードに聞いても、お前と同じ情報しか口にしていなかった。ブランディングって、要するに吸血鬼のペットになるってことだろう。
とにかく、やっぱりヴァチカンは最悪だってことは間違いないよ。ミスター・モナコも不幸だな。それにしても、“預かり物”に手を出すなんて、トーピードも大丈夫なんだろうか。もし冷たいケツに突っ込んで、金持ちの吸血鬼にどやされたら大変だ。
スコッティがトーピードの部屋を覗いてきたらしいけど、チェリーはすっかりミスター・モナコと親友の間柄になっているとのことだ。彼女も、ちょっと前には結婚とか言っていたのに、今じゃミスター・スプリッツァーと完全に冷めきっている。彼が腑抜けて大人しくなってから、その傾向は余計に強まった。
マティ曰く「その女も馬鹿じゃなかったって訳ね。虚勢すら張り続けられない腰抜けを見限るのに、いい機会じゃないかしら」って
俺は別に彼女へ見栄や虚勢を張ったりはしてないつもりだ。だからあの子、俺を水草か何かと思ってるのかもしれない。
ホーソーン公園で一枚のブランケットにくるまって眠ってても、全く無防備だ。ひんやりした北風と白い太陽の暖かさ、茶色いカサカサの芝生と毛布の柔らかさ。マティはいつもサンダルウッドが強い香水をつけていて、遠くの遊歩道じゃ犬がクソをしてるのに飼い主は片付けていかない。反対のものに上下左右から押しかけられて、何だか変な感じがする。ただ、マティが魅力的だって言うのは絶対不変の事実だってだけ。
彼女とランチ(ムールアン通りのケバブ・トラックだ。おかみさん、移民局から解放されたらしい。本当に良かった)を食って楽しんだから、今日はちゃんと働くよ。
1109号室と1110号室は吸血鬼の夫婦だけど、ハリウッドで一部屋ずつ利用。結婚して850年なんだって(ヴィンテージの血液ボトルにメッセージカードをつけて、3時に届けてくれって夫の方からオーダーがあった。奥さんの方の部屋にだぞ)それだけ長い間連れ添っていたら、寝室も別になるものなんだろうな……ちなみにどちらの部屋にも、22時にグリーンドア・エスコート・サービスから客ありの予定。
310号室のゴーレムは鼻が曲がりそうなほど臭い。湿布を腐った生卵に漬け込んで足の爪の垢をトッピングしたみたいな、とにかく凄まじい。香水を付け直したけど、まだ鼻がムズムズする。
320号室には便箋と虫眼鏡とバスローブを持っていって、1201号室は空調のタイマーのセットの仕方が分からないって言うから教えてきた。
事務所の床で筋トレするならマットを敷かないと制服が汚れる。俺は仮眠室でダンベルを(どう言うわけか、アルクディアが寄贈だとか言って置いていった)使ってる。遊びに来たシャーリーが「エメは土管のアコードとちがってくびれがあるのね。わたしはエメのほうがすき」だってさ。おませ過ぎて辟易しちゃうよ。
彼女、俺が仮眠してたらすぐ嗅ぎつけて、一緒に添い寝したがるんだ。特に俺がトランスしてる時は、毛皮に埋まって楽しそうにしてる。
お前の言う通り、ゾンビっていくら血を吸っても吸血鬼と交れないものだと思ってた。でも例の透析治療とか、ここのところすごい勢いで技術が発展してると聞く。
けれどゾンビにとって、そうやって従属して生きるくらいなら死を選んだ方がマシだって思ってる派閥も存在するらしい。70年代に人狼が全く同じような主張をして、よく街を行進してたよね。だから最近は、大っぴらに人狼を奴隷扱いする奴はいなくなったろ、少なくとも表向きは。
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