49.魔族との対峙
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闇に覆われた不毛の大地を,進み続けることしばらく。
やがて,黒塗りの建物が並ぶ地域に近付いてきた。
「……ちょっとセイレーストに似てる」
目を細めて街の方を見ていたリオンが,ぽつりと呟く。
遠目でもわかる建物には,黒い瓦が使われていた。
小さめの家が並ぶ中で,一際大きな建物がある。
「なんかあそこ,偉い人住んでそうだね」
ベリーが指差すと,キャサリンが無言で杖を構えた。
「……ん? キャサリン?」
一行が注視する中で,無言のまま杖を振る。
「あ」
大きな建物に,一筋の雷が落ちた。
だが,それは建物に当たる前に消滅する。
「え……?」
ベリーが困惑を浮かべると,キャサリンが少し悔しそうな表情になった。
「私の魔法が防がれたってことは,それくらい強い防御魔法を使う人がいるってこと。あそこ,あの街で一番偉い魔族が居ると思う」
「あー,なるほど」
考え無しの行動ではないと分かって,ベリー達が安堵を浮かべる。
「じゃあ,あそこに行くの?」
不服そうな表情になったキャサリンを慰めつつ,ゆめが尋ねた。
「……行くべき,でしょうね。キャサリンの魔法を跳ね除ける強さを持つなら,魔族についての情報も沢山持っている筈です」
リリーナが何とも言えない表情で頷く。
キャサリンが雷を落としたことで,恐らく魔族側に気付かれた。
戦闘は避けられないだろう。
一行は顔を見合わせて,静かに頷き合った。
いつの間にか,魔族の街はもう目の前にある。
「人,少ないねー」
「人じゃなくて魔族ね」
街に入って少しした所で,ベリーが首を傾げた。
それを訂正しつつ,キャサリンも疑問符を浮かべる。
「……他所から攻撃を受けたと判断して,避難しているのかもしれませんね」
生き物の影は無いが,生活感は微妙に残っていた。
「まぁとにかく,あの大きい所に行けば良いんだよね!」
きょろきょろと周囲を見回していたベリーが,気を取り直したように前方を指差す。
街の中の何処に居ても見えるくらい大きな屋敷には,明かりが灯っていた。
「……魔族の気配がする」
不意に,周囲を見回していたリオンが呟く。
油断無く鎌を構えて,前方を睨みつけた。
キャサリンとリリーナ,そしてミーシアが戦闘態勢に入る。
ベリーとゆめもハッとしたように気を引き締めた。
「__下がって!」
突然,リリーナが叫ぶ。
咄嗟に後ろに退いたベリー達の前に,半透明の障壁が現れた。
それが,突然激しく抉られる。
「!?」
ベリーが目を丸くする横で,リリーナは更に防御障壁を増やした。
数秒経った所で,抉っていた何かが唐突に途切れる。
「__何だ,人間じゃないか」
誰も居ない筈の正面から,嘲笑するような声が聞こえた。
迷わずキャサリンが雷を落とすが,声は可笑しそうに笑う。
「雑魚がここに来て,帰れると思うなよ!」
声の主がそう言った瞬間,ベリー達の前に旋風が現れた。
「わぁっ!?」
ゆめが驚いたように目を丸くする。
旋風はリリーナの防御魔法を削るような勢いで,ベリー一行の方に向かってきた。
「……魔族ですね。それもかなり高位の」
「話し合いで解決は無理そう」
リリーナが冷静に分析すると,リオンが鎌を振って補足する。
魔族と戦いたくないベリーは複雑な表情になったが,相手が攻撃してきているので仕方が無いと諦めた。
「……まず,相手が何処にいるか分からないんだよね」
不意に,キャサリンが小さく呟く。
「え? さっき雷落としてなかった?」
ベリーが首をぐるっと回転させて振り向くと,キャサリンは誤魔化すように笑った。
「あー……あれね。当たれば良いかなーってやったら,手応えがあったっていうか……」
「え」
話を聞いていたベリー達が動きを止める。
「……きゃさりん,やばいね」
ゆめが呟き,一行が同意するように頷いた。
そうしている間にも,魔法によるものであろう旋風が防御を削っている。
リリーナの障壁は砕ける瞬間に追加されているので,ベリー達に被害はまだ無い。
「……リリーナ確か,良い感じの魔法持ってなかった?」
「どれですか?」
ふと思いついたように問うたベリーに,リリーナが真顔で返す。
リリーナは使用魔法が多いので,良い感じの,と言われても心当たりが無かった。
「あのー……キャサリン探したやつ!」
「ん? あー」
思い切り疑問符を浮かべてから,リリーナが思い出したように手を叩く。
「これですね」
そう言った瞬間,リリーナの杖から強い光が伸びた。
「あ! あれでしょ。初めて会った時に暗闇から私を見つけ出した時の」
キャサリンがハッとしたように声を上げる。
「そうです。探索の光と言って,照明の役割を持っている魔法ですね」
照明,と言うには長すぎる光が,前方を探った。
「あ,いましたね」
暗闇でも目が利くらしいミーシアが,直前に光が通り過ぎた辺りを指差す。
「うん。ちっちゃな声で『眩しっ』って聞こえたよ」
ゆめが賛同するのを聞いて,リリーナが光の位置をずらした。
「……あぁもう! 眩しいって言ってるだろ!」
不満気な声が響く。
はっきりと聞き取れた声は妙に幼く,捉えられた姿は小さい。
「……子供?」
ベリーの呟きに,相手の魔族が分かり易く慌てた。
「わ,悪いかよ!?」
虚勢を張るように大声を出す魔族に,キャサリンが雷を打ち込む。
「うわっ……いや,オレには当たんねーし!」
一瞬驚いたように飛び退いてから,思い出したように腕を振った。
それだけで,雷が軌道を変えて消滅する。
「……私の魔法に干渉するとか,ただの悪餓鬼魔族ではなさそうだね」
キャサリンが魔族を睨みながら,呟いた。
それが聞こえたのか,少年の姿をした魔族は口の端を釣り上げる。
「人間如きが,このオレに勝てると思うなよ!」
得意気に告げられた言葉が,魔王領の暗雲の下に響いた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:また新キャラ……。
しかも私的にかなり使いにくいキャラですね。




