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お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第三章 相対する正義と思惑

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53.繋がる歴史と答え

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感想,レビュー等大歓迎です。

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 サイファの朗々とした語りは続く。


 *……*


 その策というのは,簡単な話だ。

 魔(・)王(・)軍(・)に(・)戦(・)を(・)仕(・)掛(・)け(・)た(・)。

 まず,魔王城に勤めていた一族の者を使って,魔王軍の中で内部分裂を起こした。

 すぐに魔王城内は争いが頻発し,その企みは成功したと言える。

 それが間違いだったと気付くのは,それから数年経った時のこと。


 魔王城内で生まれた不和の種は,やがて魔王領全土を巻き込んだ。

 いつの間にか各地で派閥争いが始まり,魔王領は混沌とした時代を迎えた。

 中立派を守っていたスラメジート家は,着実に戦の準備を進めていた。

 その矢先のこと。


 突然,スラメジート一族は滅んだ。


 *……*


「え? 何で?」

 ベリーが思わず呟く。

 話に引き込まれていたからか,身体が若干前のめりになっていた。

「そうだね〜。……何でだと思います?」

 ニコッと笑って,サイファが問う。

 リリーナ達が真面目に考え始めたのを横目に,ベリーが元気よく手を上げた。

「その時の魔王領(まおーりょう)みたいに,家族で仲が悪くなっちゃった!」

「ベリーが賢いこと言ってる……」

 思ったより真面目な回答に,キャサリンが目を丸くする。

 むっと頬を膨らませたベリーに苦笑しつつ,サイファは人差し指を交差させてバツを作った。

「一族は最後まで団結して,危機を乗り越えようとしていたね」

「……さいふぁさんは,その時居たの?」

 茶菓子を口に放り込んでいたゆめが,ふと首を傾げる。

「うん。まだ幼かったけどね」

 サイファは少し表情に陰を落とした。

「……それで,結局一族が滅んだ理由とは何なんですか?」

 沈黙していたリリーナが問うと,サイファは小さく頷く。

「これはもう,続きを話すのが速いね。魔王領で圧倒的な力を持っていた我が一族が滅んだ理由を,実体験も交えて話そう」


 *……*


『最近,魔王領付近の森が焦土になったらしい』

 そんな噂が流れ始めたのが,事の発端だった。

 本当かどうかも分からない曖昧な噂なんてすぐに消える,と皆思っていた。

 だから,戦の準備で忙しいスラメジート家は意にも介さない。

 それから,数日経ったある日,一人の魔族が転がり込んできた。

 対して強くもなさそうな魔族で,一族の誰かと面識があるわけでもない。

 他の一族から来たスパイかと思ったが,その魔族は妙に怯えていた。

 興味を持った当時の当主__私達にとっての祖父__は,その魔族から話を聞くことにした。

 その魔族は,こう言ったらしい。

『現魔王など脅威にならないような,恐ろしい魔族が現れた』

 一族の者の大半は,ただの戯言(たわごと)だと笑った。

 少数の者は,気付いてしまった。


 その魔族がやってきた方向に,最近焦土になったという森があることに。


 森一つを焦土にしてしまう魔法なんて,間違いなく魔王級の魔力量が必要。

 当時の魔王は愛する妾を失い,その子供を追放した。

 しかも各地では内乱が絶えない。

 そんな状況なので,姿を表すことも無くなったという。

 “第三勢力が現れた”。

 その事実に気付いた一部は,すぐに行動を起こすべきだと当主に提言した。

 しかし,その時にはもう遅かった。


 それはまさに,私の父やその他一部が当主と話している時だった。

 一年を通して朝の訪れない魔王領に建つ屋敷の,窓の外が光に包まれていた。

 ちなみに,私の中にそこからの記憶は無い。

 ただ覚えているのは,一瞬だけ見えた影。

 部屋の中に居た筈なのに,視界いっぱいに空が映っていた。

 その中心に浮かぶのは,銀髪の女だった。

 蔑むような冷たい瞳で,地上を睥睨していた。

 認めたくは無いのに,あの圧倒的過ぎる風格は,魔王と呼ぶに相応しいと思えた。


 *……*


「……それって」

 ベリーの表情が引き攣(つ)る。

 銀髪の女。魔(・)王(・)と(・)呼(・)ぶ(・)に(・)相(・)応(・)し(・)い(・)。

「そう。その女が現魔王デスグラシアだよ。スラメジート一族は,彼女が魔王になるための第一歩として,呆気無く滅ぼされたんだ」

 真逆そう繋がるとは思わなかったのか,ゆめやリオンも唖然としている。

 リリーナとキャサリンは中盤で半ば予想していたのか,微妙な表情を浮かべていた。

「……あれ? でも,滅んだのにサイファさん達は生きてるよね?」

 違和感を覚えたベリーが尋ねる。

「……当時幼かった私とサイファ,そして私達の母親だけが生き残った」

 返答に困るように沈黙したサイファの代わりに,その隣に立っていたシャディルが答えた。

「生き残った私達は,覇道を歩むデスグラシアから隠れるように各地を転々として来た。たった三人なので,見つかるということはなかったね」

 サイファが自嘲するように笑う。

 それから,静かに視線を上の方に向けた。

「その道中で,私達は沢山の“仲間”を集めた。デスグラシアは次々魔族の名門を滅ぼしていたから,仲間もどんどん増えていった」

「……じゃあ,この一族の人は,皆違うところから来たの?」

 ゆめが問うと,シャディルが頷く。

「あぁ。元は家を失った子供達を保護していたのだが,いつの間にか相当な規模になっていたから……。面倒になって,サイファを当主とした新しい一族を作ったのだ」

「面倒になったら新しい一族が出来るんだ……」

 キャサリンが目を瞬いた。

 それには同意なのか,ミーシアやリオンも「魔族って不思議だな……」という目になる。

「それで,新しく生まれた一族がこの“クラーウィス家”だ!」

 何故か最後はソルトーダが締めた。

 ずっと端の方で座っていて暇だったのかもしれない。

「……新しい一族を作って,魔王……デスグラシアにバレなかったんですか?」

 リリーナが疑問符を浮かべると,サイファは笑いながら答える。

「丁度同じ時期に,あの女は魔王になった。此方(こちら)に気を回す余裕なんて無かったんだろうね」

 その言葉には,少なく無い嘲りがあった。

 不意に,ベリーが目を丸くする。

「……もしかしてなんだけど」

「ん?」

 思わず呟いたベリーに,三兄弟が首を傾げた。

 ベリーは何度も瞬いたあと,小さく続ける。


「もしかして……サイファさん達は魔王のことが,だいっきらいなの?」



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:なかなか重要なことがさらっと過去話になりました。

   あと,さらっと出たんですが,この一族は『クラーウィス』です。

   (流れていきそうなので念押し)

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