54.魔族の認識
誤字,脱字報告受け付けております。
見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。
感想,レビュー等大歓迎です。
ブックマークも是非お願い致します。
ベリーのド直球な問いに,その場にいる全員が目を丸くする。
それから数秒経って,サイファは口元を歪めた。
「……その通り。私達は,魔王がだいっきらいなんだ」
そう告げる声は朗らかで,誇りすら感じられる。
シャディルも無言で同意するように頷いていた。
「……失礼ですが,皆さんは自分達が変わっているという自覚がありますか?」
ベリーに感化されたのか,リリーナも直球で尋ねる。
三兄弟は顔を見合わせて,軽く頷いた。
「まぁ,魔族としては変わっているよね。少なくとも,魔王に従わないと公に言っているのは,私達だけじゃないかな」
「あ,言っちゃってるんだ」
ニコリと笑ってそう答えられ,ベリーが微妙な表情になる。
三人に一言断ってから,円を作って会議体制になった。
「……まず間違いなく,変わった一族って此処だよね」
「間違いなく,此処ですね」
キャサリンが呟くと,リリーナも同意する。
「何か……すごいね。まおうがだいっきらいな,まぞくさん」
何個目になるか分からない茶菓子を口に入れて,ゆめが感想を述べた。
「協力出来たら,強いかも」
ゆめが持っている皿から菓子を取りつつ,リオンも補足する。
それに対して,ベリーは一瞬三兄弟の方を見てから続けた。
「あの人達,人間の私達にも優しいから……お手伝いして欲しい! って言ってみる?」
「……そもそも魔王討伐しに来ましたって,言ったっけ?」
キャサリンが冷静に言葉を返すと,ベリーがピシッと固まる。
「……言ってない」
静かにお茶を飲んでいたミーシアが噎せた。
リオンも小刻みに震えている。
「え? じゃあ今の私達って……何故か人間なのに魔王領に居て,しかもなんか……ヤバい人ってこと?」
途中でまとめるのに飽きたのか,キャサリンが雑に締めた。
「ヤバい人ってことだね」
「間違い無い」
ベリーが頷き,リオンが賛同する。
それからもう一度全員で顔を見合わせた。
「……言っちゃって,良いよね」
「むしろ言わないと駄目でしょう。あちらは魔王が嫌いらしいですし,協力出来れば嬉しいですよね」
ベリーが確認すると,リリーナが深く頷く。
「……というわけで,大前提なんですけど!」
「はい」
三兄弟に向き直って,ベリーが声を上げた。
「私達,魔王を討伐しに来たんです!」
端的に告げると,三兄弟が驚いたように固まる。
「……聞き間違いかもしれないのだが……魔王を,討伐?」
冷静な表情で成り行きを見ていたシャディルが,思わず問い返した。
サイファに至っては穏やかな笑みが剥がれて,あからさまに唖然としている。
「うん。魔王討伐だよ」
一周回って堂々としているベリーが答えた。
「……ちょっと想像してなかった反応」
「どーしたのかな」
キャサリンが小さく零すと,ゆめも首を傾げる。
「……お前達,魔王討伐に来たのか?」
顔を見合わせて動かなくなった兄達の代わりに,黙っていたソルトーダが声をかけてきた。
「そだよー。でも,どっちかっていうと……」
ベリーの頭に乗っていたまろんが答え,そっと視線を逸らす。
「あ,えっとね。魔王とお話して,ごめんなさいしてもらって,魔族とも仲良くしたいの」
「それはさっきも聞いた」
「あれ? 言ったっけ?」
ソルトーダが微妙な表情で言葉を重ねた。
「兄上達は忘れてるみたいだけど,お前達最初に『魔族のことは嫌いじゃなくて,魔王とちゃんと話して謝ってもらう』的なこと言ってたじゃん」
丁寧にそう述べられて,ベリー達が言葉に詰まる。
「その時も兄上めっちゃ驚いてたし……何?」
ソルトーダは視線を感じて言葉を切った。
何故か,にまーっと笑っているベリーと目が合う。
「いやー……。ただのやんちゃな男の子だと思ってたら,意外と真面目っ子だったから」
「は?」
ベリーが笑みを深めると,ソルトーダが金色の瞳を丸くした。
それから数秒経って,言葉の意味を理解したらしい。
「はぁ!? 何でお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ!? オレの方が年上だぞ!?」
「そういう問題じゃないんだよ〜」
ゆめも生暖かい笑顔になっていた。
ベリーの笑みが一行に伝染している。
「あー,それはともかく。ベリーが最初にそう言ったのに,お二人が驚いているのは何故だと思います?」
リリーナが問うと,ソルトーダは少し考え込むように沈黙した。
「……純粋に忘れてた可能性もあるけど,二人とも別にそんな年じゃねぇし……。まぁよく理解出来なかったから,聞き逃してたんじゃないのか?」
「わぁお」
「言い方はあれですけど……。魔族らしい考え方をされますよね」
ベリーが目を丸くし,リリーナが苦笑する。
「魔族らしい考え方?」
話を聞いていたミーシアが,ふと首を傾げた。
ソルトーダもよく分からなかったのか,疑問符を浮かべている。
「……都合の悪いところは聞き流す,っていうのが,よくある悪役像じゃないですか」
一行に納得の空気が流れた。
何やら話し込んでいる三兄弟の上二人には聞こえていなかっただろうが,ソルトーダは複雑な表情をしている。
それから少し黙り込んでから,小さく呟いた。
「……人間にとっては,魔族は“悪”っていうのが当たり前なんだな」
「そりゃそうだよ。だって,魔族のせいで人生が変わっちゃった人もいるんだよ?」
いつもよりベリーの語気が強い。
この中で最も魔族の被害を受けているのは,国が滅んだ王女ベリーである。
ちなみに次点が,恐らく魔王傘下の蛇獣人に国を滅ぼされたリオンだ。
ベリーの言葉に,ソルトーダが言葉に詰まる。
それから少し逡巡するような素振りを見せた。
「?」
首を傾げるベリー達に,ソルトーダは何かを告げるべきか悩むように目を伏せる。
数秒固まった後,小さく呟くように零した。
「……人間は魔族のこと,嫌ってるだろうけどさ。人間のことを嫌ってる魔族って,そんなに居ないんだぞ?」
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:切りの良さって何処で売ってますか……?




