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お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第三章 相対する正義と思惑

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50.旋風と網

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感想,レビュー等大歓迎です。

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「人(・)間(・)如(・)き(・)かぁ……。舐められてるね」

「キャサリン人間じゃないよね」

 少年魔族の言葉に,キャサリンが額に青筋を浮かべた。

 それに対して,ベリーが素朴な疑問をぶつける。

 キャサリンは犬獣人なので,厳密には人間ではない。

 だが,魔族である相手からすれば同じなのだろう。

「舐めるも何も,このオレに勝てる人間が居るわけ無いんだからな!」

 会話が断片的に聞こえたのか,少年魔族が得意気に言った。

 明るい金の目に青い長髪。

 一見すると整った容姿の美少年なのだが,言動が合っていない。

「ゆめ,こういうタイプきらい」

 何とも言えない表情でゆめが溜息を吐く。

 ベリーも静かに頷いて同意していた。

「……まぁ取り敢えず,さくっと倒して情報を仕入れますか」

 相手を分析していたリリーナも,大した脅威では無いと判断したらしい。

「了解。じゃあ……これで良いや。【収縮糸雷(トゥルエレーテ)】」

 面倒そうな様子でキャサリンが杖を振ると,上空に巨大な網目状の雷が現れる。

「えいっ」

 まるでリオンのような掛け声と共に,雷の網が魔族の上に落ちた。

「うわっ!?」

 先程までの雷は難なく避けていたのに,今回は驚いたような声が響く。

「多分あいつは,風の魔法で攻撃を逸らしてるんだよね」

 キャサリンが静かに呟くと,リリーナが納得したように言葉を続けた。

「それなら,網のような広範囲の魔法と相性が悪いですね」

「ほぇ〜……」

 よく分かっていないベリーが適当に声を出すのを無視して,リオンが鎌を持ち直す。

「じゃあ,今のうちに弱らせておく」

 そう呟いた瞬間,その姿が消えた。

「りおんがきえた!?」

 ベリーの頭の上に乗っていたまろんが,驚いたように声を上げる。

「多分あそこ」

 視線を巡らせていたベリーが,魔族の方を指差した。

 全員がそこに視線を向けた瞬間,魔族の背後に鋭い光が浮かぶ。

「よっ」

 軽い声音と同時に,魔族の頭上に鎌が突き刺さった。

「いっっったぁぁぁぁ!?」

 少年魔族は頭を抱えて,間抜けな悲鳴を上げる。

「……何か,弱そう」

「思ったー」

 ぽつりとゆめが呟いた言葉に,ベリーが同意した。

 それを耳に入れたリリーナも,微妙な表情で賛同した。

「魔力量は申し分ないので,実力が足りていない上流魔族の子息と言った所でしょうか」

「何にせよ,脅威ではありませんね……」

 ミーシアも苦笑を浮かべて,成り行きを見守る。


 雷の網を振りほどいた魔族が,リオンに向けて旋風を起こしていた。

 リオンは後ろに下がって,旋風を切り刻む。

 激しい攻防が繰り広げるのを眺めつつ,リリーナは静かに移動していた。

「あれ何してるの?」

「魔法の準備」

 ベリーが率直な疑問を口にすると,キャサリンが端的に応える。

 よく見ると,リリーナが通った道が淡く輝いていた。

 無数の光の道は全て繋がっており,幾何学模様を生み出している。

「うわっ……えげつなー……」

「この辺り一帯,丸ごと浄化しようとしてますね」

 幾何学模様の意味がわかったキャサリンとミーシアが各々呟いた。

「じょーか?」

 まろんが首を傾げると,ベリーが得意気に口を開く。

「悪いものをやーってするやつ! リリーナがめっちゃ得意なんだよ!」

「やーってするんだー! すごーい!」

 目の前で激しい戦闘が行われているのだが,ベリー達の世界とは無縁だった。


「……リオンさん,押されてますね」

 不意に,戦況を眺めていたミーシアが呟く。

 気付けば,魔族が一方的に旋風を巻き起こし,リオンがそれを防ぎつつ後退していた。

「えっ!? 良くないやつ……?」

 驚いたように問い返すベリーに,キャサリンが困ったように返す。

「うーん……。でも,リオンはリリーナのために時間を稼いでいるだけだから,あんまり問題ないっていうか?」

 いつの間にか,リリーナの姿は見えなくなっていた。

 ただ,地面に丁寧な模様が浮かび上がっている。

「……まぞく,何で気付かないの?」

 地面が淡く光っているのに,魔族が反応する様子は無い。

「所詮その程度ってことでしょ」

 最初に舐められたのを根に持っているのか,キャサリンの言葉が珍しく辛辣だ。

「……あ,そろそろ完成ですかね」

 ベリー達が見ている前で,地面の模様が発する光が強くなっていく。

 緑がかった白い光が,街のそこら中に出現した。

「えっ……広くない? ほぼ街全部じゃん」

「リリーナ足はやーい……」

 無数に乱立した光が,街の上空を網目状に覆う。

 その光景を傍観していたキャサリンが,ふと首を傾げた。

「……あれ? でも何で……」

「?」

 その頃には,流石に異変に気付いた魔族が空を見上げる。

 同時に網目状の光が落下し,街で一番巨大な屋敷の屋根の一部が焼け落ちた。

 だが,そこまでだった。

「……止まった?」

 光の網が,見えない何かによって止められている。

 いつの間にかベリー達の所に戻って来ていたリリーナは,何も反応しない。

 ただ,屋敷の方を見ていた。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:リオンが結局独走していませんか……?

   まぁ,仲間を頼ることは覚えていますからセーフですよ。

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