57.相手の弱点
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「じゃあ,その作戦で行くよ!」
その後も軽く話し合ってから,ベリー達は視線を前方に戻す。
数分経っているのだが,リリーナはずっと防ぎ続けていた。
「じゃ,行ってきまーす」
そう言った瞬間,リオンの姿が消える。
それを見届けて,キャサリンが杖を構えた。
「よっと」
軽い掛け声と共に,六つの雷が落ちる。
「あー」
だが,全ての雷が槍によって防がれた。
「槍って防具じゃないんですよ? 何で高速で回転させて円形の盾にしてるんでしょうね」
防御については専門家なリリーナが呆れたように呟く。
全く同じ動きをする六体の相手を見据えて,キャサリンが小さく笑った。
「芸達者でも,意識は共有っぽいね」
「はぇ?」
何故か作戦を聞いていた筈のベリーが疑問符を浮かべている。
それには答えず,次にミーシアが動いた。
「【暗転の祝辞】」
静かに告げて,杖を相手に方に振る。
杖の上についた魔石から,黒一色の魔力が打ち出された。
シャディル達の方を直撃するが,ダメージは無いように見える。
だが,ミーシアが得意とする魔法は“闇魔法”だ。
「……!」
相手六人から,混乱を感じる。
先程の魔法を受けた相手は,視界を闇で奪われるのだ。
闇の中でキャサリンの雷が無数に落ち,シャディル達はそちらに気を取られる。
だから,背後から静かに迫る気配に気付かない。
「よいせっ」
リオンの軽い声が響く。
シャディル其の一の頭上で,銀の刃が閃いた。
完全に雷に気を取られていたシャディルは,対応が遅れる。
リオンの鎌を受けたシャディル其の一が,霧のように消滅した。
「……思った通りだね」
一連の流れを見ていたキャサリンが,笑みを浮かべる。
「えっ……もしかしてなんだけど」
不意に,ベリーが小さく呟いた。
「……あっちは六人がいるけど,全員同じ人だから,考えることとかも一緒なの?」
「そゆこと」
作戦を立てている時から,キャサリン達が考えていたことである。
相手が使用しているのは,“分身を作る魔法”だ。
だが,それについてベリー一行は詳細な説明をされていない。
つまり,あまり喋り過ぎると自分にとって不利ということだ。
「だから,何か言いたく無い弱点があるんじゃないかなって」
「きゃさりんすごい! かしこーい!」
ゆめがパチパチと手を叩く。
それに対して満更でも無さそう,というか凄く嬉しそうに笑ってからキャサリンが続けた。
「で,考えられる弱点ってあんまり無くて。本体以外は凄く弱いとか? って思ったんだけどー……」
「最初に彼は『本体と同じ強さを持っている』と言っていたんですよね」
前方を向いたまま,リリーナが言葉を引き継ぐ。
ちなみにリリーナは,五人になった相手と戦うリオンに,遠隔で防御魔法を付与するという器用なことをしていた。
「そ。だから,何だろって考えたの。そして思いついたのが“思考回路は分裂して無くて,全員の動きは自分の脳一つで考えてる”んじゃないかなって」
「えー……!? それ,めっちゃ弱点じゃん!?」
「ですよね」
要するに,六人__今は五人__のシャディルの動きは,全て本体が考えているということ。
なので,ずっと全員動きが似ていたのだ。
そして恐らく,分身は本体と感覚を共有している。
「あ,だから暗いのをえいってやったの?」
ベリーがポンと手を打った。
先程ミーシアが放った闇魔法のことを言っているのだろう。
本体の視界を奪えば,分身の視界も自動的に奪われる。
それを見越しての攻撃だったのだ。
「何となく動きに違和感があったので,取り敢えず投げておこうかと!」
ミーシアが小さく笑って杖を構え直す。
「取り敢えず,で成功するのは充分化け物なんですけどね……」
「別に此処そういう系の集まりだし,問題ないでしょ」
リリーナが呆れたように呟くが,キャサリンが何とも言えない表情で答えた。
その代表格であるベリーは,呑気にリオンを応援している。
「ん? 何かやった方が良い?」
二人から視線を感じて,驚いたように振り返った。
「あー……じゃあ,相手の倒し方も上手いこと決めれたし,本腰入れよっか」
「倒し方?」
ずっと大人しくしていたゆめが首を傾げる。
「えっとね。さっき話した通り,相手は全員本体が動かしているわけじゃん? だから,手っ取り早く全員を倒す方法があるの。分かる?」
キャサリンが問うと,ベリーが得意気に口を開いた。
「流石に分かるよ! 本体を倒すんでしょ?」
「正解。でも,一寸問題があって」
軽く拍手してから,キャサリンが声を潜める。
それから,五人の相手の方を指差した。
「……どれが本体か,分からなくない?」
「確かに!?」
相手は絶えず移動している上,見た目に全く差が無い。
直接戦っているリオンなら分かるかもしれないが,遠くから見守っているベリー達には区別がつかなかった。
「多分そこまで計算に入れていたんでしょうね……」
「戦闘慣れしてる感じがあります」
リリーナが眉を顰め,ミーシアが冷静に分析する。
「……まぁ,この辺で一番偉い家なんでしょ? ちゃんと戦える人も居ないと駄目だろうしね」
珍しくベリーがまともなことを言っていた。
本来王女なので,その思考回路は当然なのだが。
「確かに……さいふぁさんとか,賢そうだけどあんまり強くなさそう」
話を聞いていたゆめが,サイファ達が居る方に視線を向ける。
いつの間にか長椅子を用意して,ソルトーダと並んで座っていた。
確り飲み物と茶菓子も用意されている。
「……めちゃ楽しそうに観戦してる」
「良いな〜」
観戦している二人__の手元にある茶菓子を見て,ゆめが頬を膨らませた。
「あー……。勝ったら,貰えるかもよ?」
「「ほんと!?」」
キャサリンが何となくそう言ってみると,ベリーとゆめが目を輝かせる。
「多分! だから,皆で頑張ろ__」
突然轟音が響き,キャサリンの声が遮られた。
轟音の発生源は,リオンとシャディル達が戦っている方向である。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:戦って……は無いですね。
取り敢えずキャサリンが凄い頑張っています。




